無文ならではの魅力
南青山の根津美術館、展示室1・2にて企画展「かたちのチカラ −素材で魅せる−」を、2月26日(土)〜3月31日(木)の期間で開催する。
今回は根津美術館のコレクションを軸に、3つの切り口で素材が形作る造形美を見つめる。ひとつは、中国の宋元時代を中心とした無文の漆器や磁器に代表される、均整と洗練を極めた「唐物」のかたち。次に、長年の使用に耐えるたくましさを持った日本の「用」のかたち。特に寺社の什器であった朱漆器は、後世その力強い造形に加えて塗膜の摩耗にさえも美が見いだされるようになった。そして3つ目は、新たな価値の創出に挑み続ける「茶道具」のかたち。中でも、素材のバリエーションが豊かな花入と水指のかたち、また茶席では脇役としてさりげなく場を支える、塗物の茶道具のかたちにあらためて光を当てる。
本展覧会で注目する「漆」は、ウルシノキから採取される樹液を用いた天然の塗料であり、接着剤でもある。塗料としての漆は、硬化すると麗しい艶のある頑強な塗膜を形成する。この美しさと強さを兼ね備えた希有な素材は珍重され、古来さまざまな造形に用いられてきた。これら漆工に陶磁や金工の名品も織り交ぜながら、文様がないからこそ鮮明になる、かたちのチカラ・素材の魅力を感じられる展覧会となっている。
展示室5では、武門の出でありながら画人としても活動した者たちの作品とその背景を探る「武人画家」(画像5、6)、展示室6では麗らかな春の茶席にふさわしい茶道具約20件を取り合わせた「仲春の茶事」(画像7)を同時開催。日々新しい文化が生み出されていく表参道で、古き良き名品の数々を堪能しよう。
■キャプション
画像1枚目:朱漆盤 日本・室町時代 永正3 年(1506) 根津美術館蔵
画像2枚目:黒漆輪花椀 中国・北宋時代 12 世紀 根津美術館蔵 永田牧子氏寄贈
画像3枚目:重要文化財 青磁竹子花入 龍泉窯 中国・南宋時代 13 世紀 根津美術館蔵
画像4枚目:緋襷鶴首花入 備前 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
画像5枚目:刷毛目茶碗 銘 八重葎 朝鮮・朝鮮時代 16 世紀 根津美術館蔵
画像6枚目:山水図 海北友松筆 日本・桃山時代 16~17世紀 根津美術館蔵 小林中氏寄贈
画像7枚目:色絵桜花文水指 肥前 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
■概要
かたちのチカラ −素材で魅せる−
開催期間:2月26日(土)〜3月31日(木)
営業時間:10:00〜17:00 (最終入場時間 16:30)
開催場所:根津美術館
住所: 東京都港区南青山6-5-1
電話番号:03-3400-2536
※オンライン日時指定予約制。詳しくは公式ホームページをご覧ください
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
根津美術館から徒歩5〜6分の場所に佇む、くるっと巻かれたクッキー「シガール」で有名なヨックモックが運営する「ヨックモックミュージアム」。ここでは、現在「地中海人ピカソー神話的世界に遊ぶ」展を開催中。ピカソの陶芸作品にも注目です。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
根津美術館で無文の名品の企画展「かたちのチカラ −素材で魅せる−」を開催
- 住所
- 東京都港区南青山6-5-1
- 電話
- 03-3400-2536
- 営業時間
- 10:00〜17:00
- 定休日
- 月曜日、3月22 日(火)※但し3月21日(月・祝)は開館