羽ばたいていくスナップの常連たち
とはいえ、ストリートスナップを始めた頃のシトウさんは、アルバイト感覚で撮影をこなしていたと語る。
「やれって言われたからやらなきゃと、宿題のように感じで…1000人くらい撮るまでそんなスタンスでしたね(笑)。でも、撮影を通して原宿の人々と関わっていたら、いろんな人たちの人生に触れながら世界を広げられるフォトグラファーの仕事って面白いなと思えてきたんです。特に、原宿で目立つような個性的なファッションに身を包んでいる人たちって、強い意志を持っているから魅力的なんですよね。ロックな格好をしているのにすごい親思いだったり、チャラチャラ遊んでそうなのに真剣に将来を考えていたり(笑)。この人たちが持つ物語を、写真と文字を通してもっと伝えたいと思うようになりました」
シトウさんのブログ「STYLE from TOKYO」では、日々世界中のストリートスナップが、彼女のコラムと共にアップされている
出典:STYLE from TOKYO
こうして、この街の人々の魅力によりフォトグラファーの道を進むことに。スナップ写真に人物を紹介するコラムを添える作風も、こんな想いから生まれたとのこと。そして、プロとなってから今日までも、この街の人々から影響を受ける機会は少なくないという。
「この街で撮影をしていると年に何度か撮らせてもらうような、定期的に会う関係になるような人がいて、彼らの成長を垣間見ることができるんです。たとえばシンガーのマドモアゼル・ユリアちゃんやCHRISTIAN DADAのデザイナーのずーくん(森川マサノリ)もそうで、初めてスナップを撮らせてもらった頃はまだオシャレな原宿キッズのひとりでしかなかった。ただ、撮影時に書いてもらうアンケートには必ず『将来の夢は?』っていう項目があったから、私も何となく彼らが何を目指しているのかは知っていて。撮っている人たちがステップアップしながら夢を叶えていく姿を見るのは感慨深いですし、自分も頑張ろうと刺激をもらえますね」
今では世界中を飛び回るファッションセレブであるマドモアゼル・ユリアさんも、シトウさんのストリートスナップの常連だった
出典:MADOMOISELLE YURIA
約20年間オモハラのストリートファッションを撮り続けているフォトグラファーは、この街が夢を叶える若者で溢れていることを知っていた。