食べログ3.6!数字にこだわらない「THE GREAT BURGER」大行列のヒミツとは
「いつ来ても新しい発見のある店を作りたかった。『THE GREAT BURGER』は進化し続けるハンバーガー店なんです」
車田氏の言葉どおり、店に入ると、壁面に並べられたレターオブジェ、ダイナミックに掲げられた星条旗、ミッドセンチュリーテイストのペンダントライト……アメリカ西海岸の空気感を体現する店内の装飾の数々が、まず楽しい。そして何よりも、来店する人を選ばず、全て受け入れてくれるかのようなピースフルな雰囲気が、なんとも心地いい。聞けば、店内の装飾は全てオーナーの車田氏自らが手がけ、日々進化させているそう。『THE GREAT BURGER』は、東京に居ながらにして本場の雰囲気を楽しめる、とても良質なアメリカンダイナーなのである。
行列のできるハンバーガー店の先駆け、『THE GREAT BURGER』の店舗前の様子。「リアルなアメリカを体感してほしい」という車田氏の言葉どおり、原宿に居ながらにして本場のアメリカンダイナーの雰囲気を味わえる。
2007年のオープン以来、「THE GREAT BURGERは日々進化しています」と車田氏。南カルフォニアからアリゾナの雰囲気をインスピレーションの源とし、店舗内の飾り付けは日々少しずつ変化していく。「コロナ禍になる前は年に6回ぐらい、アメリカに行き、本場の空気感を味わい、そこで得た様々なインスピレーションを店舗に反映させていましたね」
同店のオープンは2007年。『ease by LIFE』の次の挑戦として、車田氏が29歳の時に手がけた『THE GREAT BURGER』は、たゆまぬ研鑽の末、”行列のできる”ダイナーに成長。トレンドの発信地として、これまでさまざまな文化を生みだしてきた表参道・原宿エリアの飲食の代表格として、名実ともに人気店となり、現在に至る。
「ここに来たら元気になれる。お店に来た人たちには、こんな風に感じて欲しい。そもそもこのエリアで働いたり、遊びに来る人たちは、街そのものが持つパワーを面白がりたい人たちだと思うんです。そういう意味で僕自身、原宿が有している歴史や記号性に助けられていると思います。僕ひとりで頑張っても発信力はないけれど、この街で商売を営んでいるという事実は、事業の後ろ盾になっているのは確かだと思います。ハンバーガー歴数年なのに地方の同業の老舗シェフから『勉強させてください』と、店に来ていただいたことも一度や二度にあらず。頭が下がります。人気がでなければ、次のステージは用意されない。入れ替わりの激しいシビアな街なので、だからこそ、ハンバーガーを食べてもらうだけでなく、非日常の体験ができる空間を、手間と時間をかけて創り上げてきました」
新しい何かが生まれると、SNSやメディアの力が追い風となり、バズワードとなり、それが全国に波及していく街。都市や街にはそれぞれ違った魅力があるものだが、歴史に裏打ちされた表参道・原宿がもつ潜在的な影響力は今もって大きい。それゆえ、いつの時代であっても表参道・原宿で商売を営むには時代の風を読む力も問われる。本人は謙遜することしきりだが、車田氏にはそのセンスがあるようだ。
「神宮前の雑踏から少しだけ道を奥に入り、『こんなところにお店があるの?』っていう旅先のレストランに向かっているような感覚でお店に来てもらえたら、嬉しいです。わざわざ来ていただいたからには、いつ来ても新しい発見のある店でありたい。スタッフの努力には毎日感謝しています。口コミやSNSで店を友達に教えてくれる人、何度も通ってくれる人、初対面や異業種ながらこの場で意気投合しちゃう人……『THE GREAT BURGER』は”誰かのためにあるお店”なんです。場をとおし、温もりのある人の輪を作れたなら、それこそが僕たちの財産です」
どんなに忙しくても1日1回は運営している店舗に訪れ、「スタッフたちと話をするようにしています」と車田氏。彼のもとで学び、独立して飲食店を開業したスタッフは1人や2人にあらず。写真が物語るように“みんなのお兄さん”といった雰囲気だ。
『ease by LIFE』から『THE GREAT BURGER』へ。明治通りを渡り、拠点を50メートルほど移動、かつて裏原宿カルチャー全盛の頃の店がそうであったように、歩いて10秒とかからない距離に自らプロデュースする飲食店を少しずつ、確かな足取りで増やしてきた車田氏。「THE GREAT BURGER STAND」「GOOD TOWN DOUGHNUTS」「GOOD TOWN BAKEHOUSE」「The Little BAKERY Tokyo」、近年は和食業態「THE TEISYOKU SHOP」もオープン。コロナ禍にあっても話題の最中にある。曰く、「初心は変わらない」という。その初心とは?
『THE GREAT BURGER』のすぐ近くにある『The Little BAKERY Tokyo』。アメリカの自由に組み合わせる食文化を参考にし、国産の食材で安心・安全なパンや焼き菓子を提供する。系列店『GOOD TOWN DOUGHNUTS』のドーナツも販売中。
日本好きのアメリカ人が営む、風変わりな和食屋をコンセプトにした『THE TEISYOKU SHOP』も車田氏が手がける飲食店。「原宿×定食、一見すると違和感のある組み合わせが面白いかなぁと思い、オープンさせました」。
「子供の頃、毎日の食事やパン、洋菓子や和菓子のおやつに至るまで、すべて母親が手づくりしたものを食べていたんです。大人になるにつれ、その美味しさと手間が、どれだけありがたいものだったかを実感しました。だからこそ、多くの人にその価値の尊さを伝えていきたい。人生いろいろあるけれど、美味しいものを食べて得られる幸せってサイコーですよね。僕は、一人でも多くの人にこの気持ちをシェアしていきたいと思っています」
言わずもがな、極粗挽きパティの肉汁とフワフワのバンズ、新鮮な野菜の旨味が口の中で混ざり合う「THE GREAT BUGER」のハンバーガーは、その行列が物語るように、他店では真似できないクオリティなのである。
表参道・原宿に根を張り、原宿村の住人になって20年。車田氏はいま、どんなことを思い、次の仕掛けを考えているのだろうか。次稿では、改めて思う「オモハラ観」を紐解いていこう。
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