1Fと2Fで広がる別世界
NANZUKA UNDERGROUNDでは、7月23日(土)〜9月4日(日)の期間中、1Fで大平龍一「SYNDROME」、2Fで谷口真人「Where is your ♡?」の個展をそれぞれ開催する。
1Fの大平は、木材を使って作品を制作する彫刻家だ。大平は近年、この素材本来の持つ特性に立ち返り、創作における無心性、理由のない衝動といった、人間の原初的衝動ともよぶべき創造性に基づき、「意味の定まらない」造形物を制作している。中でも、特に大平を熱狂させているのが、パイナップル。本人も「いつからこんなにパイナップルのことばかり考えるようになってしまったのだろうか。家族と食事をしている時。大好きな車のことを考えている時。ネットニュースを読んでいる時。映画を見ている時。いつもどこか頭の片隅にパイナップルがいる」と語るほど、その想いは強い。
本展の主役は、そんなパイナップルが合体ロボット的に擬人化した、アバターのような大型の木彫作品が務める。Rhizome(地下茎)と大平が称する本作品は、6本指、天狗、壺、大平の子供が描いた絵をイメージソースにした鳥、象、あるいは男性器を連想させる矢印、改造車といったものが階層的に積み重なって構成されており、独特な雰囲気を漂わせている。
一方、2Fの谷口は、3DCGとプログラミングを組み合わせたインスタレーション、アニメーション作品、そして鏡を用いた箱式絵画を制作している。その作品の多くに、#親しみやすさ、#かよわさ、#儚さ、#Kawaii といったキーワードを連想させるような存在があらわれる。それは、感情移入を可能とするものとして、谷口が仕掛けた最も重要なコードであると言える。
彼の作品は、透明アクリル板の表面に置かれた絵の具と、箱の中の鏡に反射して見える肖像を両方同時に提示し、鑑賞者の視線は自ずとその関係の中を往復するように仕組まれている。鏡に映る像は絵の具によって生み出され、鏡に映し出された絵の具は像を生み出す。鏡、絵の具、像はその関係性が明白に示されているにもかかわらず、鑑賞者の多くは、鏡に映る像を少女像であると認め“親しみやすい存在”として認識する。そしてもちろん、鑑賞者はこのシステムの中でしか彼女を見ることができない。谷口の作品は、「私達は人間の存在をいかにして認知しているのか?」といった根源的な謎を追い求めているかのようだ。
全くジャンルの異なる2名のアーティストが、同じギャラリー内のフロアで各々の世界を淡々と展開する作品展。神宮前の実験的な現代アートギャラリーで、今までにないアート体験を堪能してほしい。
■画像クレジット(左から)
1:Ryuichi Ohira Blue pineapple syndrome 2022
2:Makoto Taniguchi Untitled 2022
3:Ryuichi Ohira Pineapple shelf 2022
4:Ryuichi Ohira Cherry 2022
5:Ryuichi Ohira Blue pineapple chair study 2022
6:Makoto Taniguchi Untitled 2022
7:Makoto Taniguchi Untitled 2022
8:Makoto Taniguchi Untitled 2022
【画像1,3,4,5】 ©Ryuichi Ohira 【画像2,6,7,8】 ©Makoto Taniguchi
Courtesy of NANZUKA
■概要
大平龍一「SYNDROME」/谷口真人「Where is your ♡?」
開催期間:7月23日(土)〜9月4日(日)
営業時間:11:00〜19:00
開催場所:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前 3-30-10
電話番号:03-5422-3877
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
NANZUKA UNDERGROUNDから徒歩7分ほどの場所にあるEUKARYOTEでは、現在、アーティスト・山内祥太の個展「愛とユーモア」を開催中。作品では、溢れ出るユーモアが愛へと姿を変えていく様子や、一貫して漂う不気味さや暴力性といった、表裏一体の美しさが映し出されています。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
NANZUKA UNDERGROUNDで大平龍一「SYNDROME」、谷口真人「Where is your ♡?」気鋭作家2名の個展をそれぞれ開催
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前3-30-10
- 電話
- 03-5422-3877
- 営業時間
- 11:00〜19:00
- 定休日
- 月曜、祝日