表参道に出現した、絶望と希望が背中合わせの「箱庭」を覗く
2026年2月14日(土)から表参道のGYRE 3F、GYRE GALLERYで、ザドック・ベン=デイヴィッド(Zadok Ben-David)による展覧会「セカンド・ネイチャー - Second Nature -」が開催中だ。
ザドック・ベン=デイヴィッドはロンドンとポルトガルを拠点とし、数々の受賞歴を持つ世界的なアーティストである。「Blackfield」および「The Other Side of Midnight」の二つの大型作品に加え、異なる年代に制作された壁面作品、映像作品、木や花のモチーフを用いた新作のアルミニウム彫刻作品が一堂に会す、初めての展覧会となる。
「そこにメッセージが無ければ、時間の無駄だよ」
ザドック・ベン=デイヴィッド(Zadok Ben-David)
ギャラリーツアーの前に、「今の日本にもピッタリなメッセージですね」と語りかけた際にザドック・ベン=デイヴィッドが漏らした一言が全てだと思った。
ザドック・ベン=デイヴィッドが作品に込めたメッセージを写真とともに紐解いていきたい。
視点を変えれば、世界は変わる 希望と絶望の箱庭を探検
現在開催中のザドック・ベン=デイヴィットによる個展「セカンド・ネイチャー - Second Nature -」は、金属で作られた繊細な自然のモチーフを通じ、私たち人間の心理や、自然との関わり方を問いかけるインスタレーションである。
本展は、その圧倒的な没入感が魅力だ。まずは妖しい闇に覆われた展示室へと足を踏み入れてみよう。

大型の作品、「The Other Side of Midnight」。ブラックライトで照らされた美しい蝶に目を奪われ引き寄せられることだろう。この蝶の体部分にも秘密があるので、実際に近づいて見てみてほしい。

さらに、裏手に回ると、そこには甲虫やゴキブリの夥しい群れがモノクロで浮かび上がる。この二面性こそがザドック・ベン=デイヴィットの重要なメッセージのひとつ。同じ翅(はね)を持つ虫でありながら、表と裏では抱く感情が違う。人間がいかに“見た目”という先入観にとらわれているかを突きつける。

次の展示室もこの展示の大きなハイライトだ。足元に広がる「Blackfield」はまるで山火事の後のような、黒い花々、植物が荒涼とした砂の上に広がっている。約5000本もの植物のオブジェ。それらは薄いステンレススチールで象られているが、この作品の真髄はここから。

順路に従い、作品の裏側へと回り込んで振り返った瞬間、視界は劇的な変貌を遂げる。振り黒い荒野の裏側は、極彩色の希望の園だった。

ザドック・ベン=デイヴィットはこう語る。 「絶望があるところには、必ず希望がある」。この表裏一体のメッセージこそ、全体に流れる大きなテーマだ。

一見華やかに見えるものの裏に影があるように、暗闇の中にも必ず光がある。見る角度を変えるだけで、世界はこれほどまでに違って見えるのだ。単なる視覚トリックではなく、我々の心理的態度そのものを揺さぶる体験装置といえる。

3つ目の展示室には、動物や花、科学の進歩をモチーフにした大小のオブジェの数々が並ぶ。

鏡を使い、表と裏を表現した作品。一見すると明るい色彩で描かれ、鏡には黒く塗られた影の部分が映る。花々の色はアクリル絵の具を使っているそうだ。円環を為す甲虫の群れはネガティブな感情のメタファー。中に人間のモチーフが散りばめられている。

ひとつひとつのモチーフ、その細かな造形にも息を呑む。これらは特殊な技法で、膨大な時間と手間をかけて制作されている。さらに驚くべきは一本の線が途切れることなく、必ず繋がっているように切り抜かれていること。

世界各地でスナップした人たちの写真を元に制作したという人間をモチーフにした作品。おそらく日本で撮られた人物を見つけることができる。
一見木に見えるモチーフ。良く見てみると、枝葉の部分は人間となっている。人間も自然の一部であることを表している。

展示はエントランスに戻り、木をモチーフにした新作と、映像作品「Conversation Peace」でしめくくられる。過去15年間に彼が制作してきたモチーフの数々とともに、人間の葛藤、そして感情の対話が描かれる。
OMOHARAREALではギャラリーツアー前に、ザドック・ベン=デイヴィットに直接話を聞かせてもらった。表参道・原宿という街の印象と、都市のど真ん中で「自然」をテーマにした展覧会を行うことについて、ザドックは語る。
「これまで日本の各地で展覧会を行ってきました。日本はとても好きな場所です。表参道・原宿の街で展示を行うのは初めてなので、ファッションやデザインが集まる街で、自然をモチーフにした私のアートがどう映るか楽しみです」

まだホテルとギャラリーの往復、店に入って簡単な食事しか摂っておらず、初めて訪れたばかりという前提ではあるが、街についての印象を聞くと「景観や街行く人が洗練されている印象を受けた。滞在中に街の魅力をもっと発見したい」と話してくれた。
最後に来場者へもメッセージをもらった。

「絶望があるすぐ近くに希望はあります。そして、人間は大きな自然の中での一部であるということを街の中で感じ取ってもらえたら嬉しいです。作品を見て自然への敬意や感謝を、そして平和の大切さを思い出してほしい」

どんなに暗い状況でも、視点を変えれば希望が見つかる。 そんな「心の平穏」を取り戻すために、ザドック・ベン=デイヴィットのアートによって創造された箱庭を訪れてみてほしい。そこに、内なる自分の心の姿が映し出されるかもしれない。

■セカンド・ネイチャー - Second Nature -
開催期間: 2026年2月14日(土)~4月19日(日)
会場: GYRE GALLERY
住所: 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
開廊時間: 11:00-20:00
休館日: 2月16日(月)
※他、GYREの休館日に準ずる可能性あり
電話番号: 0570-05-6990(11:00-18:00)
主催: GYRE
インストーラー: 小滝タケル(square4)
展覧会コーディネーター: 宮路雅行
PR: HiRAO INC
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki
- マネージャー
- 望月トミー智久
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