30年前と同じ「制作プロセス」で
コラージュ・アーティスト、Ichi Tashiroによる個展「Serendipity」がGallery COMMONにて開催。2022年2月26日(土)~3月20日(日)まで。
1984年に愛媛県で生まれ、幼い頃からスクラップブッキングやコラージュを制作していたIchi Tashiro。18歳の時に画材の入ったバックパックだけを携えてニューヨークへ移住、独学でアーティストとしてのキャリアをスタートさせた。渡米した当時はゴミ箱から新聞や雑誌を拾い路上で観光客にコラージュ作品を売りながら生活をしていたという。その後、ニューヨークや香港のきらびやかなギャラリーやアートフェアの世界を彼は旅し、自由と創造性の表現としてのアートと、マーケットや政治という退屈な現実との間の矛盾の露呈をさらに実感することになった。そして、そのような中でも「自己表現とは何か」「価値とは何か」という問いに常に直面していたTashiroは、一時は生命線であった「使い捨て」のメディアに何度も立ち戻ることになる。
今回の展覧会では「30年間の潜在意識の研究の成果」として、30年前と同じプロセスで制作された新作を計14点発表。しかしながら、Tashiroがキャリアを始めた頃と今では世界が大きく異なり、彼の創作活動は、皮肉なことに、紙媒体としての新聞や雑誌が失われつつある絶望的な状況の中で展開されてきた。本展で展示される木製パネルの形は、折り紙の伝統からインスピレーションを得て制作し「現代の新聞」の切り抜きが貼り付けられている。それぞれ違う使い道の背景を持つ素材をコラージュするという行為は、これまで紙が文化や情報、芸術を伝える手段として機能してきたことを明らかにし、紙の役割、ひいてはコミュニケーション手段やそれによって定義される創造性の可能性について、我々に示唆を与えているのだ。
テクノロジーの進歩により、瞬時に正確な答えが出る生活になった現代において、Tashiroの幻想的な作品は、想像力や創造力を育む神秘性やセレンディピティの重要性を再認識させる。社会の窮屈な構造、多様性や不適合を抑圧する偏見、圧倒的な情報の洪水による消費者心理、そして人間の表現を抑制するあらゆる力への反発…、30年前と同じプロセスで制作されたという一見奇抜な作品群に込められた想いとは?
■クレジット
1.Untitled (serial number 40). 2021. Newspaper and pigment on wooden panel with resin. 1450 x 1450mm. ©2021 Ichi Tashiro.
2.Untitled (serial number 39). 2021. Newspaper and pigment on wooden panel with resin. w1450 × h1450 × d40mm.
3.Untitled (serial number 41). 2021. w600mm × h2100mm × d40mm. Newspaper and pigment on wooden panel with resin.
■概要
Ichi Tashiro「Serendipity」
開催日:2022年2月26日(土)~3月20日(日)
時間:12:00-19:00
休廊日:月曜・火曜
場所:Gallery COMMON
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
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※敬称略
Text:miwo tsuji
INFORMATION
コラージュアーティスト Ichi Tashiroの個展がGallery COMMONで開催
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前5-39-6B1F
- 電話
- 03-6427-3827
- 営業時間
- 12:00-19:00
- 定休日
- 月曜・火曜
- 開催期間
- 2022年2月26日(土)~3月20日(日)