ギャラリーという空間の別のあり方を探る
EUKARYOTEにて、久保田智広の個展「eat ro ekyu」を5月1日(日)まで開催している。
久保田智広は、インスタレーションやパフォーマンスなど複数のメディアを横断しながら、物事の価値基準や選別基準をテーマに制作を行う若手現代アーティスト。近年は、個人的な状況や実際にあった出来事をベースに、共同体によるモノの所有や、個人から人類全体にまでおよぶ広範な負債に対しての向き合い方について探る作品を展開してきた。
久保田の実践の背景には、自らをとりまく環境の改善を目指す「対症療法的」な態度が通底している。それは新たにモノを生み出し続けることに対して作家が感じる限界や、私たちを取り巻く社会的なシステムにおける疑問への一つの応答であると言える。それと同時に、既存のモノの価値の読み替えや、そこからオルタナティヴな価値を生み出していく行為でもあるのだ。
本展では、そのような制作の延長となる実践を展開。久保田はギャラリー空間に普段置かれている作品や備品、什器などを会場の外部へと運び出し、その構成を一変させる。通常のギャラリーの機能を阻害し、空間としての在り方を抽象化することで、ギャラリーという場の物理的・システム的な裏側を可視化。空間の最適な環境について再考するために、一時的な実験の場を作り出した。
美術の世界を規定する社会経済的な枠組みへ意識を向けた、制度批判のアーティストの手つきを思わせるが、本展はEUKARYOTEという会場を一つのケーススタディとして、ギャラリーという空間の別のあり方、ひいては一つの有機的なシステムを新たに創出することを目指している。
今回が初の個展開催となる久保田智広。有望な若手アーティストを多数輩出してきた神宮前のEUKARYOTEで、新たな才能がおくる実験的な試みを覗いてみては。
■概要
久保田智広個展「eat ro ekyu」
開催期間:4月15日(金)〜5月1日(日)
営業時間:12:00〜19:00
開催場所:EUKARYOTE
住所:東京都渋谷区神宮前3-41-3
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
EUKARYOTEの真向かいに位置するワタリウム美術館では「視覚トリップ展」を開催中。ワタリウム美術館の歴史を、視覚を通じて旅するようなエキシビションとなっています。こちらもお見逃しなく。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
EUKARYOTEにて久保田智広の初個展を開催 空間の最適な環境を再考するアート展
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前3-41-3
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 定休日
- 月曜日
