
“土”から始まるご近所付き合い
2020年8月1日(土)より、青山通り沿いのコミュニティスペース「COMMUNE」では、家庭で出た生ゴミの共同堆肥化プロジェクト「1.2 mile community compost - Omotesando -」が進行中。参加しているのは、拠点のCOMMUNEから半径2km(約1.2マイル)以内を生活圏とする人たち(*1)。ご近所付き合いが希薄になっている現代社会だが、この街では今、“土”をきっかけにどんなコミュニケーションが生まれているのだろうか。実態を探るべく、彼らの拠点を訪れてみた。
*1…住まいや職場が約1.2マイル以内にある人たち
表参道駅からすぐのところにあるCOMMUNE。プロジェクトの参加メンバーは、家庭の生ゴミを堆肥化できるコンポストキットを使って自宅で堆肥化させたコンポスト(*2)を、ここに持ち寄る。
*2…野菜くずなどの生ゴミを微生物の力で分解・発酵させた堆肥
メンバーに配布されたコンポストキット。左から時計回りに内袋、基材(土)、バッグ。生ゴミの臭いを抑える独自配合の基材やランチトートのような見た目のバッグなど、従来のコンポストのイメージを一新するような工夫が施されている
メンバーが持参したコンポスト。野菜や果物の皮や種、卵の殻などを基材に混ぜ、水を加えたり、スコップでかき混ぜて空気を入れたりして“育てる”のだそう
このプロジェクトが大切にしているのは、地域レベルのコミュニティ作り。コンポストはそれぞれのタイミングでCOMMUNEに持参するが、メンバー同士は普段からSlackやZoomなどを活用してコミュニケーションを取っているのだとか。
「この野菜くずも混ぜていいの?」
「水ってこのくらいの量でいいの?」
こんな些細なやりとりができるのは、コンポスト初心者にも心強いだろう。
COMMUNEへコンポストを持参したメンバー同士、土を囲んだ井戸端会議が始まる
「もともとズボラだったけれど、仲間がいるからこそ続けられている」
「臭いも気にならず、都会に暮らしながら身近で土に触れられるのが楽しい」
「“土”という共通点があるからこそ、これまで接点のなかったような人とも『こんにちは』と言える関係になれた」
「浅すぎず深すぎない“ご近所さん”的な距離感が心地いい」
取材時に集まっていたメンバーに話を聞くと、こんな感想が続々と出てきた。
家庭から持参した堆肥はCOMMUNE内に設置しているコミュニティコンポストへ。ここでさらに熟成を進め、資源として地域に還元する予定だ
コミュニティコンポストを見せてもらうと、トウモロコシの芯やアボカドの種が。この後さらに熟成させ分解を進める
この日聞いた話のなかには、こんな意見もあった。
「環境意識がものすごく高い人ばかりが参加していると思ったら、そうではない。いろいろな職業、ライフスタイルの人が集まっているからこそ、視点が偏らなくて面白い」
コンポストも人間関係も、無理のない範囲で続けられることが、このコミュニティの魅力なのではないかと感じた。
DIYが得意なメンバーが中心となり、コミュニティコンポストに立てかける看板を手作り
「1.2 mile community compost - Omotesando -」ではコンポストの共同管理だけでなく、ワークショップやディスカッション、朝ヨガなども実施していくという。参加メンバーだけでなく、一般の人が参加できるイベントも企画中とのことなので、乞うご期待。
取材に訪れた日は、コールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」のジュースを片手に地球温暖化を考えるディスカッションを朝8時から実施
■概要
1.2 mile community compost - Omotesando -
実施場所:COMMUNE
住所:東京都港区南青山3-13
企画・運営:株式会社4Nature
コンポストサポート:ローカルフードサイクリング株式会社
※今期の参加受付は終了しております。
Text:Natsuno Aizawa