
「JIL SANDER+」と「BIRKENSTOCK」が生み出す街の木陰
表参道からキャットストリートに入ってすぐ、アートギャラリー「The Mass」隣のインスタレーションスペース「StandBy」は、AMKK、篠原恵美の作品展示などが行われてきた注目のアートスポットであり、街を訪れる人々が集う、キャットストリートの憩いの場でもある。
2021年8月4日(水)〜8月24日(火)までの約3週間の間、「JIL SANDER+」とドイツのサンダルメーカー「BIRKENSTOCK」によるビルボード(広告看板)インスタレーションが開催中だ。
「都会から抜けでた暮らし」をコンセプトに掲げる「JIL SANDER+」は「JILSANDER」のメインコレクションから派生し、リラックス感と機能性を兼ね備えたアイテムを打ち出している。
「JIL SANDER+」を手がける、ルーク・メイヤー&ルーシー・メイヤー夫妻は原宿の街の中に、自然の中で撮りおろされた写真を掲げた。リラックスしたムードがビルボードから漂い、コラボレーションの世界観を伝えている。夜間にはライトアップされ、照明が落ちた後も昼間とは違った趣の存在感を放っている。
「StandBy」ではコラボアイテムを見たり、買うことができない代わりに、オリジナルカップで提供されるコーヒーを販売している。ラテとブラックの二種類から選ぶことができ、ミルクはソイミルクもセレクト可能だ。カップには両ブランドのロゴがプリントされており、「ホット用ですけど、良かったらお土産にどうぞ」とスタッフが薦めてくれた袋砂糖にもブランドロゴが入っている。
「StandBy」の中は、いわばビルボードの内側だ。一般的に、ビルボードの内側に座って、コーヒーを飲むというのは新鮮な体験である。打ちっぱなしのコンクリートに切れ目を入れた、洗練された造形が特徴的な「StandBy」の天窓からは陽が射し、空間に柔らかく光が広がる。目の前の通りよりはいくぶん涼しく、建物の開口部からは心地いい風が吹く。
大量に積まれた、大判サイズのキャンペーンポスターは自由に持ち帰ることができる。プリントされたビジュアル写真の裏には、アメリカの詩人エミリ・ディキンソンの詩が載せられている。
大判サイズの端に、ささやかに書かれた一片の詩。その優しい言葉と、ゆったりとしたリズムはじんわりと心に染み入ってくるような温かさがある。この場所でコーヒーを飲みながら読むのにふさわしい詩と言える。ぜひ手にとって、椅子に腰掛けながら読んでみてほしい。
ビルボードインスタレーションから徒歩5分ほど。表参道のJIL SANDERに実際の商品を観に行った。「BIRKENSTOCK」の伝統と機能性を保ちつつ、「JIR SANDER」の持つ洗練されたハイファッションのエッセンスをブレンドしたプロダクトは、世界的なメゾンブランドとインディペンデントなストリートブランドが共存して混ざり合う表参道・原宿の街にも近しい気がした。
コラボ商品を購入すると、「StandBy」で使えるコーヒーチケットをプレゼントしてくれる。ポスターを手に持っていたら、JIL SANDERスタッフはすぐに「BIRKENSTOCK」とのコラボレーションアイテムを案内してくれたし、JIL SANDERのショッパーを持って「StandBy」を訪れる人がいるなど旗艦店とインスタレーションがひとつなぎになっているのを感じた。
「StandBy」から渋谷方面にキャットストリートを行けば途中に「BIRKENSTOCK」もある。ここにはインスタレーションのコラボアイテムの取り扱いはないが、表参道とキャットストリート、両ブランドを結ぶ中継地点として「StandBy」はこれ以上ないほど相応しい立地かもしれない。
賑やかに人が行き交う通りを横目にこの場所で腰を下ろすと、木陰でひとやすみしているかのような安らぎを感じる。コラボプロジェクトの看板を「StandBy」に掲げる理由に思いを馳せてみる。ゆっくりと安らかな時間が流れていく気がした。生活に寄り添ったアイテムを「JIL SANDER+」で表現するメイヤー夫妻も、きっとプロジェクトを通じて木陰のような“安心感”を伝えたかったのではないだろうか。
■概要
開催期間:2021年8月4日(水)〜24日(火)
営業時間:10:00~19:00
開催場所:StandBy
住所:東京都渋谷区神宮前 5-11-1
電話番号:03-6427-5834
JIL SANDER 表参道店
営業時間:11:00〜20:00
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-4 隠田今泉ビル1階
Text:Tomohisa Mochizuki