悪い夢のようで、とてもロマンチック
「梅津庸一展 ポリネーター」が、ワタリウム美術館にて開催。2021年9月16日(木) 〜2022年1月16(日)まで。
梅津庸一は、山形県生まれの美術家。近年の現代アーティストの中で、梅津庸一ほどその活動全域を把握しづらい作家はいない。細密画のようなドローイングや点描画のような絵画作品、自身を素材としたパフォーマンスを記録した映像作品、陶芸作品から、キュレーション、非営利ギャラリー運営など、その領域は多岐にわたっている。
本展は2004年から2021年までの作品を梅津自身がキュレーションしているが、回顧展ではない。タイトルにある「ポリネーター」は植物の花粉を運んで受粉させる媒介者という意味をもち、梅津自身の立ち位置をたとえて選んだ言葉だ。“繊細でフラジャイルなもの”という点では、アートと花粉は似ているかもしれない。それを世界中に広げていく。実際この2年、私たちの世界は微細なウィルスによって麻痺状態に追い込まれ、新たな扉を開かざるを得ない状況に来ていることを考えれば、花粉のようなアートが世界を席巻しても決しておかしくはないのだ。
梅津は語る、「美術とはなにか。そして芸術の有用性や公共性とはなにか。それはわかりやすい希望やとっつきやすいビジョンの提示にあるのではなく、一見すると有用性や公共性など感じられないほど入り組んだ悪い夢のような世界にこそ存在する」と。悪い夢のようでいて、とてもロマンチックなポエムのような空間が広がる梅津の作品を通して、アートという花粉の「ポリネーター」になるのも悪くないだろう。
<画像クレジット>
1. メインビジュアル
2. 戯れ 2005 紙にインク
3. Spring leg 2005-2007 板、綿布、油彩 高橋龍太郎コレクション所蔵
4. フロレアル -汚い光に混じった大きな花粉- 2012-2014 パネルに油彩、ミクストメディア 愛知県美術館所蔵 Photo by Ichiro Mishima
5. 不詳 2017 板に墨、水彩、アクリル、インク、油彩
6. 信楽での作陶の様子 2021
7. 内なるスタジオ 2021 陶板 撮影:今村裕司
8. ボトルメールシップ 2021 陶 撮影:今村裕司
■概要
梅津庸一展 ポリネーター
・開催期間:2021年9月16日(木) 〜2022年1月16(日)
・営業時間:11:00-19:00
・入場料:大人 1,200円 / 学生(25歳以下)1,000円
・休館日:月曜日(9/20、1/10は開館)、12/31〜1/3
・場所:ワタリウム美術館
・Eメール:official@watarium.co.jp
・公式サイト:http://www.watarium.co.jp
・協力: 浦野むつみ、艸居、田中優次(株式会社 釉陶)、大塚オーミ陶業株式会社
>>EDITOR’S VOICE
ワタリウム美術館の、道路を挟んでほぼ正面にあるEUKARYOTEでは、2021年9月17日(金)〜10月10日(日)まで「Moving Images」を開催中。磯村暖、岸裕真、THE COPY TRAVELERSという今注目のアーティスト3者が「映像作品」を通して伝えるメッセージとは?
※敬称略
Text:miwo tsuji
INFORMATION
アートという名の花粉を媒介する「梅津庸一展 ポリネーター」がワタリウム美術館で開催
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前3-7-6
- 電話
- 03-3402-3001
- 営業時間
- 11:00-19:00
- 定休日
- 月曜日(9/20、1/10は開館)、12/31〜1/3
- 開催期間
- 2021年9月16日(木) 〜2022年1月16(日)