DCブランドブームを支えた大物デザイナーたちの意外な関係性
「BIGI」メンズラインの成功を受け、1975年、菊池氏は株式会社MEN’S BIGIを設立。1978年にはメンズブランドとして日本人初となるパリ進出を果たす。そしていよいよ、日本は原宿を中心とするDCブランドブームに突入する。そのDCブランドの代表格として「MEN’S BIGI」、また「コム・デ・ギャルソン」や「ヨウジヤマモト」が挙げられる。
80年代の原宿の人々のファッション。DCブランドブームにより、みなが個性を重視しはじめた
出典:Office J1.com
「『洋服』という画一化された概念を壊す若手デザイナーたちによるブランドが、個性を求め始めた消費者の心に刺さっていました。『DCブランド』とくくられても、実際は服へのアプローチもテイストも全く違うから、それぞれ別々のものという印象でしたけど。ただ、そうテレビや雑誌がひとまとめにして表現してくれたおかげで産業全体が勢いがついたことは確かでしたし、当時もネガティブに捉えてはいませんでしたよ」
ちなみに、ブームを支えた「コム・デ・ギャルソン」の川久保玲氏、「ヨウジヤマモト」の山本耀司氏との交流はあったのだろうか。
「日本に戻ってすぐの頃、モリハナエビルでショーをやったときは、まだ有名になる前の川久保玲さんや山本耀司くんが観に来てくれたことは憶えています。でも、面識こそあれど、ちゃんと話したことは当時から今まで1度もないですね。デザイナー同士って交流しないんですよ。みんな自分がやりたいことをやっているだけだから」
「MEN'S BIGI」1981年のコレクションを着用したカット。撮影:操上和美
意外なことに、同じ時代に原宿でDCブランドブームを支えていた大物デザイナーたちは、近くにいながら交わることなく活動し、今に至っているという。一方で菊池氏は、海外のあのデザイナーへの影響を確信していた。
「僕は70年代から素人をモデルにしてショーを行っていました。これは世界で誰もやっていないことだったのですが、DCブームの頃にゴルチェが僕のショーを観に来て、その後彼も素人をモデルにしてショーを行いました。本人は口が裂けても言わないでしょうけど、多分影響を与えたんじゃないかなと思っています」
時は80年代。いつの間にか原宿は、日本の中心となるファッションデザイナーがうごめき、世界のファッションシーンにまで影響を与える街になっていた。