新しい種を蒔きたい。BEAMS社長が見据える「原宿の未来予想図」
「原宿に第1号店を構えてから46年、私たちBEAMSは、原宿というストリートを歩く人たちとともに歩んできました。上から『ついて来いよ』ではなく、街=ストリートとともに方向を見定め、服だけではないライフスタイルをさまざまな形で提供してきました。大切にしているのは、100人いたら100通りある価値観を暮らしの視点で深く想像すること。いま何が新鮮か、何が快適か、何に感動するのか、何が自分らしいのか……生活者一人ひとりに寄り添い、提案したいと思っています」
Happy Life Solution Company。こんなスローガンを掲げ、いまBEAMSは良質な日常生活を謳歌したいと思っている人たちに向け、新しい時代のルール(生き方)をつくる最中にある。
某有名お菓子シール風にアレンジされた「ゼウスたらちゃん」。PRチームそれぞれに製作されたものを見て「僕も欲しい!」と作ってもらったもの。会う機会があればシールをもらえるかも!?
サステナブルファッションを訴求する「つづく服。」プロジェクト、問い合わせが年間500に及び「GAFAから世界遺産まで」を掲げる異業種の企業や自治体などとの協業案件、メタバース空間にあるバーチャルマーケットへの積極出店、35年親しまれたオレンジのプラ製ショッパーの廃止とコットン製のショッピングバッグの販売、洋服の修理だけでなくリメイクやカスタムにも対応する「ビームス工房」の立ち上げなど、次代に向けた取り組みは枚挙にいとまがない。
2009年、TOWER RECORDSの30周年を記念して「BEAMS T」とコラボエキシビションを開催した際に制作されたポスター。異業種とのコラボレーションを積極的に行ってきたBEAMSを象徴するポスターだ。
新しい未来を見つけるためには、過去を振り返ることも大切。「ローラー族でも竹の子族でもゴスロリでも、D/Cブームでも渋カジでも裏原ブームでも、時代を象徴する”新しい文化”には、必ずそのエッセンスが街の中にも個人の中にも残ります」と設楽氏。そんな氏が見据える原宿の未来とは?
「まだ大きな声では言うことはできませんが、歩行者天国の復活に向け、渋谷区や警察署、各商店街関係者にロビー活動をしている最中にあります。表参道と原宿に”ホコ天”があったのは1977年から1998年までの約20年間でした。原宿駅前から青山通りは休日になると車が入ってこれず、自由なムードに溢れていて、ローラー族やタケノコ族、ホコ天バンドブームの頃には人気バンドが路上から誕生しました。騒音、ゴミ問題、防犯上の問題など、クリアすべきことは多くありますが、ひとつの時代を支えたシンボルの記憶を再び令和に……と、思っています」
46年間にわたり、”原宿のいま”を見続けてきた設楽氏の言葉に嘘はない。ホコ天復活の構想の話を聞くにつけ、本気のほどが窺えるのだった。
BEAMSの社長として、原宿を愛する一個人として、現在もエネルギッシュに活動し続ける設楽氏。最後に、これからの街が進むべき方向について尋ねた。
「もっともっと若い人たちが集まり、ファッションにしてもカルチャーにしても、常識ではない”見たことのないもの”を見てみたい。原宿のこれまでの歴史が物語るように、これからも必ず、新しい文化が生まれてくると思っています。僕自身ができることは微弱だけれど、原宿がもつポテンシャルは唯一無二です。原宿で花開いたカルチャーは、次の時代につながっていきます」
時代を敏感かつ冷静に見つめながら、新しいライフスタイル、生活文化が生まれる原動力になりたい。こんな想いを胸に、”みんなのボス”は原宿から生まれる”次のはじまり”にワクワクしている。
Text:Hiroyuki Konya(discot)
Photo:Yuji Imai