原宿の自由を象徴するアイコンが南青山に出現中
原宿のストリートカルチャーが好きならお馴染みの「SKOLOCT(スコロクト)」。SKOLOCTを生み出したのは、中野毅氏。中野氏は建築デザインチーム「NGAP」として(氏曰く、それもアート活動の一環)、90年代より「NOWHERE」など原宿の重要なショップのデザインや塗装を手がけてきた。SKOLOCTはキャラクター名でもあり、現在の氏の活動名でもある。
そんなSKOLOCTがこの度、南青山のFeb gallery Tokyoで新作個展その名も「SKOLOCT」by SKOLOCTを開催。原宿から世界を駆ける、SKOLOCTの世界観を体現した渾身の個展だ。プレビューへ招待いただいたので、その模様をレポートしたい。
Feb gallery Tokyoの企画展が封切りされるときは、なぜかいつも嵐。この日も夕方から一帯はゲリラ豪雨に見舞われた。しかし、それも慣れたもの。道中はいつもこれから見られる作品と空間への期待で胸がいっぱいだ。到着するころには雨足も弱まってきた。
入り口ではさっそく、大きなSKOLOCTがお出迎え。ストリートカルチャーの香りがするスローアップ(グラフィティのスタイル)のような軽妙なタッチや、スプレーで絵画然としたブラシの質感を出していたり、作品によって変幻自在に雰囲気が変わるのもSKOLOCTの魅力だ。
ギャラリーに入ると、重厚な低音のトラップビートが聴こえてくる。この日は、SKOLOCTのクルーたちがDJとなり、ギャラリー内に彩りを添えていた。
中野氏はかのNIGO®氏やUNDER COVER(アンダーカバー)のJONIO(高橋盾)氏と長きに渡る交流があり、特にJONIO氏とはお互いのブランド同士のコラボレーションをさかんに行ってきた。もはや盟友と言っていいほど、その関係性の深さを感じさせる。
中野毅 氏
UNDER COVERのほか、HYSTERIC GLAMOUR(ヒステリックグラマー)やSTUSSY(ステューシー)など国内外の原宿でおなじみのブランドともコラボ。国内外問わずラッパーや、ストリートキッズたちから熱い支持を得ている。
特徴的なのがそこに描かれたキャラクター。大きな手足を持つ、うさぎのようであり猫のようでもある“それ”は、原宿の路上で生まれ、今やその存在感はストリートブランドに留まらない。世界中のセレブに寵愛を受け、アートやファッションという垣根を悠々と飛び越えていく。
今回展示されている作品は全て、このFeb gallery Tokyoで新たに制作されたもの。ギャラリーのアイコンでもあるモニターには、大きなビニールにフリースタイルで描かれた、中庭のインスタレーション作品が映し出されていた。
禁止テープで貼られたビニールに描かれた無軌道なドローイング。鬱屈な現在の社会状況において自由を主張するフラッグのように存在感を示しながら。風に揺れはたいめいていた。
レセプションでは、かねてよりSKOLOCTと親交がある人たちはもちろんだが、比較的若い人や、グローバルな来場者が目立っていた。SKOLOCTというブランド自体が若い世代と海外ファンに支持されているのがよくわかる。
UKファッションに精通する第一人者であり、雑誌など数々のメディアでミュージシャン、俳優、タレントのスタイリングを務めるスタイリスト・馬場圭佑氏と、Feb gallery Tokyoの運営を務め、アートの魅力をランダムに発信するオウンドメディア「ARTRANDOM」を手がける田辺良太氏も、会場で談笑する姿が見られた。両者ともに、中野氏と旧くからの付き合いがあるという。馬場氏は神宮前2丁目に英国古着を専門に扱う「COUNCIL FLAT 1」を運営しているため、SKOLOCT STOREとは近所でもある。
左:馬場圭介氏 右:田辺良太氏
同じく、神宮前2丁目、原宿の象徴的なギャラリーのひとつGALLERY TARGETの水野桂一氏も楽しそうだ。SKOLOCT氏と30年来の付き合いであるという、Feb Gallery オーナー・藤井フミヤ氏も交え、作品に囲まれた空間で盛り上がっていた。
GALLERY TARGETの水野桂一氏。
和気あいあいとした雰囲気の中、その様子を見守るSKOLOCTの作品たち。その姿は愛嬌がありながらも、どこか狂気を漂わせる。SKOLOCTの持つカオスな世界観が鑑賞者を魅了する。
藤井フミヤ氏も、若い世代と交流する機会があまりないからと、SKOLOCTチームの若者たちと会話を楽しんでいた様子。SKOLOCTはジャンルだけでなく世代を越えたコミュニケーションを促す要因として機能する。それはまさに、作品展でSKOLOCTの持つ魅力がいかんなく発揮されていると言えるだろう。
「彼らと一緒に撮ってよ」そういってチームに声をかけるSKOLOCTこと中野氏。ともにブランドを盛り上げるチームへの愛情を感じた。
Feb Gallery Tokyoの柿落とし記念の企画「Keep In Touch」で、NIGO®️氏やJONIO氏と並び、作品を出展していたSKOLOCT氏。コロナ禍で人と人の繋がりが希薄になってしまったこの時代に「もっとオフラインでつながりたい」という藤井フミヤ氏の思いのもとで「Keep In Touch」が行われ、スタートしたFeb gallery Tokyoだったが、「Keep In Touch」で蒔かれた種は新作個展として実を結んだ。
SKOLOCTもまた、アートやファッションで人々をつなげる存在だ。その影響力と魅力をレセプションの雰囲気と作品から充分に感じ取ることが出来た。
自由で軽快で無秩序。破天荒なSKOLOCTを見ていると、嵐が過ぎ去った青山の街に吹き抜ける風のように、どこか胸のすく思いを抱かずにはいられない。 原宿が世界に誇り、今なお進化し続けるカルチャーキメラSKOLOCT。その現在地を南青山のFeb gallery Tokyoでぜひ確かめてみてはいかがだろうか。
■『SKOLOCT』by SKOLOCT
開催期間:8月5日(金)〜 8月21日(日)
営業時間:12:00〜19:00
開催場所:Feb gallery Tokyo
住所:東京都港区南青山4-8-25
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki