地球とそれを取り巻く概念を掘り起こす
Blum & Poe(東京)にて、マイケル・ホー、ス・ユーシン、山下紘加によるグループ展を、3月11日(土)まで開催中。
オランダ・アーネム生まれのマイケル・ホー、台湾・花蓮県生まれのス・ユーシン、日本・兵庫県生まれの山下紘加。国も、バックボーンも異なる3人だが、1991年生まれという共通点を持つ。マイケル・ホーの作品は灰色のベールに満たされており、植民地時代の遺物や他者の異なる経験、奇妙さ、古くからの言い伝え、愛する者との記憶などが横たわる、深い潜在意識に私たちを誘う。キャンバスの裏面から背景を絵の具で描いて前面に押し出し、ようやく最終的なイメージを描くホーの手法。裏から表への横断的な動きは、はざまの存在を想起させ、それは中国からの移民2世としてオランダに生まれてドイツで育ったホーの生い立ちを彷彿とさせる。
ス・ユーシンは、天然の鉱物や貝、半貴石からなる顔料と膠を合わせる日本画、あるいは日本画的な絵画の技法を学んできた。自然から調達したこれらの素材を活用し、自らの手で形作った木材ブロックを幾重もの色と流動的な曲線が織りなす地形に見立て、その上に新たな秩序を創り出す。触知的な感覚をもった作品群は、フォーマリスティックな絵画史、美の伝統、近代的な経済と文化システムが持つ機能についての言及であると同時に、ミクロかつマクロな生態システムに対する人為的危険の意識を内包していると言える。
そして、山下紘加の風景画には、作家の心的情景の断片や、山々に飛び込むように、あるいは、空に散り散りと溶けゆくように描かれた霊的な像が隠されている。現在の拠点とし、心を寄せる岡山県の田園地帯の風景といった、自身が由来する土地との結びつきや、その土地のコミュニティにおける日常生活の営みから着想を受け、画題に取り入れる山下。人間が里と平地の境界地で自然と触れるように、逐語的なものが具象性を帯びたものへと拡がりもって展開していく様子が見て取れる。
多様な文化的背景のもとに育ち、独自の道でこの世界を渡り歩いてきた3人。本展では、大地への回帰や、その内在的な環境をメタファーとして、あるいはより奥深い、認識の重層さを伝えるものとして描く、彼らの近作群を紹介する。ビルとコンクリートに囲まれた原宿の街で、溶岩床、山々の境界地、洞穴に入る薄明かりを感じて。
■キャプション
画像1:マイケル・ホー「Into the Shores of the Night」2022 年
Oil and acrylic on canvas 165.3 x 185.5 x 3.2 centimeters
© Michael Ho, Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo, and Gallery Vacancy, Shanghai
Photo: Hayato Wakabayashi
画像2:ス・ユーシン「Profile of a crater (Tatun Volcano Taipei)」2022年
Various colors of volcanic ashes, conch shell powder, soil, yellow ochre, ceramic powder and gesso on board 204.7 x 115.1 x 5.4 centimeters
© Su Yu-Xin, Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo: Hayato Wakabayashi
画像3:山下紘加「Soot」2022年
Oil on linen 162.4 x 130.4 x 3.2 centimeters
© Hiroka Yamashita, Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo: Hayato Wakabayashi
画像4〜8:マイケル・ホー、ス・ユーシン、山下紘加 Blum & Poe(東京)での展示風景画像、2023 年
© Michael Ho, Su Yu-Xin, Hiroka Yamashita, Courtesy of the artists and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo: SAIKI
■概要
マイケル・ホー、ス・ユーシン、山下紘加 グループ展
開催期間:1月20日(金)〜3月11日(土)
営業時間:12:00〜18:00
開催場所:Blum & Poe(東京)
住所:東京都渋谷区神宮前1-14-34 神宮の森5F
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
海外アーティストの展示会といえば、Blum & Poeから徒歩10分ほどの場所にあるBOOKMARCでも、パリ拠点の写真家・Karl Hab(カール・ハブ)の写真展を開催しています。こちらは1月31日(火)までの実施になるので、気になる方はお早めのご来場を。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
原宿のBlum & Poeでマイケル・ホー、ス・ユーシン、山下紘加によるグループ展を開催中
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前1-14-34 神宮の森5F
- 営業時間
- 12:00〜18:00
- 定休日
- 月曜、日曜(祝日は閉廊)