"ミッドセンチュリーモダニズム"に囲まれた幼少期
「70年代の青山通りでは、高級スポーツカー2台が横に並び、信号機から信号機までの直線約400mをどちらが速く走れるかを競う"青山ゼロヨン"が流行っていました。現在の『ブルックスブラザーズ青山店』前にある歩道橋から見物する人も沢山いましたね。一方、その歩道橋を使わずに道を横断してしまう人もいて、とても危険だった。だから、歩道橋があるにも関わらず、その下に横断歩道まで作られたんですよ」
そんなマニアックな青山情報を語る遠山氏が生まれ育ったマンションは、青山通り沿いにあった。現在は『ブルックスブラザーズ青山本店』となっている『VAN99ホール』(1960年代に一世を風靡したアイビーファッションブランド『VAN JECKET』が運営していた99円で入れる劇場)の向かいに存在した『青山マンション』。当時、このエリアにマンションは少なく、周囲には『表参道第一マンション』『コープオリンピア』『原宿アパートメント』など数える程度だったという。
現『ブルックスブラザーズ青山本店』となっている土地に建っていた『VAN99ホール』
出典:VAV SITE
「自分の家を褒めるのもおかしいかもしれませんが、モダンで素敵なマンションでした」
嬉しそうに思い出す遠山氏が見せてくれたのは、インテリア専門誌『ジャパン インテリア』(1964年8月号)。特集ページでは遠山家が暮らしていた部屋が数ページにわたり紹介されており、中には幼き頃の遠山氏の写真も。
遠山氏が生まれてから23歳になるまで育ったマンションのリビング
子供部屋には幼き頃の遠山氏も写り込んでいる
「NY勤務を終えて帰国した父が、50年代・60年代にアメリカで流行していた、今風に言うと"ミッドセンチュリーモダニズム”を取り入れて作った部屋でした。革張りのセブンチェア、白いグランドピアノ、巨大なビデオデッキ。扉ひとつにしても、父が建築家と相談しながら、こだわり抜いて選んだものが採用されていました。60年代という、この100年で世界が最も輝いていた時代の魅力をリアルタイムで取り入れた環境でした」