消費の街でなく、クリエイティブの街に戻したい
「以前は、原宿にあるものは渋谷にはなくて、渋谷にあるものは原宿にはない、っていう街の色の違いがあった。けど、最近は大資本の店が増えたせいで、どんどん均一化してきちゃってるよね。街にいる人の特徴もなくなってるから、『FRUiTS』でスナップを撮り続けていた青木正一さんも街からいなくなっちゃって、そうすると派手な格好して原宿に出掛ける人もいなくなって…ってどんどん個性がなくなる悪循環に陥ってる。そういうのって悲しいよね」
米原さんは現在、新たらしく誕生したファッション×ITスクール「東京ファッションテクノロジーラボ」にて、定期的に原宿の歴史を振り返る公開トークショー「スナックよね。」を開催している。これまでにスタイリスト・中村のん氏、ヒップホップの先駆者・高木完氏、ラッパー・ZEEBRA氏、モデル・マリエ氏、マルチクリエイター・小橋賢児氏、ヒステリックグラマー創設者・北村信彦氏など様々なゲストを招き、原宿の歴史を様々な側面から振り返っている。
「『スナックよね。』は、知り合いを呼んで昔話をしながら『あの頃、そんなだったけ?』みたいに思い出しながら歴史を再確認してるようなトークショー。原宿って今日生まれたわけじゃなくて昔からあって、それぞれの時代に顔がある。小さな店とか、クリエイションが重なって原宿という街をつくったんだけど、今の高校生はNIGO®くんを知らなかったり、『そもそもなんで原宿原宿って言うの?』みたいに街のブランド価値自体を認識していなかったりする。わざわざ街に集まったりしなくてもSNSがあって、みんながクリエイターになれる時代なのはいいことだと思ってるんだけど、でも歴史を知ってる俺としては、そういう次の時代を引っ張る人が『原宿に事務所持ちたいよね』と思うような街であってほしい。そのためには、原宿がただ消費する街じゃなくて、何かを生むクリエイティブな街でなきゃいけない。だから若い人たちに歴史を伝えて、『原宿で何かをやろう』という気持ちを刺激するようなイベントをやらなきゃと感じてる。タダだしみんな来てね(笑)」
「スナックよね。」でトークショーを終えた米原さんは、会場のライトを落とし、集まった若者たちと一緒にお酒を飲みながらカラオケを楽しむ。これが毎回お決まりの光景だ。約40年の間に、若者からカルチャーが生まれるシーンを何度も目撃してきた彼は、59歳になった今も、自ら積極的に若者たちの中に身を投げ、新しいカルチャーが誕生する気配を探しているように見える。原宿の輝かしい歴史を知った現在の若者が、また原宿から新しいブームを生み出し、米原さんを喜ばせる…きっとそんな未来が、すぐにやってくる。
Text:Takeshi Koh
Photo:Takako Iimoto