夏季限定!表参道の新「冷やし」スポットで絶品のお茶かき氷を
北青山3丁目。青山通り沿いのコスメブランド「MIMC」の路地を入りモンスーンカフェがある手前、若竹色がはためく可愛らしいのれんの店を取材帰りに発見。
一見、外からだと何のお店なのかわからない佇まい。なにやら提灯には「茶」の文字、「ひやかし IPPODO TEA」と書いてある。なるほど。ここはお茶屋さんなのか。「ひやかし」だなんて、名前からして洒落ているではないか。
聞けばここは京都で創業300年の歴史を持つ「一保堂茶舗」による夏季限定のポップアップカフェ。京都に本店を持ち、東京では丸の内に喫茶室を展開している。屋号も、皇室における宮家のひとつ京都の山階宮(やましなのみや)から「お茶がおいしいからお茶を一つ保ちなさい」として「一保堂」を賜ったという由緒あるお茶屋さんだ。
そんなお茶屋さんが表参道に、しかもポップな暖簾を掲げて営業している。気になったので「ひやかし」に行ってみた。
一保堂による本気の「ひやかし」!絶品のお茶かき氷など、夏限定の“冷や(か)しカフェ
表参道「ひやかし IPPODO TEA」は「冷や(か)し」と「ひやかし」をかけた店名通り、季節に合わせた冷やしカフェメニューを中心に展開するコンセプチュアルな専門店。お茶を軸とした冷やしスイーツ&ドリンクを期間限定で提供している。
大きな暖簾をくぐると、すっと伸びた階段状のアプローチに、青竹の仕切り。入り口からちゃんとワクワクさせてくれる作りだ。通りから下がっているので、通常なら見通しやすいが、仕切りがあることで通りからの目隠しになっているのもポイント。
中に入ると店内は青竹とコンクリート壁がひんやりと涼しげな印象。ガラスの大きなテーブルが涼しさをさらに際立たせる。
メニューは全てパティシエの鶴見 昂(つるみ たかし)さんが開発&監修を手がけているそう。二子玉川の人気店、Cafe Lisetteのほか、全国各地の人気店をプロデュースし、2022年から菓子教室「ツルミ製菓」を開催するパティシエだ。
ひんやりメニューはかき氷、アイスクリーム、お茶のラテ、さらにはオリジナルチャイと豊富に揃っているのも嬉しい。かき氷をいただいたのでレポートしたいと思う。
かき氷は二種類。抹茶とほうじ茶のかき氷、お茶屋さんらしいラインナップだが、ただお茶のシロップを合わせたかき氷ではなさそう。まずは抹茶をいただく。かき氷の頂には氷の破片が!?
インパクト抜群で目を惹くこちら、京都・西陣にある「御菓子司 聚洸」の特製ハッカ風味の琥珀羹(こはくかん)、その名も「冷や菓子」が刺さっている。薄氷を表現して作られたという美しい和菓子を使い、ハッカ風味なので見た目も味も冷え冷え。氷をすくって食べてもよし。
全てのメニューにはあたたかいお茶が付く。煎茶にほうじ茶、その時々で変わるそうだが京都で一般的に親しまれているという、東京では馴染みのない京番茶もいただくことができる。燻した茶葉なのでとてもスモーキーで驚く。好き嫌いは分かれるというが、個人的には好き。冷えた体内をほっこりあたためてくれて、サウナとは逆の整いを体感。
抹茶のかき氷には抹茶ソース、抹茶パウダーにレモンコンフィ、レモンシロップ、山椒など酸味とスパイスをプラス。
抹茶の甘味と香りが際立つ組み合わせが新鮮でおいしい!しかも層になっているので食べ進めるごとに味が変化する。
底には、台湾のポピュラーなデザート「愛玉ゼリー」がぎっしり。台湾に自生する「愛玉子」というイチジク科のフルーツが原料のものだが、このゼリーもレモンのような爽やかな風味だ。つるつるの舌触りが食感にも変化を与え、シャリシャリの氷とともに最後まで飽きずに食べられた。縦にスプーンを入れて掬いあげて食べるのもおいしい。
続いてはほうじ茶かき氷。見た目はコーヒーのように濃い茶色で、味わいも見た目通り濃厚!
茎ほうじ茶(お茶としても大好き)のソースやパウダー、シロップをたっぷり使っていてほうじ茶の味わいが存分に楽しめる。
抹茶はレモンと愛玉と掛け合わせていたが、ほうじ茶はライチシロップといちばん下には薬膳としても知られる「桃膠(とうきょう)」シロップ煮がぎっしり。桃の樹皮からしみ出た樹脂で、美容スイーツとして人気の桃膠。桃の風味がふんわり香りほうじ茶との相性は抜群。ライチと桃が濃厚なほうじ茶の味わいを引き立てていた。
お茶系のかき氷は大体、あずきとかクリームとか、甘いものと合わせるのが一般的。しかし、お茶にフルーツをミックスし、新鮮な味覚体験を実現していたのが印象的だった。編集部的には毎年、かき氷の器も注目しているポイント。
キンキンに冷えるアルミカップを採用し、「冷え」度数をさらにアップさせる。プリントされたひやかしちゃんイラストもかわいいね。
食べ終わったアルミカップは持ち帰れる(洗ってくれる)。縁日の金魚すくいの袋に入れてくれるのも夏らしく、懐かしさも感じられる。家やお出かけ先でもアルミカップで冷え冷えのドリンクが楽しめるのは嬉しい。
かえるの形をしたテイクアウトホルダー「もちかえる」なんてものも用意されていて、持ち帰りも安心。こういった、芸が細かいというか、随所に散りばめられているユニークな駄洒落もご愛嬌。これも「ひやかし」の冷えポイントなのかもしれない。
店内では限定のオリジナルグッズも豊富に用意されているのでお土産にもちょうどいい。もちろん「一保堂」のお茶も取り扱っている。
店内全体にはイラストレーター・犬ん子さんによる「ひやかしちゃん」を始め、 肝をひやかす妖怪の仲間たちがいるので探してみてほしい。
ひやかしちゃんプリントされたトートバッグはお土産にもちょうどいい。そのほか夏に欠かせない保冷タンブラーなど冷やしグッズも豊富。
奥にはお祭りの縁日をイメージしたというベンチスペースも。天井には提灯がぶら下がり、日本の夏らしさを感じられる雰囲気。
うちわも置いてあって、仕事の合間や休みの日の買い物の合間に涼むにはうってつけだ。暖簾と同じ若竹色のおばけがプリントされた提灯は雰囲気があってナイス。
店内の雰囲気、メニューのおいしさ、豊富なグッズとサービス。約半年間のポップアップにも関わらず、「一保堂茶舗」の本気を感じた。そう。ひやかしどころか、ガチである。表参道でまんまと京仕草を見せつけられてしまった(褒めています)。
モダンな店内には、古い茶びつも置いてあった。創業から300年、「一保堂」の屋号を名乗った1846年から数えても180年近い歴史があるのに、“老舗”や“歴史ある”とは、自分たちでは言わないんだとか。京都には同じように歴史があって、もっと歴史の長い店もザラにあるそうで、なんとも京都らしい奥ゆかしさを感じる。
そんな歴史あるお茶屋さんが、表参道という土地柄にマッチするようにユーモアとアイデンティティを融合させた見事なアプローチ。「ひやかし IPPODO TEA」へちょっとひやかしに行くつもりが、自分もすっかりその世界観に魅了されて長居してしまった。
今年も盛り上がるであろう表参道かき氷戦線にいち早く名乗りを上げ、歴戦の名店たちにも引けをとらないクオリティ。夏季限定ショップで9月までの営業ということなので、夏本番を迎える前に抑えておきたい店舗だ。
■ひやかし IPPODO TEA
住所:東京都港区北青山 3-6-26
営業時間:11:00-18:00
定休日:水曜日
※セルフカフェ・テイクアウト・限定グッズと一保堂のお茶も販売
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki