「表参道らしさ」とはなにか
世界の商業都市とは異なる、表参道にしかない特徴とはなんだろうか。表参道ヒルズの設計者、建築家・安藤忠雄は、表参道の傾斜の持つポテンシャルに着目した。坂道のもつ不思議な効果に、デザインの糸口を見たのだろう。
表参道ヒルズ内のスロープは、ケヤキ並木とほぼ同じ約3度
人は坂を登るとき、普段は決して視界に現れることのない「大地」と向き合うことになる。それがどんなに微々たる傾斜であってもだ。それは実は、他人の「足元」に目を向けるということでもある。一方、坂道を下るとき、ひとは視線の先に空を見る。それは他人の「頭」まで、目線が上がるということでもあるのだ。表参道を行き来する間、ひとは無意識のうちに、ファッションの象徴とも言うべき「靴」と「髪型」ばかりを、見続けてしまうことになる。アメリカのテレビ司会者コナン・オブライアンは以前、「靴は『あなたがどんな人であるか』、髪型は『あなたが周りにどう思われたいか』を表す」と言った。なぜ、表参道にこんなにも靴屋と美容院が多いのか。それは表参道だけが持つ、この極めて特徴的な場所性が、潜在的にファッションの発信地に適していたからなのではないだろうか。
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自分が身に着けているものを、みんなに見てもらいたい。そして、他人が身に着けているものを見てみたい。そんな人間の根源的な欲求に、表参道の地形が応えている。安藤忠雄は、その傾斜を、そのまま建築の内部に引き込んだ。