微かな痛みを伴う「情景の絵画」
富田直樹の約2年ぶりとなる個展「ラストシーン」が、MAHO KUBOTA GALLERYで開催。2022年3月2日(水)〜4月2日(土)まで。
富田直樹は、1983年茨城県生まれの美術家。厚塗りの油絵具を重ねる手法で描いた大都市近郊の風景や空きテナントのファサード、職業をもたないフリーターの若者達を描いた瑞々しいペインティングが注目を集めている。富田は「フィクションは描けない」と言う。いや、敢えて描かないのだと想像する。作品の殆どはアーティスト自身が撮影した写真をもとに忠実に描かれており、厚塗りに重ねられた油絵具の筆致によって変化はつけてあるものの抽象性には遠く、その成り立ちは多分に写真的である。
「ラストシーン」と題された今回の新作展では、ひとつの画面に複数の人物の姿を捉えたペインティングが新しい。バイクに相乗りしていたり、カラオケのマイクを握っていたり、居酒屋の駐車場に集っているモチーフには注目すべき特徴等はなく「どこにでもいそうな若者の姿」である。そこに彼らのコミュニティの中での緩やかな関係性は感じ取れるものの、強い絆や決定的瞬間といったモニュメンタルであったりシンボリックな感覚はなく、あくまでもそれらは日常の中のワンシーンのように感じられる。アンチクライマックスの連続である日々のリアリティがそこに描かれているのだ。
今回展示される新作で、複数の人物像を配置することによって描かれたのは、現代における「無名のコミュニティ」だ。緩やかな空気感と並行して富田の代名詞でもある、見る人の心の中に「微かな痛みを伴う」エモーショナルな感覚を呼び起こす「情景の絵画」となっている。
■クレジット
①土曜日, 2021, 181.8 x 227.3 cm, oil on canvas ©︎Naoki Tomita / MAHO KUBOTA GALLERY
②夕暮れ, 2021, 112 × 145.5 × 3 cm, oil on canvas ©︎Naoki Tomita / MAHO KUBOTA GALLERY
■概要
富田直樹「ラストシーン」
開催期間:2022年3月2日(水)〜4月2日(土)
時間:12:00-19:00
休廊日:日・月・祝
場所:MAHO KUBOTA GALLERY
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
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※敬称略
Text:miwo tsuji
INFORMATION
エモーショナルな感覚を呼び起こす 富田直樹個展「ラストシーン」が開催
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前2-4-71F
- 電話
- 03-6434-7716
- 営業時間
- 12:00-19:00
- 定休日
- 日・月・祝
- 開催期間
- 2022年3月2日(水)〜4月2日(土)