
ディジュリドゥ奏者・画家GOMAによるヨガ+ディジュリドゥのミックスプログラムを体験
オーストラリア先住民アボリジナルの伝統楽器ディジュリドゥ奏者・GOMAさんによる絵画展「ひかりの世界」が、表参道のGYRE GALLERYにて開催中。OMOHARAREALではGOMA本人によるギャラリーツアーレポートをすでに公開しているが、展覧会会期中の週末に開催の、GOMAさんによる「YOGA+ディジュリドゥ」プログラムに参加させてもらったのでレポートしたい。 (※現在はすでに募集締切)
趣味のダンスの延長で、ヨガ歴5年ほどの筆者。当初は柔軟性を高めることが目的だったけれど、何よりもメンタルが整うことに魅了され、気づけばダンスよりヨガ中心の生活を送っている時期もあったりと、長らくヨガの魅力に取りつかれている。
今回GOMAさんの「YOGA+ディジュリドゥ」プログラムを目にした時、瞬時にやってみたい!と心が動いた。ギャラリー内でアートに囲まれながらのヨガは初めて。しかもGOMAさんのディジュリドゥをミックスしているということで、一体どんなヨガ体験になるのかと好奇心に胸が躍る。ワクワクと未知のヨガ体験に少し緊張しながら参加した。
9時45分。日曜日の午前中に表参道に来るのはいつぶりだろう、なんて考えながら眠気で少しぼーっとしつつ、「GYRE GALLERY」に到着。ヨガウェアに着替え参加者のみなさんとGOMAさんの登場をを待つ。参加者は体験取材として参加した私を含めて全員で8名。GYRE GALLERYの一番広いスペースにちょうど人数分のヨガマットが綺麗に収まる。
女性の方が多いが男性の参加者もいた。撮影で立ち会った男性スタッフも、スペースがあれば参加したかったと言っていたが、性別関係なく取り組めるのがヨガの良いところ。
参加者は持参したヨガマットでそれぞれリラックスしながら準備を整える。筆者は会場でも販売されているGOMAさんの作品がプリントされた「ひかりYOGAマット」をお借りすることに。
参加者の中には「ひかりYOGAマット」愛用者も。実際、このあと行われるプログラムの中で、ひかりの輪が視界に飛び込んでくることで集中力が増し、グッと耐えることができたのでつい欲しくなってしまった。
ぽつんと目の前に置かれたディジュリドゥ、縦に長くいかにも重そうな(GOMAさんに聞くと意外と軽いらしい)楽器を興味津々に眺めていたのも束の間、GOMAさんがやってきて淡々とヨガの練習が始まる。
GOMAさんとヨガとの出会いはディジュリドゥの修行で訪れたオーストラリア・バイロンベイ(ヨガの聖地と言われる)が最初だという。ヨガ歴で言うと26年。日本でも持つ人が450名ほどしかいない全米ヨガアライアンス最上級資格を取得しているヨガマスターなのだ。
ディジュリドゥ奏者として世界的に評価されるほどの腕前ながら、さらにヨガもマスターしているとはすごすぎる。そんな人のヨガクラスを受けられるだけでも超貴重。
最初に足首から太ももまで筋肉を優しく揉みほぐし、ウォーミングアップ。寝起きの自分のまだ硬い身体に、全身の感覚が鈍くなっているのを実感させられる。なので首周りや腕、全身を入念にストレッチ。
続いてあぐらを組み、本格的な練習前の瞑想タイム。あぐらの姿勢では骨盤を正常な位置に置くことがポイントになる。GOMAさんの声掛けで、骨盤から背骨の1本1本、肩から首、頭までを一直線上に積み重ねていく。目を閉じながら身体の重心バランスを丁寧に確かめて調整することで、普段いかに歪んだ姿勢で自分自身に負荷をかけているかが分かる。
全員の姿勢が整ったタイミングを見て、GOMAさんがディジュリドゥの音を奏でる。これがきっと始まりの合図。目を瞑り、初めて目の前で聴くディジュリドゥの重低音。楽器先端の丸い穴からブウヮーッと部屋全体に広がる音は、地響きのようにうねりながら身体へ振動を伝え、同時に包まれているような心地よさを与えてくれる。
ディジュリドゥはもともと、白アリが食べたユーカリの木の空洞を活かして作られた自然の楽器らしい。呼吸・唇の振動のみで演奏する手法をとるが、形状によって幅広い音が出せるのが特徴だ。
ディジュリドゥの音が止む。打って変わって、しんとしたギャラリーの静寂が包み込む。続いては「呼吸」の練習だ。
ヨガでは呼吸が大切で、他の運動とは違った呼吸法を用いる。GOMAさんは循環呼吸(吹きながら息を吸う)を用いるディジュリドゥ奏者ということもあり「呼吸」の大切さをよく知る人物であるからか、呼吸の練習時間を比較的たっぷりと取ってくれた。
生命維持に必要不可欠な呼吸だけれど、日常生活で気を張っていると意外と疎かになりがちだ。知らず知らず、呼吸が浅くなると、脳や身体のパフォーマンスは落ちてしまう。
「呼吸=生命維持活動」、普段忘れ去っている当たり前をゆっくりと思い出すような時間。起き抜けの頭に酸素が回って少しふらふらするくらいまでに活性してくる。
呼吸の練習中、GOMAさんから「息を吸う時、肩が上がっていませんか」と声掛けがされた。確かに、とハッとする。あくまでも自然に、たっぷりと息を吸い、ゆっくりと吐く。いずれも鼻を使う。段々と、呼吸によってお腹のみが動く感覚が鮮明になってくる。すると、副交感神経が優位になってリラックスした状態になる。不眠の人は呼吸ひとつで寝つきが変わるというくらい。
呼吸に意識が向いたところで、ヨガの動きに入っていく。「太陽礼拝」というヨガの基本の動きがプログラムのメイン。12のポーズを1呼吸1動作で進めていく太陽礼拝、じっくり呼吸を意識したおかげか、柔軟性が高まって身体がスムーズに動く。
淡々と、わかりやすく丁寧にプログラムを遂行していくGOMAさん。ヨガとディジュリドゥをミックスしたプログラムはGOMAさんの中に自然と出来上がっていったスタイルなのだそうだ。
どちらも呼吸にフォーカスしたり内省的に取り組んだりと共通点があるけれど、探究心を持って練習を重ね、自分のものとするGOMAさんの集中力と己への厳しさに感嘆する。
一連の練習が終わると、最後はシャヴァーサナ(亡骸のポーズ)へ。ヨガで欠かせないこのポーズは、仰向けに横たわり、目を瞑って呼吸に集中する。一見寝ているようだけれど、自分の意識や思考から距離をとって内観する時間なのだ。ヨガの練習の中で一番奥の深い時間でもある。
シャヴァーサナ中に、GOMAさんのディジュリドゥ演奏による「サウンドマッサージ」が行われる。複数の豊かな倍音(音の振動)を操る演奏。目を瞑っているけれど、音の振動で、GOMAさんがゆっくりと参加者の周囲を移動しているのが分かる。
一人ずつに向け、ディジュリドゥの音を浴びせてくれる。頭や足先など、音とともに身体の部位ごとに振動するため、今どの位置でディジュリドゥが吹かれているのかが体感で感じ取れる。
「サウンドマッサージ」との名前通り、音と身体が共鳴して一緒に振動する。自分の身体も楽器になったような、自分の意識と別に身体が揺れているような不思議な感覚。
ギャラリーの空間全体も、ディジュリドゥの迫力ある心地よい低音と振動で包まれ、まるで水面に浮かんでいるかのようだ。
体感5分くらいだろうか、「サウンドマッサージ」タイムが終わり、同時にシャヴァーサナも終了。ゆっくりと少しづつ手足を動かしていって、体感を取り戻していく。
あぐらの姿勢へ起き上がったら、1時間前の自分との変化を感じてみる。骨盤が安定して身体がぐらぐらしないし、何よりも深い呼吸の穏やかさを味わえる。
「良い日曜日をお過ごしください」
そんな素敵な挨拶とともに、ヨガ+ディジュリドゥ体験は終了。裸足で踏むギャラリーの床はひんやりとしているけれど、温まった体温と混ざり合って心地よい。
「GYRE GALLERY」の外へ出ると、午前中のまだ柔らかい表参道の光が視界を照らす。GOMAさんは、自身の中に湧き起こる「ひかり」に生命の源を感じ、希望を抱いた。「呼吸」もまた、生命維持活動において必要不可欠であり、生きる根源だ。新鮮な空気を常に感じられること、それだけでありがたく、深く呼吸をしながら見る景色は繊細に彩られる。
たまには早起きも悪くないな、なんて考えながら、ディジュリドゥの音色が馴染んだ身体で、賑わい始めた日曜日のオモハラエリアへ歩き出した。
■概要
GOMA個展「ひかりの世界」
開催期間:2024年5月4日(土)〜6月29日(土)
開催場所:GYRE GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
電話番号:0570-056990
営業時間:11:00-20:00
定休日:不定休
※敬称略
Text:Rumi Hasegawa
- 長谷川瑠美
外部ライター