『Endless』に進む環境破壊を青山で観る 柏倉陽介写真展レセプションをレポート

ゴールドウイン本社1Fの開放感のある空間に、ボードが立てられ、そこに柏倉陽介さんが撮影した数々の写真を展示。

写真と一言キャプションが添えられ、フォトドキュメンタリーを辿るような構成となっている。

メインヴィジュアルにも使われている、オランウータンの孤児がくるまれた写真も大きく展示されていた。

一見すると愛らしい写真に見えるが、その背景を知るととても悲しく、その現実が伝わってくる。 原因はアブラヤシという植物の果肉から採れる植物油の「パーム油」を栽培するために森が伐採されたことによる。
世界で最も生産されている植物油で、食用としてだけでなく、私たちが日常で使う石鹸や化粧品、洗剤など、様々な製品に使われているものだ。
人間によって親を失った代償。保護活動の過酷な現実を浮かび上がらせる。

本来なら、親とともに自然の中で身につけていくことを、さらに長い時間をかけて身につけさせなければならないそうだ。

例えば、木々を渡るオランウータンは綱渡りができないと自然の中で生きられない。その練習には、日本の消防用ホースが使われているのも驚きだった。

奥へ進むと「20世紀最大の環境破壊」と言われるアラル海(中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンにまたがる世界で4番目に大きかった塩湖)の消失が映し出される。

こうなった原因もまた人間の産業によるもの。私たちが着るTシャツやデニムに使われるコットンの元となる、綿花栽培を行うための灌漑(かんがい=水路を作り栽培用の用水を引く)事業によって砂漠化してしまった。

かつては琵琶湖のおよそ100倍、日本の九州と四国がそのまま入るほどの大きさがあったが、今では10分の1以下に縮小しているという。ひたすら広大な砂漠地帯が広がり、朽ちた船などがそのままになっている。

湖が縮小したことで、塩分濃度が高くなり魚もいなくなった。漁業や魚の加工産業も衰退。職を失い、家族と離れ異国に出稼ぎに行かなればならなくなったそうだ。

一方で、綿花栽培に従事する人は人口の3分の1、1200万人が綿花に関わる仕事をしており、湖を復活させるために綿花栽培をやめてしまうと職を失うことになる。まさに人間による“Endress(終わることのない)”な問題が現在進行形で横たわっている。

スケールが大きすぎて途方もないのだが、それが自分たちの日常にも紐ついてるということを思うと、普段着る服一枚、化粧品や石鹸など、選び方や使い方の意識に変化をもたらすかもしれない。

集まった人たちは皆、柏倉さんの写真の前で息を呑み、遠い国の、しかし間違いなく私たちの生活とも連なっている環境破壊の現実を真剣な表情で見つめていた。

会場となっているゴールドウインもそうだが、環境に配慮した製品開発に力を入れることはアウトドアブランドにとっては命題であり、今やスタンダードになった。売る側だけでなく、本質的な部分を消費者が知る上では非常に重要な展示だと思った。

表参道・原宿は巨大な消費の街でもある。だからこそ環境破壊の実情を知ることで、本当の意味での「サステナブル」を考える良い機会なのではないだろうか。

会場では書籍も販売。本展のオランウータン孤児を追った「Back to the Wild」の売上と著書への印税は保護団体へ寄付される。
失われゆく自然とともに映し出された、柏倉さんが撮る自然、動植物、そこに生きる人間の姿の美しさに目を奪われる。その姿に観る者は必ず、思うことがあるはず。
都市には人間が生み出した“物”が豊かすぎるがゆえの問題があったりするが、その皺寄せは実は、離れた場所で起きている。確実に失われゆく自然、環境破壊が進んでいことは人間が受け止めなければいけない現実だ。オランウータン孤児の瞳、湖を失い砂漠の民となった人の表情に、思いを巡らせてみてほしい。
学生や子供たちにとっては夏休み期間、この週末に、日々の生活を共にする家族とも、足を運びたい写真展だ。

■『Endless』
Yosuke Kashiwakura
Photo Exhibition and Creative Dialogues
開催期間:
2025年8月21日(木)~8月26日(火)
開催場所:株式会社ゴールドウイン
1F イベントスペース
住所:東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル
開館時間:11:00-19:00
入場料:無料
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:Inaba Kozue
Tomohisa Mochizuki
- マネージャー
- 望月トミー智久
tommy

























