オスジェメオスとバリー・マッギーが創造するアート宇宙を探訪

記者会見の会場はワタリウム美術館2F。3Fの吹き抜け部分まで描かれた巨大壁画がお出迎え。たくさんのメディアと関係者に囲まれて、バリー・マッギーとオスジェメオスがそこにいた。

左:バリー・マッギー/右:オスジェメオス
最初は出会いの話。時は1993年。バリー・マッギーがアーティスト・イン・レジデンス(アーティストが現地に滞在して地域と交流しながら作品制作をする制度)でサンパウロを訪れた際、オスジェメオスと出会ったそうだ。

オスジェメオスの当時の写真が載ったページを掲げるバリー・マッギー。代表を務める和多利浩一氏が「まだ若い!」と笑う。

このときの出会いを、オスジェメオスは「バリーさんが新しい世界への扉を開いてくれた」と語り、バリー・マッギーもまた「現地のアーティストであるオスジェメオスとの出会いを大切に思っている」と語った。

2F吹き抜け上部に施された作品。2組の原点であるグラフィティ要素を強く感じつつ、両者の作品が見事に融合している。空間を埋め尽くし、外へと飛び出さんとばかりのエネルギーの作品の数々、これらは一体どのように制作されたのだろう。

バリー・マッギーは「最初はチェスをするように少しづつ、いつしかそれはレスリングになって、相手がやってきたことにお返しするように、積み重ねて描いていったんだ」と、ユニークな言葉で制作過程を説明してくれた。

「僕たちは少ないものから多くのものを生み出すことを、アートとヒップホップに学んだ。何もない状態から、柔軟かつ即興的にセッションしていった」とオスジェメオスも制作を振り返る。

こうして両者のアートが融合する、アートワールドが出来上がっていった。そのスケールに圧倒されつつ、隅から隅まで即興的な遊びや工夫が施されている。グラフィティアーティストらしいユーモアとそのセンスに脱帽。

「(バリー・マッギーと)僕たちは同じ惑星から来た仲間で、家族だ」という言葉に対する質問で、「どんな惑星なのか詳しく教えてほしい」という問いが投げかけられると「自分のやるべきミッションが分かっていれば、どんな国であれ、惑星であれ、理解しあって協力することができる」とオスジェメオスは返答した。

バリーは「70年代〜90年代にかけて、グラフィティのマーカーも日本製のものが多かった。アニメや漫画ではヴィジュアル面で幼少から文化交流していた。すでに日本とコネクションを築いていたんだ。(オスジェメオスが言う)僕たちの惑星と日本はそう遠くない近い場所にある」と添えた。

30年以上の長きにわたる交流によってあたためられたアイデアが、ワタリウム美術館の空間に凝縮されている。何気ない場所に、日本のサブカルチャーの影響も見てとれた。

前日の夜中まで制作が行われていたという本展。開催まで大変な道のりだったそうだが、表参道・原宿の街で、両者のコラボ展を実現したワタリウム美術館には感謝しかない。会見でのオスジェメオス、バリー・マッギーの両者も口を揃えてワタリウム美術館へ感謝の意を示していた。

記者会見の後は、音楽好きなオスジェメオスの影響もあり、音楽が流れる中で自由内覧。アート関係の方々もたくさん訪れていて、バッタリ会う場面も。いい感じのパーティー状態。

「カッコいい曲がいっぱいかかるなあ」と思ったら、DJはなんとテイトウワさん。自身の楽曲はもちろん、数々のCM音楽、アーティストを手がけてきた日本を代表するDJ・音楽家・プロデューサーだ。豪華すぎる。

奥にはオスジェメオスがいちばん最初にやりたかったというレコードショップがある。中に入ると日本に来てからフリーマーケットやレコードショップで収集したというレコードがズラリ。実際に自分で選んでかけることもできる。(※当然だけど持って帰るのは厳禁!)

膨大なレコードには、この日DJを務めたテイトウワさん寄贈のレコードも含まれているという。

天井までびっしりレコード。オスジェメオスの音楽への偏愛を感じられる部屋はめちゃくちゃ楽しいので、ここだけで結構時間が経ってしまう。

ところどころに原点のグラフィティを彷彿とさせる作品も散りばめられている。

ワタリウム美術館の窓・外階段から見える向かいの空き地には、オスジェメオスとバリー・マッギーによる大きなグラフィティが。こちらも会見当日、深夜に仕上がったばかりのもの。ここは1983年、かのキース・ヘリングが初来日した際に壁画を描いた場所でもある。グラフィティアートのヒストリーとマインドは継承され、彼らによって新たに更新された。展覧会を訪れた際はお見逃しなく。

3階はバリー・マッギー作品を中心に展示。精緻な幾何学模様はバリー・マッギーのアイコンのひとつでもある。

ブラウン管テレビを積み重ねた映像作品には、グラフィティアーティストたちの若かりし姿が映し出される。

オスジェメオスらしさ全開のこちらは、B1Fの「オン・サンデーズ&ライトシード・ギャラリー」で観られる展覧会のメイキング映像でも映っていた作品。作品の大きさに目を奪われがちだが、ノズルを巧みに操り、スプレー缶で描かれる精細な筆致に驚くばかり。

「オン・サンデーズ&ライトシード・ギャラリー」では、展覧会のメイキング映像とともに、一点モノのバッグを販売!昨年の改修時に使われた工事用の幕をアップサイクルした、世界でひとつだけのバッグたちである。

さらに関連企画第一弾として、バリー・マッギーの新作版画展、『COLOUR & RECYCLED』の展示も行われている。過去30年にわたって製作されたZINEなどから発掘した写真の上にシルクスクリーンを施した希少なもの。

極め付けは、オスジェメオスの新作である4Fの全面LEDアニメーションが施された部屋。まさにアートの宇宙が広がるかのような映像体験をもたらしてくれる。映像から発せられるエネルギーに、不思議と包み込まれる多幸感、ぜひ味わってみてほしい展示作品だ。

左からワタリウム美術館 館長・和多利恵津子さん、中心にはバリー・マッギーとオスジェメオス、ワタリウム美術館代表の和多利浩一さん
互いの“OneMore”の集積が膨大な量のアート宇宙を形成している本展覧会。オスジェメオス、バリー・マッギーというグラフィティアート界の巨星同士が融合し、宇宙のように膨張していくエネルギーがワタリウム美術館全体を包み込む。彼らが会見で言っていた言葉を借りるとしたら、ワタリウム美術館という媒体を通じてひとつの“惑星”を形成しているようだった。

スケールの大きな両者の作品が空間に全て収まるのか心配したが(ワタリウム美術館もかなり大きいけど)、それは杞憂だった。ワタリウム美術館だからこそ成し得た、グラフィティアート由来の創造性にあふれる展示。まるでアートが違う次元とを繋ぎ、彼らの惑星に連れ出してくれるようなパワーを受け取ることができた。

最後に、会見中のバリー・マッギーとオスジェメオスの言葉を引用(※通訳を基に一部意訳)して、レポートをしめくくりたい。ここにグラフィティアートの本質と本展覧会の真髄が刻まれているように思う。
「80年代、キャンバスに画を描く人は裕福な白人が多かったが、サブウェイアートやグラフィティが新しい時代を作っていった。自分たち世代のアートをレペゼン(象徴)してくれていたんだ。グラフィティの先人、Di(Dondi)やBLADEは僕にとってはピカソのような有名な画家となんら変わりない。
そして自分の生い立ちを振り返る。決して裕福ではない中流階級に生まれながら、アートを創造する機会をいかに作れるか。それをずっと考え、実践してきた。
今こうしてワタリウム美術館でオスジェメオスと展覧会をやっていることを一つの答えとしたい。」
バリー・マッギー
「僕たちは少ないものにも満足できる。少ないものから多くのものを作り出せるんだ。もともと、サンパウロで生まれ育った僕らは、1980年代のストリートでそれを学んだ。そしてヒップホップにカルチャーを教わった。ラップ、DJ、ダンス、グラフィティ。SNSやインスタグラムはない。誰かに評価されるわけでもなく、自分自身たちで楽しんで表現していた。
いつだってそれがいちばん大切なこと。この展覧会の作品にも背景があって、40年位前まで遡ったアイデアやストーリーが込められている。バリーさんとこの展覧会を作ったように、ワタリウム美術館を訪れた人にも共有し、共感したい。」
オスジェメオス

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ワタリウム美術館 B1Fでバリー・マッギーによる 新作版画展「COLOUR & RECYCLED」が開催
■オスジェメオス+バリー・マッギー
One More 展
開催期間:
2025年10月17日(金)〜 2026年2月8日(日)
開催場所:ワタリウム美術館 + 屋外
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話番号:03-3402-3001
開館時間:11:00〜19:00
休館日:
・月曜日(11/3、11/24、1/12は開館)
・12/31〜1/3
入館料:
[大人] 1,500円
[学生(25歳以下)]1,300円
■バリー・マッギー新作版画展:
COLOUR & RECYCLED
開催期間:
2025年10月17日(金)〜 2026年2月8日(日)
開催場所:
オン・サンデーズ&ライトシード・ギャラリー
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
ワタリウム美術館 B1F
電話番号:03-3470-1424
営業時間:11:00-20:00
定休日:会期中なし























