梱包材に覆われた作品の向かう先は?
カナダを拠点に活動するアーティスト、タミー・キャンベルのアジア初個展「Exactly Wrong」が、MAKI Galleryにて開催。2021年9月1日(水)〜9月29日(水)まで。
本展は表参道と天王洲Ⅰの2会場にて同時開催。フランク・ステラやエド・ルシェ、ヨゼフ・アルバース、そして今回で初登場となるアンディ・ウォーホルの代表作を再現した作品を含む30点近い新作を披露し、キャンベルのこれまでを振り返る大規模な展示となっている。
本展のタイトルは、アンディ・ウォーホルの言葉 “When you do something exactly wrong, you always turn up something.(何かを的確に間違えると、いつも何かしら発見がある)”に由来するもの。キャンベルにとってこの言葉は、作品が完成した時=ʻ的確に間違っているʼ瞬間を意味しているのだという。
例えば気泡緩衝材が分厚く、それらしい空気感を全く感じられなかったり、段ボールが妙に薄かったり、OPPテープの横を通り過ぎても揺らがないことに気付いた時、それら1つ1つの素材が見慣れているものから全く見知らぬものへと突如変化し、それまで“正しい”と思えていたものが、違和感を覚えた瞬間から“間違ったもの”として認識される。
キャンベルは本展をきっかけに初めてウォーホルを題材として迎え入れたが、これは彼女の芸術実践における美術史的な焦点がモダニズムからポップアートへと移った証拠である。同時に、キャンベルによる“再現の手段と意味”についてのより深い考察の反映でもあり、ウォーホルや他のアーティストたちがそのテーマに取り組んできた歴史に対して彼女がどう応えているかを提示している。
そのため、本展の展示作品は半数近くがウォーホル作品の再現。キャンベルがこれまで、フランク・ステラの「ブラック・ペインティング」シリーズや、本展でも展示されるヨゼフ・アルバースの「正方形へのオマージュ」シリーズなど、各アーティストを代表する重要な作品やシリーズを取り扱ってきたことと同様に、商業的および文化的な社会意識のもと、ウォーホルの最も有名な作品をあえて選び、再現しているのだ。
梱包材に覆われたキャンベルの作品たち。最終形態だけでは一見それほど強いメッセージ性を感じられず、表面上は見事に再現されたトロンプルイユ(だまし絵)の一例に過ぎない。しかし、作品をよりよく見るとその錯覚は解けるはず。まるで輸送中かのような「一時的な状態」に対して様々な疑問が浮かび上がる。いったい誰がこの作品を移送しており、これはどこへ向かっているのだろうか。そして、この作品が壁から外された時、どんな作品が代わりに展示されるのだろうか。さまざまな疑問が頭に浮かんでくる。
表参道の街の中から、作品たちの行く末に想像を巡らせて、展示を楽しんでみてはいかがだろうか?
■概要
タミー・キャンベル「Exactly Wrong」
開催期間:2021年9月1日(水)〜9月29日(水)
時間:11:30-19:00
定休日:日曜・月曜
入場料:無料
場所:MAKI Gallery
>>EDITOR’S VOICE
MAKI Galleryから歩いて約7分のところに、オープンしたばかりの「Section L Pop-up House」も要チェック。CBDブランド「ジラボンド(GIRA BOND.)」によるコーヒースタンドや、飲食業界で話題のフードクリエイターが出店する「令和食品館」や、デジタルデトックス・ラウンジ「HANARIDA」、「D2C Lab」など、入居ラインナップを見るだけで、個性豊かでワクワクするはず!
※敬称略
Text:miwo tsuji
INFORMATION
ウォーホル作品を題材に。梱包材に覆われたタミー・キャンベル「Exactly Wrong」
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前4-11-11
- 営業時間
- 11:30-19:00
- 定休日
- 日曜・月曜
- 開催期間
- 2021年9月1日(水)〜9月29日(水)