知らない人が急に声を掛けてくる街
高校を卒業して上京し、初めてのオモハラ。大学の入学式に着る服を買いにラフォーレ原宿を訪れたシトウさんは、モデルハント中の美容師、ファッション誌のスナップ隊と、次々と声を掛けられる。
「何が何だか分からず『原宿は知らない人が急に声を掛けてくる街なんだ…』というのが最初の印象でした(笑)。でもすぐに好きになって、授業が終わると早稲田から渋谷行きのバスに乗って、原宿で降りるという生活がスタート。授業と授業の合間に撮影へ行ったら髪を大仏のようにクルクルにされ、クラスメイトに驚かれた思い出も(笑)。原宿では『そういうもんだよね』って見られる服装や髪型が、他の場所では注目されてしまうので、やっぱり特別な街なんだとは感じていました」
10年間、髪はSHIMA原宿・奈良裕也氏にカットしてもらっていると話すシトウさん
その後しばらくモデル活動を続けていると、”撮る側”への扉は突然開かれる。シトウさんがフォトグラファーになるきっかけを作った人物は、ストリートスナップ誌の先駆的存在『STREET』の編集長・青木正一氏であった。
『STREET』2017年1月号。1985年に創刊され、編集長・青木氏にスナップされることは当時の原宿で最高のステータスであった
「青木さんにはスナップを撮って頂いたことがあったので、原宿で会えば挨拶するくらいの関係ではありました。でも、いきなり事務所に呼び出されたので何かと思ったらカメラを渡されて。『レイちゃんに撮ってほしい。これが電源で、フィルムは巻いたら最後ペロっと舐める。はい、行ってらっしゃい!』みたいな感じで原宿に送り出されて。なんで任せてくれたのかは今でも不思議です…。ただ、ひとつ言えるのは、ストリートスナップというカルチャーがこの街にあったからこそ、すべての出会いがあり、今の私があるということですね」
この街は彼女に幾度も「何が何だか分からない」という想いを抱かせながら、1人の女子大生をモデルへ、そしてフォトグラファーへと進化させていった。