鍵はカルチャー変革。ハラカドはクリエイターと来場者による創造施設
「カルチャーこそが人を惹きつけると、僕は信じています。そして街の中、路上で人同士が顔を合わせることで醸成されていく」
原宿・神宮前エリアの新しいランドマークとして2024年春に開業した「ハラカド」は、時代ごとに多様なカルチャーを生み出し続ける原宿の新たなクリエイティブ拠点として、内外から期待を集める新商業施設。千原氏は、同施設の3階にある「クリエイターズマーケットフロア」にオフィスを構え、本プロジェクトの初期の段階から施設のコンセプトや運営方針に関わってきたキーマンのひとりでもある。
「ハラカドはクリエイターと来場者による創造施設です。遠く振り返ってみると1960年代、原宿・神宮前交差点にあった『原宿セントラルアパート』は当時を代表するトップクリエイターが集う文化創造の拠点でした。ハラカドはかつての『原宿セントラルアパート』の文化を継承しながらも、さらに発展させていく商業施設として開業しました。僕られもんらいふは、クリエイターを目指す人たちやクリエイティブな考えに触れたいビジネスパーソンたちのクリエイティブ活動のサポートに尽力すべく、同施設の3階にオフィスを構えました。クライアント、お客様、クリエイター、これらすべての枠を外し、新しい何かを生みだすラボとして、れもんらいふは存在したいと思っています」
「カルチャー」という言葉が企業変革や組織開発の文脈で語られることが増えてきた令和の時代にあって、デジタルによるAIやアルゴリズムだけでは解決できない「時代の空気をキャッチする力」や「文化的な背景を前提とした創造力」を活かしたプロジェクトを興すには、中長期的な視点で考え抜かれた人と人の対話によるカルチャーストーリーのあるビジネスアイデアの創出が大切。数値化できないカルチャー変革こそ、次代の鍵になるという見立てだ。
舞台は、東京カルチャーの震源地ともいえるオモハラエリア。「ハラカドでは、施設に集まるクリエイターや入居テナントによるクリエイティブコミュニティ『ハラカド町内会』を設立し、新しい文化を創造・発信していきます」と千原氏。その語気は強く、どこまでもまっすぐだ。
「れもんらいふは、日本で初めて、誰でも入れる商業施設の中に入ったデザイン会社です。“オープンな場”という強みを活かし、デザインの依頼だけでなく、コミュニティ創出やクリエイティブ塾の創設などにも尽力していきます。いつの時代にあっても原宿エリアは、新陳代謝を繰り返しながら新しい文化を生み出しつづけてきたまちです。かつての『原宿セントラルアパート』がそうであったように、ハラカドという場を介し、若いクリエイターが集まり、新しいカルチャーを創造する場所になってほしい。僕らは本気です」
創業の地へと導かれるようにして、自らの意思で舞い戻った千原徹也氏とれもんらいふ。かつて夢を追い続け、叶えてきた場所でもある約束の地で、千原氏は新たな野望とともに、虎視眈々と街の行く末を見据えていた。今度は誰かの夢を育て、その輪を広げていくために。街づくりの本質を見極めながら、誰もが夢を見られる場所を目指していく。
Photo:Takashi Minekura
Text:Hiroyuki Konya(discot)
Edit:Tomohisa Mochizuki(OMOHARAREAL)