“愛”のレンズで自分だけの”Home”を捉える
神宮前2丁目の「Gallery 38」にて、南米・チリ出身のアーティスト、クリスチャン・プーレイの新作展「Geographies of Love」が開催中。2024年5月11日(土)〜6月30日(日)まで。2021年、同ギャラリーにて開催のアジア初個展から3年振りの展示となる。
クリスチャン・プーレイ(Christiane Pooley)は1983年、チリ生まれ。植民地化による複雑な歴史を持つ土地で育つ。チリの大学で美術を学び、その後ロンドン、パリへと拠点を移しながら、画家として活動。同時に、母国から離れることで、より自身のルーツや自国の歴史が持つ影響を自問するように。人々と歴史の関係性には見え隠れするレイヤーがあると捉え、それらを伝える媒体としてペインティングを用いる。
本展では、「Belonging(帰属する)」という感情/個人と「Home( (家、故郷)」との関係性という、プーレイが一貫して思考するテーマを探求した新作が展示される。育った土地や家族のアーカイブ写真をベースとする作品は、夢と現実の狭間のような情景が描かれる。柔らかな印象ながら、大胆で力強い絵筆の跡と不穏な空気を感じさせる描写が、鑑賞者に緊張感を与える作風だ。
「”Home (家、故郷)”とは、個人、家族、国、地域が他との関係を理解するための最も基本的な社会的概念の一つ」と語るプーレイ(2017年「Home—So Different, SoAppealing.」展より)。プーレイ自身が、チリという「Home」を離れて俯瞰する経験をしたからこその、「自分」を探求するための「場所」の認識の重要性が、制作過程に反映されている。
プーレイは、ペインティングのレイヤーを重ねることで、土地の地理的環境、文化、社会、人々の感情といった断片を、1つの絵画に共存させる。物理的環境としての「場所」と、個人の感情的な状態としての「場所」を探求するプーレイの作品は、鑑賞者にとっても自身の記憶との対話を促してくれるはず。
オモハラエリアは、戦後、現在の代々木公園にアメリカ軍用地「ワシントンハイツ」が存在したり、米軍の依頼で日本初のスーパーマーケット「紀伊國屋」が誕生したりと、歴史的にもグローバル色の強い街だ。多様な文化が渦巻くオモハラで、今一度、自分の「Home」を俯瞰する展示、ぜひ足を運んでみてほしい。
■概要
クリスチャン・プーレイ 新作展「Geographies of Love」
開催期間:2024年5月11日(土)〜6月30日(日)
開催場所:Gallery 38
住所:東京都渋谷区神宮前2-30-28
電話番号:03-6721-1505
営業時間:12:00〜19:00
定休日:月曜・火曜・祝日
■画像クレジット
Image rights ADAGP, 作品名, 2024 Christiane Pooley
>>EDITOR’S VOICE
外苑前の「WORLD BREAKFAST ALLDAY」では”南米・コロンビアの朝ごはん”を期間限定で提供中。トウモロコシを生地にして、肉や野菜などを詰め、バナナの葉で包んで蒸した「タマル」は、チリでも「ウミータ」の名前で食されているそう。ギャラリーからは徒歩11分と少し遠いけれど、展示と合わせて南米を感じてみてはいかが?
※敬称略
Text:Rumi Hasegawa
INFORMATION
神宮前「Gallery 38」にて、クリスチャン・プーレイ個展が開催 3年振りの新作展
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前2-30-28
- 電話
- 03-6721-1505
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 定休日
- 月曜・火曜・祝日
- 開催期間
- 2024年5月11日(土)〜6月30日(日)
- 長谷川瑠美
外部ライター