「人と会わないなら」写真がXBS氏を再び原宿へ
2012年ニトロの活動休止、2013年NITRAIDの終了。2011年に起きた東日本大震災という未曾有の災害も影響し、 それまで喧騒のど真ん中にいたXBS氏は、AGITOとともに原宿から去ることとなる。訪れた空白の時間に身を委ねるように、社会との接点を絶った。
そんな氏を再び外の世界へと引っ張り出したのは写真の世界だった。 声をかけたのはバスケットボール・カルチャー誌『Above(現FLY)』の編集長・秋元凜太郎氏だ。「人に会わないならいいよ」XBS氏はそう返答した。これを機に氏はフォトグラファーのキャリアを静かにスタートさせる。

試合(ゲーム)を撮影するXBS氏 写真提供:XBS
「写真は、最初完全に趣味で始めました。Futura(※グラフィティアートのレジェンド)の息子であるTim(13th Witnessとして知られるフォトグラファー)が日本にいて、彼に影響を受けて同じCanonの一眼レフを買ったんです。形として写真が表に出たのは、NITRAIDのノベルティでカレンダーを作ったくらいかな」
しかし、そのレンズが捉える世界は少しずつ広がりを見せていく。コート上の激しいプレー、ファッションブランドの仕事、 ファインダーを覗き続けるうちに、彼は気づけばまた、多くの人々と関わり合う場所に立っていた。その集大成とも言えるのが、2026年1月に原宿で開催された個展「FRACTAL」だ。
「縁あって写真家として初めて香川県の丸亀市でやった展示を、どうしても自分が長年関わってきた東京・原宿に持ってきたかった。自然をテーマにした写真ですが、会場には連日たくさんの人が来てくれて嬉しかったですね」
レセプションでのXBS氏 かつて人を拒絶していた氏であるが、また原宿で多くの人に囲まれることとなった Photo by @hashimotoryuji
会場は奇しくも、数えきれないほどに足を運んだ神宮前6丁目だった。
「(AGITOの)大家さんは店のすぐ裏に住んでいて、店前のベンチでよく飼い犬と座っていました。会期中に久しぶりにそこを通ったら、大家さんが同じように犬とベンチで休んでいたんです。声はかけなかったけど『また原宿に戻ってきた』という実感が沸きましたね」
写真展「FRACTAL」でXBSの元に訪れた人々の声は、これから「保育」という、最も人と深く関わる分野を進んでいくための、温かなエールとなったに違いない。
Gramicci 原宿の3F、Gギャラリー で行われた個展「FRACTAL」は大盛況となり、福岡へも巡回している。Photo by @hashimotoryuji
街を沸かせた重低音が育む子供の笑い声
かつてAGITOがストリートキッズたちの居場所であったように、今度はこの保育園を、次世代の子供たちと親たちのための温かいコミュニティ・ハブにしようとしている。
インタビューの最後、これからの時代を生きる親子へのメッセージを求めると、彼は少し考えてから、この街の住人らしい言葉を返してくれた。
「もっと自由に生きていいと思います」。そして続ける。

提供:マザーグース神宮前保育園
「心から子供の『個』を尊重できる親御さんが増えれば、社会はもっと豊かになるはず。僕たち大人がここでコミュニティをまず作っていきたい。かつて僕らが体験した、原宿の自由な空気や人との繋がりを、子供たちに伝えていけるように」
その言葉には、既存の枠組みや『保育』を取り巻く課題に対して問題提起を投げかける、彼なりのストリート・フィロソフィーが込められている。

ラッパー、ブランドディレクター、フォトグラファー、そして園長。XBS氏が辿った経歴は一見、脈絡のない点と点のように思えるが、氏の言葉に耳を傾けると、それは「本質的な表現とは何か」という問いであり、氏の感性を育んだ「原宿」という街への深い感謝で結ばれている。
渋谷の地下からマイク一本、原宿に城を構えた男が、目の前で園児用の椅子に腰かけ、トレードマークのサングラスを外して優しい笑みを浮かべる。カメラレンズ越しに美しい「本質」の世界を見つめ、子供たちの未来をあたたかく見守る“ラッパー園長”の姿がそこにはあった。

XBS=「Extra Bass Speaker」のごとく鳴らした重低音は今、ここ原宿から子供たちの笑い声という、何よりも力強い未来の音へと変わろうとしている。

■マザーグース神宮前保育園
住所:東京都渋谷区神宮前2-11-4
■XBS × Uyama Hiroto 新EP『FRACTAL』
制作プロジェクト
実施期間:
2026年1月20日(火)〜2月28日(土)
実施プラットフォーム:CAMPFIRE
▶︎プロジェクトページ
▶︎写真展『FRACTAL』福岡Sort Oneにて開催中
日時:2026年2月7日(土)〜15日(日)まで
Instagram:@sortone_fukuoka
Photo:Takashi Minekura
Text & Interview:Tomohisa Mochizuki


























