
5年ぶりの原宿、watabokuの作品が多くの鑑賞者を魅了
米原康正(以下:米さん)が立ち上げたジャンルにこだわらないコラボ専門のブランド+DA.YO.NE.(プラスダヨネ)。米さんについての詳細はOMOHARAREALのインタビューを参照してほしいが、+DA.YO.NE.キュレーションのもとで最新の展示が、神宮前2丁目のSORToneギャラリーで開催されている。
今回、+DA.YO.NE.と展示を行うのはデジタル・アーティストwataboku。個展「WHO」は2016年の表参道ROCKET(現在は南青山に移転予定のため休業中)以来、都内では実に5年ぶりとなるソロエキシビションである。
国内外で展示を行い、ブランドや企業へアートワークを提供するなど、グローバルな人気と評価を獲得してきたwatabokuが、原宿に凱旋するとともに新たな表現を試みている注目の展示だ。4日間のみの貴重な機会を逃す手はない。会期初日のレセプションを訪れた。
会期初日はオープニングレセプションが行われた。外の空気は冷たいが、中に入ると暖房と集まった人たちの熱気によって暖かい。同時に、たくさんの視線を感じた。その正体はwatabokuの作品に描かれた「SAI」の視線である。
SAIはwatabokuが一貫して描き続けているキャラクター。展示されているものは全てSAIである。本人曰く「モチーフはない」そうだ。頭の中から生まれたどこの誰でもない、ピュアな存在なのだ。
作品は各1点ずつ、全て抽選での販売。Tシャツなどのグッズも会場限定で販売している。
watabokuは当初よりPCやタブレットを使い作画するデジタル•アーティストとして活動してきたが、本展示ではキャリアにおいて初めて、全てアナログで制作した作品を発表した。
なぜ今あえてアナログで描いたのかを会場にいるwataboku本人に尋ねてみた。
「わざわざアナログで描く動機がなかったけど、デジタルで描く人も増えて、NFTアートが盛り上がっている今が描くべき時だと思った」
とwatabokuは言う。デジタル・アーティストwatabokuとしての矜持を感じた瞬間だった。
上の3作品が完全なアナログ作品。他の作品はデジタル作画でプリントしたものに手を加える、デジタルとアナログのハイブリッドな手法を用いている。作品ごとに変幻自在の表情を見せながら、SAIはそこに確かに存在しているような、不思議な存在感を携える。
SAIの存在するパラレルワールドにおいて共通しているのはwatabokuによる繊細で緻密な描写と、力強い視線だ。
学校から塾へ行く途中に、急いで駆けつけたという高校生から、交流のあるギャラリスト、スケートをプッシュしてやってきたタコス店の経営者、ブランドディレクター。毛並みの違う者たちが集まり、同じ空間で作品を見つめ、語り合う。
年齢も経歴も関係なく、その場に居合わせた人と作品を通じて打ち解けられることは個人的に居心地が良かった。作品と空間がぴったりとハマり、心地のいい時間を生むのかもしれない。
会場を選んだ理由を米さんに聞いてみると、作品や作家との相性に加えて、通りに面して大きく開かれている特徴的な入り口も、街との接続が感じられて今回の展示にはいいと思ったそうだ。
空間の中においても、積極的にその場にいる鑑賞者とアーティスト、さらにその周辺の人々とを繋いでいく米さん。強固な人間力の成せる技だ。+DA.YO.NE.キュレーションの醍醐味と言える。
米さんと親交の深いJOINT Galleryの中村さん。
「表参道ROCKETの個展に来てくれた人たちが、同じ原宿の街で、年を重ねてまた会いに来てくれたら嬉しい」とwatabokuは当時を振り返りながら話してくれた。
5年前の展示を訪れた人も、初めてwatabokuの作品を観る人も、もれなくその視線に釘付けにされる作品をぜひその目で確かめてほしい。
■概要
「wataboku Solo Exhibition "WHO"」
会期:2021年12月2日(木)〜5日(日)
会場:SORTone
住所:東京都渋谷区神宮前2-14-17
開廊時間:13:00〜19:00