原宿の魅力は70年代だけにあらず!
70年代の原宿に強い思い入れを持つ中村さんだが、原宿の歴史を伝える活動を行う中で気付いた原宿の真の魅力について、こう話す。
「70年代は、時代の先端をいくクリエーターや、クリエーターを目指す学生たちが集まってきて、カルチャーを通して繋がってゆく街でした。そして、そこから色んなものが生まれた。80年代は、DCブランドを中心とした『ファッションの街』として一気に全国的な人気に。バブルがはじけた90年代は、まさにストリートカルチャーの時代。『原宿ポップ』とも言われている原宿ならではの派手なファッションや、『裏原カルチャー』が生まれた時代でもありました。街の雰囲気はどんどん変わっていきましたが、それぞれの時代ごとに、青春をこの街で過ごした人たちが、自分を育ててくれた空気感に深い愛着・誇りを持っていることをリアルに感じています。めまぐるしく変化しつつも、常に他の街と異なる個性を持ち、愛されながらその歴史を積み重ねてきた。とても尊いことだと感じています」
2017年7〜8月には『OMOHARA写真展 vol.2 80’s』も開催された
自分自身が70年代の原宿を愛するように、他の時代の原宿を愛する人もいる。その事実こそがこの街の持つ財産なのだという。
「写真展に来る若い世代の人たちや外国の人たちと話しても感じますが、各時代の若いジェネレーションのエネルギーによって徐々に作られてきた街という点が、世界にも類を見ない原宿の唯一無二の価値や面白さとして人々を魅了しています。一方で、建物の老朽化、街に訪れる人数の増加などもあり、古いものを建て直さなければならないという時期に来てもいる。2020年にはオリンピックも開催されますしね。大事なのは、ここで、文化や歴史、人々の想いをどれだけ尊重した形で街を次のステージに持っていけるか。原宿が守り続けてきた”個性”をどれだけ残せるか。原宿を愛する人たちは次の時代を見据え、行政や大企業がやることをしっかりと見張らなければならないと思います」
取材は中村さんの希望により、70年代の思い出のカフェ『コロンバン』で行われた
自身も写真展を開催するうえで、原宿への強い想いを持つ様々な層の存在を意識し、緊張感を持って取り組んでいると語った中村さん。彼女が現在に甦らせてくれている輝かしい街の歴史を見に行けば、過去の原宿を知らなかった人も、きっとその価値を感じられるはず。できれば、そこで「昔は良かったんだ」と終わらせることなく、これからの時代の原宿はどんな個性を持つべきだろう…と一緒に考えてみてほしい。
Text:Takeshi Koh
Photo:Takako Iimoto