
クレヨンハウス表参道「子どもの本」エリア担当・鏡 鉄平さんが選ぶ、心がゆれた1冊
OMOHARAREALでは秋の読書企画を2022年も開催。「本棚を見ればその人となりが分かる」なんてよく言われているけれど、表参道・原宿で働くスタッフたちのお気に入りの1冊、気になりません?今年の【私の1冊】のテーマは、心がゆれた1冊。気持ちが揺さぶられた、感動した、モチベーションが上がったなど、そんな1冊を紹介してもらいました。個性溢れるお店と人の魅力にもフォーカスしています。
今回おすすめしてくれたのはクレヨンハウス表参道「子どもの本」事業部サブチーフの鏡 鉄平さん
鏡 鉄平(かがみ てっぺい):もともと、母親が司書を務めていたこともあり、本が好きだったことから絵本に興味を持ち、2015年よりクレヨンハウスに入社。現在はクレヨンハウス表参道の1F「子どもの本」エリアの売場責任者を務める。事業部全体の取りまとめや店舗における取材対応全般を担っている。絵本の新刊から本を選ぶ「新刊会議」を行うクレヨンハウスでは、売り場スタッフはすべて毎月100冊〜200冊出る新刊を全て読んでいるんだとか。
鏡さんの心がゆれた1冊:「悲しみのゴリラ」/文:ジャッキー・アズーア・クレイマー 絵:シンディー・ダービー 訳:落合恵子
「紹介するのは“グリーフケア”の絵本になります。死別などを体験し、喪失と立ち直る間の感情が不安定な状態を“グリーフ”といって、それをケアするための絵本というのがあるんです。
この絵本は、クレヨンハウス主宰の落合恵子が訳者を務めています。お母さんを亡くしてしまった子どもと、その子だけに見えるゴリラが主人公。両者のふれあいを通じて、悲劇を自分の中に受け入れていく物語です。
この本の良いところは、悲しみは乗り越えられないものであり、ずっと続いていくものとしているところ。乗り越えるのではなく、悲しむ気持ちをそっと肯定してくれる。そして自分だけではなく、悲しんでいる人が近くにいることを教えてくれます。
僕も1年ほど前に、家族を亡くしたんです。その時にあらためて読み直し、より実感としてこの本についての理解を深められました。母からも“読んだよ”とLINEが来て互いに話ができたんですが、近しい人と悲しみを共有することの大切さ、心のおきどころを見つけてくれる1冊です。子どもから大人まで読んでほしい本ですね。」
■最新のクレヨンハウス表参道情報
表参道の地で46年。クレヨンハウス表参道は2022年11月23日に最後の営業日を迎えた。今後はビル老朽化のため、吉祥寺へと移転し、新たな歴史のページをめくることとなる。クレヨンハウス表参道に感謝と別れを告げるように、最終日には多くの人が訪れた。「吉祥寺にもぜひ来てください」と鏡さん。表参道・原宿のローカルメディアとしては寂しい限りだが、クレヨンハウスの新たな1歩を応援したい。
絵本と木製のおもちゃ、オーガニック化粧品、食料品を扱い、さらにレストランを併設したショップ。表参道に開業して47年目、今の店舗になってから37年目を数え、地域の人はもちろん、年代を問わず多くのファンを持つ。1Fフロアには4万〜5万冊の絵本が並び、創業当初から「座り読みOK」を掲げていた。大人から子どもまでが楽しめる画期的なショップは、2022年11月23日をもって表参道での営業を終了し、吉祥寺へと移転する(オープン日は2022年12月17日予定)。
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:OMOHARAREAL 編集部