独自の構造で描かれる「ポートレート」
スペイン・バルセロナを拠点に活動するペインター、アドリアナ・オリバーによる個展『This Time, Tomorrow』がミヤシタパークのギャラリーSAIにて開催中。2022年4月8日(金)〜4月24日(日)まで。
アドリアナ・オリバーは1990年生まれ、バルセロナ在住のアーティスト。普段の生活に存在する様々な要素からインスピレーションを受け、50〜60年代に撮影された写真やシネマトグラフィをモチーフに制作を行う。一見すると、その手法には安定した一貫性が見られるが、「私はこれまで、自分のキャラクターにアイデンティティを与える必要性を感じたことはありません」と本人が話すように、彼女の描く作品はかつて優美な肖像が存在した時代背景とは異なる、“ストーリーを持ちながらも視覚的な個性が失われているポートレート”という興味深い構造を成している。またその独自の構造は、彼女自身がこれまで制作の上で重きを置いてきた要素のひとつである「ジェンダー」をフラット化するアプローチでもあるのだ。
主に表情を読み解く上で大きな役割を持つの「目」を描かず、対象をグラフィカルに描くスタイルも彼女の言うアイデンティティの不在を強調する役割を果たしている。表情を抜き取られた作中の登場人物は、過去ポップアートが継承してきた大衆性や視覚的インパクトを体現。それと同時に情報社会の下、相対でのコミュニケーションが困難になりつつある現代的な匿名性の相関も感じることもできる。
日本でのおよそ2年ぶりの開催となる本展覧会。会場では、3メートルの大型平面作品、ブロンズ製の立体作品をはじめ、全て新作のアートピースが空間を囲み、各々の作品に登場するキャラクターからは異なる解釈を楽しむことができる。また、本展に合わせ制作されたエディション付きの小型立体作品、関連グッズの販売も。本展の「This time, tomorrow」というタイトルには「どんな状況でも、どんなときでも、いつも誰かのそばにいたい。存在したい」という作家本人のメッセージが込められている。世界情勢に大きな変動の見られる昨今、彼女の描く作品は穏やかでありながらユニークな存在感を放ち、みるものに改めてアートの持つピースフルな力を届けるだろう。
■画像クレジット
THIS TIME TOMORROW, 2022, Adriana Oliver, Acrylic on Linen,3000 x 2000mm( Diptych two canvas of 2000 x 1500 mm)
■概要
アドリアナ・オリバー『This Time, Tomorrow』
開催期間:2022年4月8日(金)〜4月24日(日)
時間:11:00-20:00
定休日:期間中無休
場所:SAI
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
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※敬称略
Text:miwo tsuji
INFORMATION
アドリアナ・オリバーによる日本で2年ぶりの個展『This Time, Tomorrow』がSAIで開催中
- 住所
- 東京都東京都渋谷区神宮前6-20-10RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
- 電話
- 03-6712-5706
- 営業時間
- 11:00-20:00
- 定休日
- 期間中無休
- 開催期間
- 2022年4月8日(金)〜4月24日(日)
