表参道のラグジュアリーブランド | 表参道で、最初のメゾンは?「ラグジュアリーブランドの街」となった変遷
今ではラグジュアリーの旗艦店が立ち並ぶ、表参道。OMOHARAREALで配信中の、街の美容室について考察したコラムでも、表参道がランウェイと呼ばれることを紹介しているが、街に集まるラグジュアリーブランドはそのランウェイを彩る景観として重要な役割を果たしていると言える。
1km以上にわたって直線上にズラリと、世界中の錚々たるブランドが並ぶ表参道において最初に出店したのは一体どのブランドだったのか。と、ふと、街を歩いていて思った。どのようにして今の華やかな景観が出来上がったのだろうか。気になったので調べてみた。
「ブランドの街」はいつから?表参道で最初に出店したブランドを追う
OMOHARAREALではもはやお馴染みと言っても過言ではない、表参道の原風景の写真。1950年代のものだが、戦後まもなくまでさかのぼると、今の表参道からはとても想像できないのどかさを感じる。

1950年代の表参道 (オモハラみんなのフォトアルバム No.001)
当然ながら、この頃にラグジュアリーブランドはまだ表参道にはやってきていない。ではそれ以降はどうなのか?
1970年〜80年代の表参道について話を聞くと、当時は週末、歩行者天国で賑わうが、平日の朝などは比較的穏やかさを残す街だったという証言もある。
また、現在の表参道ヒルズの場所に1927年(昭和2年)最新鋭のアパートとして竣工した「同潤会青山アパートメント」も戦後から2000年代初頭まで、長い年月をかけ存在していた象徴的な存在だ。
住民の数は減らしつつも、通りに面した区画に小さなギャラリーやショップがたくさん入っていたという。話を聞くと、その存在感は比較的最近(ここ25年くらい)まで、表参道にのどかさをもたらしていたようだ。

1970年代の同潤会青山アパートメント オモハラみんなのフォトアルバム No.012
そんな歴史を踏まえつつ、おそらく1990年代後半から、同潤会青山アパートメントから「表参道ヒルズ」へと姿を変えた2000年代半ばまでに、ラグジュアリーブランドの起点があるのでは?とアタリを付けた。

2025年8月編集部撮影 表参道のラグジュアリーブランド旗艦店はリニューアルを経ながらその景観を彩る。2023年にリニューアルオープンしたバーバリー(BURBERRY)表参道。
1999年にできた“あのブランド”が最初
実際にブランドと店舗へのリサーチを踏まえ、メディアによる当時の記事、ブログやレポートなどと照合すると、表参道で最初のラグジュアリーブランドとしてもっとも有力なのは1999年の「グッチ(GUCCI)青山」だ。
現・明治安田生命青山パラシオタワー(青山パラシオタワー)の開業とともに旗艦店を出店。現在もリニューアルを経てその存在感を確立している。

2025年8月編集部撮影。1999年に開業した明治生命青山パラシオビル1Fの「グッチ青山」。2014年、2018年とリノベーションを遂げて現在に至る。ビルの景観と調和したデザインと風格ある佇まいはさすがだ。
同時期、表参道沿線からは少し離れるがJIL SANDER(南青山6丁目)やMIU MIU(南青山5丁目)も旗艦店を南青山に出店していたという。
次に、大きな転機となったのは2001年。現在の「GYRE」の前身である複合商業施設「エスキス表参道」の開業時、「シャネル(CHANEL)」/「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ」(Yves Saint Laurent Rive Gauche)※当時の既製服ライン/グッチ(店名は「グッチ青山 2」 )/「アレキサンダー・マックイーン」(Alexander McQueen)などの有力メゾンが集積して入居した。

「エスキス表参道」VATYのREIT探索日記 より エスキス表参道の前は、「原宿ビブレ21」として1982年にオープンした商業施設「表参道ビブレ」が2000年まで営業していた。
建物の脇には大きく、“CHANEL”のロゴが入っている。このことからシャネルは入居していたブランドの中でもかなりの存在感があったのではないだろうか。

VATYのREIT探索日記より。エスキス 表参道の全景写真はかなり貴重。REIT(不動産投資信託)物件をブログにてつぶさにリサーチ・紹介しているVATYさんにご提供いただいた。
大きな流れの始点として、青山交差点側に位置するグッチ青山、次にこの神宮前交差点からほど近いエスキス表参道の開業が、表参道の“オトナ化”“ラグジュアリー化”の先駆けとして注目を集めた。
さらに、その翌年2002年9月には、「グッチ青山」と「エスキス表参道」の2点の中腹を結ぶように「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton) 表参道店」がオープン。発売以降、メゾンを象徴する腕時計「タンブール」の先行販売の舞台にもなった同店は、当ブランドにおける“世界最大級の旗艦店”として話題を集めた。

By Wiiii - Own work, CC BY 3.0 (Wikimedea Commons)ルイ・ヴィトンの象徴であるトランクを積んだような建築デザインが特徴的。
1999年から2002年のおよそ3年間、グッチ青山に始まり、エスキス表参道、そしてルイ・ヴィトン表参道開業、この3つの出来事が、表参道=ラグジュアリーの通りという現在のイメージを作ることに大きく影響していると考えられる。

2025年8月編集部撮影。旗艦店としてだけでなく、上層階にはルイ・ヴィトン財団の現代アート美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」に収蔵されている作品を紹介する「エスパス ルイ・ヴィトン 東京」を有し、文化発信拠点の役割も担う。
その後、2003年6月に北京オリンピックのメインスタジアム「鳥の巣」を設計した、スイスの建築家ユニット ヘルツォーク&ド・ムーロンによる「プラダ(PRADA)青山」が表参道交差点を渡った御幸通り沿いにオープン。

2025年8月編集部撮影。その存在感のインパクトは建築デザインも含め大きい。プラダ青山も定期的にアート展を開催。
ガラスがはめ込まれた菱形格子状による外観がアイコニックなビルだ。建築としても開業時に大きな注目を集めた。

プラダ青山店 編集部撮影(2019)夜に浮かぶ姿も美しい。
同年12月には建築家・妹島和世氏と西沢立衛氏による世界的な建築ユニット「SANAA」による「ディオール(Dior)」の旗艦店がオープンした。

全面ガラス張りの建築が目を惹き、頂点には創業デザイナーであるクリスチャン・ディオール氏がラッキーモチーフと信じていた星のマークがデザインされている。

Dior表参道(SANAA)/ Diorのゆらめき。服と建築の違い より
さらに翌年、2004年には新国立競技場を手がけた伊藤豊雄氏による「Tod’s(トッズ)ビル」が竣工。ラグジュアリーシューズ & バッグブランド「Tod’s 表参道」がオープン。
旧Tod's ビル オモハラのファッションブランド建築 10選 (2019)より
こちらの旧・Tod’sビル、現在はグッチなどを擁するケリンググループの日本社屋となっており、1Fにはグループ傘下の「ボッテガ・ヴェネタ表参道」が入っている。
2025年8月編集部撮影
旧Tod'sビルの隣(左側)、「ヒューゴ・ボス(HUGO BOSS)」が入るのは建築家・團紀彦(だんのりひこ)による表参道けやきビル。この建築の並びもならではの景色だ。
2025年8月編集部撮影
同年2004年には「ロエベ(LOEWE)表参道」もオープンしている。
2015年5月編集部撮影。当時は右から「ロエベ(LOEWE)」、「ジバンシィ(GIVENCHY)」、「セリーヌ(CELINE)」が並んでいた。
2014年にリニューアルした「ロエベ(LOEWE)表参道」は2023年に「カサロエベ表参道」へとさらなる進化を遂げた。
2025年8月編集部撮影。「カサロエベ 表参道」
そして、2006年には表参道ヒルズがオープン。「ドルチェ & ガッバーナ」(Dolce&Gabbana)、「ジミー・チュウ」(JIMMY CHOO)、エスキス表参道に入っていたイヴ・サンローランやボッテガ・ヴェネタなど多くのラグジュアリーブランドが入居し、ラグジュアリーブランドの街の色をさらに際立たせ、決定づけたと言えるだろう。

表参道ヒルズ オモハラの代表建築15選 (2019)より
1999年、グッチ青山が明治安田生命青山パラシオタワーにできたことをきっかけに、2001年“集積デビュー”したエスキス表参道に入る複数のブランドと、2002年のルイ・ヴィトン 表参道の開業、この3年間が表参道にラグジュアリーブランド出店ラッシュをもたらした口火となったのは間違いない。
さらにディオールやプラダなど現在の表参道でも顔役とも言えるラグジュアリーブランドたちが建築とともに次々と出店。およそ5年間で急速に“ラグジュアリーブランド”の分布が広がっていった。

2025年8月編集部撮影 もともとエスキス表参道だった現在の「GYRE」。エスキス表参道の時から入居していたシャネルは今も同じ場所で存在感を放っている。
表参道を歩けば、前述したDiorやTod’s(現ボッテガ・ヴェネタ)など、建築とともに語られる旗艦店が続々と現れる。こうしたラグジュアリーブランドの誘致は、ディベロッパー、街の商店会の熱心な取り組みによって実現した背景もあるようだ。
今では当たり前の表参道の景色、“始まり”を知っていると、当たり前の風景が少しだけ違って見えてくるから不思議だ。表参道の景観を担う、ラグジュアリーブランドの数々。散策する際は、ブランドの意匠を纏った建築デザインも含め、ヒストリーに思いを馳せながら楽しんでみてほしい。

■【ラグジュアリーブランド出店年表】
※2006年まで、本文中に登場したもの
1999年 グッチ青山
2001年 【エスキス表参道】(複合施設)
シャネル/イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ/グッチ(グッチ青山 2)/アレキサンダー・マックイーン
2002年 ルイ・ヴィトン表参道
2003年 プラダ青山/ディオール表参道
2004年 トッズ表参道/ロエベ表参道
2006年 【表参道ヒルズ】
ドルチェ & ガッバーナ/ジミー・チュウ/イヴ・サンローラン/ボッテガ・ヴェネタetc..
Text:Tomohisa Mochizuki
























