みんなの兄貴、コロナ禍に動いた!「だからずっと面白い」こう想う理由
座右の銘を尋ねるとこんな風に答えてくれた。「明日でいいや」
「今日、全力で頑張ったうえで『明日でいいや』。明日死ぬかもしれないから今日全力でやろうっていう人がいるけれど、僕はこの言葉が苦手です。だって、明日死にたくないし、明日も生きていたいと思うから。今日終わりではなく、明日も明後日も続いていくよっていう意味を込めて『明日でいいや』っていう言葉が好きなんです」
「動物が好きなんです」と車田氏。2代目の看板犬とは毎夜、散歩するのが日課だ。
現在、飲食プロデューサーとして多くの店を切り盛りする車田氏は、いつどんな状況にあっても前向きだ。飲食店が大きなダメージを受けたコロナ禍にあっても、クラウドファンディング・CAMPFIREで「WE NEED YOUR HELP」と題した支援を呼びかけ、865人の「THE GREAT BURGER」ファン(支援者)の支持を集めた。「食の幸せを繋ぎたい」「非日常体験の幸せを届けたい」「共感で繋がる幸せを守りたい」ーー車田氏自らの思いを綴った文章はどれも前向きで、オーナーシェフとしての20年間の厚みと重み、原宿村の住人として「街と共に楽しみ続ける」覚悟のほどが窺えるのだった。
「この街が好きなんです。なかなか客観的にみるのはムズかしいけれど、僕がこの街にやってきた頃と変わらず、表参道・原宿はいまも、ファッションとカルチャーの日本の中心地ですよね。90年代後半からゼロ年代の前半頃まで”裏原宿”カルチャーが花盛りで、その後、六本木ヒルズができたり、中目黒が盛り上がったり、ファッションに関わるエリアや人が遊びに行くエリアがちょっとずつ増えて、『少し、元気がなくなってきたなぁ』と感じる時期もあったけれど、原宿KAWAIIカルチャーが生まれて再び盛り上がり始めたり、2010年代になると訪日外国人によってインバウンド需要が増えたり……このエリアって常に、新しいことが生まれ続ける街なんだと思います。この街に住む住人(※2020年末に住居を原宿から世田谷区に引っ越し)として、商いをする飲食店の店主として、ずっと面白いんです」
広く門戸を開き、挑戦する人を等しく受け入れる街。車田氏の話を聞くにつけ、表参道・原宿の魅力をこんな風に表現できるのは確かだろう。こんな話も続く。
忙しい合間を縫って、愛犬とオモハラエリアを散歩するのが車田氏の日課。街や季節の移り変わりを肌で感じる毎日。写真は散歩中に撮ったもの
「表参道ってどのエリアを指すの?原宿ってどこを指すの?渋谷ってどの地域のこと? この線引きが20年でかなり曖昧になってきたように思います。いまお店を構えるエリア(神宮前6丁目)を表参道という人もいれば、原宿っていう人もいて、渋谷っていう人もいる。それぐらい、3つのビッグシティが融合し、さらにパワーが増している実感があります。他方、街それぞれに顔つきがある。それらが混ざり合って、面白い若い子達がどんどん出てくる。そういう意味でも、すごい街だなって思います。『THE GREAT BURGER』を始めた2007年頃と比べるとなおさら、表参道と原宿の境目がなくなり、近年でいうと渋谷も混ざってきたな、と。最近でいうと『MIYASHITA PARK』のハイブランドとストリートのミックス感も面白いですよね。感覚的な話だけれど、こういう街そのものの変化を感じながら、人とのつながりを中心に据え、商いができること、次の仕掛けを考えられるところが楽しいです。これからもずっと繋がっていたい」
車田氏の頭の中にあるアイデアや感覚を共有し、お店を盛り上げるスタッフたちとの忘年会のひとコマ。
「自分が本気で情熱を注げる事があって、それが仕事になり、それによって誰かに笑顔になってもらえたり、誰かの活力になれる可能性があるって事はとても幸せだなぁとつくづく思います」
”他にはない街”を舞台に人と繋がり、食をとおして「幸せ」を提供する。スウェットにジーンズ。キャップをかぶり、足もとはコンバース。ラフな出で立ちで今日も車田氏は、かつて憧れた裏原宿のトレンドセッターたちがそうで合ったように、型にはまらず、軽やかにオモハラを遊ぶ。
Text:Hiroyuki Konya(discot)
Photo:Yoshihito Murai