古地図や浮世絵、古写真から歴史を紐解く
2020年10月10日(土)まで、表参道交差点に佇む「山陽堂書店」2Fのギャラリーでは、古地図や浮世絵、古写真とともに江戸~明治の青山の歴史を紹介している。展示を通して改めて街を見ると、現代のイメージとは違った青山の顔が見えてきた。
東京5大空襲の一つと言われる「山手空襲」(1945年5月25日)も経験した建物
山陽堂書店は明治24年創業。表参道交差点には昭和6年から立ち、現在の店舗は当時から受け継がれている建物だ。
2Fギャラリーでは、年間を通して個展やトークショー、朗読会など本にまつわる催しを実施。今回は、9月末に開催されたイベント「青山星灯篭甦生プログラムー青山 街、暮らし 江戸~明治ー」の一環として本展が開催された。
ギャラリーでまず目に飛び込むのは、幕末の江戸を描いた大きな地図。中央やや左上に見える、赤い線のようなものに近づいてみると…。
大山道は、江戸城の赤坂御門を起点に、山岳信仰の参詣地として人気だった大山阿夫利神社(神奈川県伊勢原市)まで続いていた。当時は自由な旅行が許されておらず、庶民は「参詣」を口実に遠出を楽しんだという
赤い線が指すのは「大山道」と呼ばれた道で、現在の青山通りと重なる。地図に添えられた資料によると、当時の道幅は四間(約7.3m)。普段私たちが見ている青山通りの約1/5という狭さである。
現在の山陽堂書店の位置にあたるのは、オレンジ色の丸いシールが貼られているところ。写真右下の江戸城周辺に建物が密集しているのに対して、シールのあたりは地図がスカスカなことにお気づきだろうか。
当時の江戸の中心は、お城の周辺や、日本橋をはじめとする東側のエリア。城の西側に位置する青山や渋谷、原宿は“街外れ”だった。「なるほど〜」と思いつつ、現代の街並みを知ってしまっているだけに、にわかには信じがたい…。
「青山星燈篭」に関連する浮世絵などが展示されているコーナー。まだ街灯もなかった頃、天高く掲げた燈篭が夜闇に光る星のように見えたことからその名がついたらしい
「青山百人町」と呼ばれたこの街で暮らしていたのは、幕府の鉄砲隊「百人組」の武士たち。ここでお盆の風物詩として親しまれていたのが「青山星燈篭」だ。竹竿の先にくくりつけた提灯を街中の家々が掲げ、その高さを競っていたのだという。
今年「ののあおやま」で開催された「青山星灯篭」
この年中行事は明治維新後に消えてしまったのだが、2018年、街の有志のはたらきかけで復活(有志の一人が、山陽堂書店を切り盛りする遠山秀子さん)。甦生後は山陽堂書店そばの善光寺門前に灯篭が掲げられている。(2020年は会場を「ののあおやま」に変更)
江戸時代には“街外れ”だった青山も、明治に入ると急速に発展していく。かつて広大な大名屋敷があった土地に軍の施設などが続々と作られ、インフラも整えられていったのだ。会場では江戸後期と明治40年頃の古地図が並べられているので、変貌ぶりを見比べてみてほしい。
地域にまつわる文献をもとにした丁寧な解説もみどころ
コンパクトなギャラリーながら、添えられた解説とともに展示を眺めているうちに、気づけば随分と長い時間滞在していていた。現代に生きる私たちが知る「青山」とは一味違った魅力に触れられる本展。この機会に、ぜひ訪れてみては。
窓際には、現在スパイラルがある場所で終焉を迎えた蘭学者・高野長英に関する展示も(Google MAPでスパイラルを検索した際、「高野長英隠れ家跡」という史跡を目にした覚えがある人も少なくないのでは?)
■概要
青山星灯篭甦生プログラムー青山 街、暮らし 江戸~明治ー
開催期間: 2020年9月17日(木)〜10月10日(土)
開催場所:山陽堂書店 2Fギャラリー
住所:東京都港区北青山3-5-22
電話番号:03-3401-1309
開催時間:11:00〜19:00(土曜〜17:00)※最終入場10分前
定休日:日曜、祝日
Text:Natsuno Aizawa