「ホテルをつくるなら絶対にキャットストリート」
10年以上前から、ウェディング会場を含めたホテルを作ると宣言していた野尻氏。今春、満を持して、キャットストリートに大型ホテル「TRUNK(HOTEL)」をOPENする。その想いは?
「世界を回っていると、豊かな街には必ず地元に根付いたホテルが存在するんですよ。最近有名なのはエースホテル。僕がLAのダウンタウンに住んでいた頃は、夜なんか怖くて歩けない街だったんだけど、エースホテルが出店したらどんどんクリエーターが集まってきて、いつの間にか街が明るくなりました。他にもホテルがライフスタイルの発信地になって街に良い変化を生んでいくということが世界中で起きていて、僕はそれを東京でやりたいと思ったんです」
LAのダウンタウンにあるACE HOTEL。2014年に開業し、街を一変させた
出典:SKYマガジン
そんな野尻氏がホテルのコンセプトとして掲げたのは、"等身大の社会貢献の日常化"を意味する「ソーシャライジング」。そして、この構想を成功させるに当たり、「絶対キャットストリート近辺に」とこだわっていたと話す。
「今って、ゴージャスな物を身につけて高級車に乗れば満たされるような人は減って、誰かと繋がりを持ったり、社会のために何かができたときに満たされるという人が増えてるでしょ? でも、そういう新しい感覚にマッチした衣食住が表現されている街ってまだ日本にはないですよね。僕は、キャットストリートにそういうったコンセプトのホテルを作れば、そういう街を作れると思ったんです。キャットストリートって昔からずっと、ヤングジェネレーションの感覚・エネルギーを取り入れながら、ニューカルチャーを発信している場所だから」
「TRUNK 開業準備室」に展示されているTRUNK(HOTEL)の模型。"地層"を連想させる横のラインが重なるデザインには、「街と共に年を重ねていきたい」という想いが込められている
「TRUNK(HOTEL)」は、全てが社会貢献に繋がる時代の最先端のホテルとして、間もなく開業する。具体的にはどのような「ソーシャライジング」のアイディアが詰め込まれているのだろうか?
「基本的に、このホテルにある物はほとんどがアップサイクル(廃棄物を元よりも良い状態にして再利用すること)によって生まれています。捨てられたスケボーから作ったハンガー、デニムの丈を調整する際に切り捨てられた裾で作ったエプロン。これは伊勢谷友介さんのリバース・プロジェクトに協力してもらってるんですけどね。提供するフードやドリンクも、すべて地域と関係する生産者の中から厳選して仕入れて『自給自足』を実現させている。それからLGBT、シルバー人材、障害を持つ方、外国人などの積極的雇用もしてるから、お客様は意識せず利用するだけで、地域や社会に貢献できる仕組みになっています。NYにも似たコンセプトのホテルがあるけど、地域との密着度、提供する物のクオリティに対しては、僕らの方がずっとストイックな自信がありますよ」
ホテルで貸し出される自転車も、廃棄自転車(渋谷区の廃棄自転車数は日本一)を地域のクリエイターがリメイクしたもの。某アートフェスに出展して以来、1台十数万円で次々と売れているという!