
視覚で紡がれる無限のストーリー、平面の世界を革新した作品を堪能
神宮前3丁目の+81 Gallery Tokyoにて、「Tsuguya Inoue Graphics +81展」が2025年5月11日(日)まで開催中!
広告・アートディレクション界のレジェンド、井上嗣也。その唯一無二の美学を体感できる必見のイベントだ。個人的にも尊敬するクリエーターの一人で、オモハラエリアでの開催に人知れず歓喜していた。何度も画面上で見てきた作品たちをこの目で見ようとギャラリーへ足を運んだ。
キャットストリートを千駄ヶ谷方面に歩いて行くと二階建ての白い建物が見えてくる。こちらが個展会場となる「+81 Gallery Tokyo」だ。若手クリエイターから、井上嗣也のようにグラフィックデザイン史を語るに外せないレジェンドまで、独自でありつつもアートという側面だけでない文脈を感じるキュレーションが印象的。アートシーンへの包活的なアプローチを感じる。
外観から既に井上嗣也エディションになっている、+81 Gallery Tokyo。特に印象的なのが渋谷PARCOの50周年企画で制作された”目”のグラフィック。その、目力に吸い込まれるように会場へと誘われた。
ギャラリーに足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが、大判のキャンバスに出力された写真作品の圧倒的な迫力だ。特に、COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)のビジュアル作品は井上嗣也ならではの存在感を放ち、観る者を釘付けにする。
他にも坂本龍一やサカナクションなど彼のキャリアを総括するような作品群が並び、80年代から続くグラフィックデザインの歴史を横断する視覚的な旅へと誘ってくれる。
ビジュアルの構図、タイポグラフィ、色彩のバランス…そのどれもが精緻に計算され、アートとデザインの境界を軽やかに超えている。圧巻だ…。
本展では、2025年3月に発売された作品集「Tsuguya Inoue Graphics」から厳選された40点をキャンバス作品として展示。
平面の世界でファッション、アート、デザインを横断してきた井上嗣也。ミックスカルチャーの聖地”原宿”とのシナジーは抜群だ。
ひと息ついて、さらなる作品を堪能しに足早に2階へ。
2階には数多くの井上嗣也の代表作が並び、彼のクリエイティブな魅力を存分に感じられる構成にとなっている。
広告、ポスター、アートディレクションなど、多岐にわたる作品が一堂に会し、その唯一無二のデザイン哲学が伝わってくる。
中でも強く印象に残ったのが、こちらもCOMME des GARÇONSのビジュアルであるカラスの作品。光が差し込むロケーションも相まってか、神々しいオーラを纏っていた。
黒の密度が非常に濃く、まるでその中に引き込まれるような感覚にとらわれる。圧倒的な存在感が放たれていた。
「グラフィックデザインは時代を映す鏡」とよく言われる。その言葉通り展示された作品のひとつひとつが時代の空気を映しながらも、決して色褪せることのない強烈なパワーを持っている。
また、作品集『Tsuguya Inoue Graphics』は、会場でも購入可能。本作は、前作『INOUE TSUGUYA GRAPHIC WORKS 1981-2007』を大幅に増補し、新作を含む503作品を一挙掲載。篠山紀信、坂本龍一、忌野清志郎、レスリー・キー、Wing Shyaといったアーティストとのコラボレーションも収録された、まさに愛蔵版となっている。
井上嗣也の独自の世界観が色濃く刻まれた作品集。増版の予定はないとのことなので、この機会を逃さず手に入れて、その貴重な痕跡をじっくりと堪能してほしい。
尊敬するクリエーターの作品をこのスケールで目にできるなんて、本当に感動モノだ。
本や画面越しで何度も目にしてきたビジュアルが、大判のキャンバスに姿を変え、圧倒的な存在感でこちらに迫ってくる。そこにはただの“拡大”ではない、息を呑むような力があった。
いまは、スマホひとつで好きな作品にすぐアクセスできる時代。だけど、空気ごと体で感じるような体験は、やっぱり特別だ。
ぜひこの空間に身を置いて、目の前に立ち上がる“井上嗣也”という世界を全身で味わってほしい。
■井上嗣也 個展 「Tsuguya Inoue Graphics +81展」
会期:2025年3月7日(金)〜5月11日(日)
開催場所:+81 Gallery Tokyo
住所:東京都渋谷区神宮前3-28-9
開催時間:12:00〜18:00
休館日:月曜・火曜
入場料:無料
※敬称略
Text & Photo:Tota Mizutani

- オモハラリアルスタッフ
OMOHARAREAL編集室
