大地の意志
GYREの中に一歩足を踏み入れると、外観とは見事に対照的な印象を受けるだろう。鏡面仕上げの壁面に、ガラス張りのエレベーター。アトリウムの周りを螺旋状にエスカレーターで登っていく過程では、各店舗のインテリア、移動する人々、そして上から差し込む日光が反射と透過を繰り返し、さながら万華鏡のような効果を生んでいる。
GYREの内部。吹き抜けの天井から光が差し込み施設内で反射する
その幻想的な光の現象に誘われながら4階まで登ってみると、表参道側に明るいテラスが見えてくる。そこで目の前に立ち現れるのは、表参道ヒルズの先に広がる裏原宿のランドスケープ。ゆるやかにうねる地形である。ここに来て初めて、人は表参道という場所性を強烈に意識する。
4階のテラスから裏原宿方面を眺めると、ゆるやかにうねる地形を感じられる
私は思うのだ。GYREとは、表参道の大地が、自らの存在にもう一度気づいてもらいたいと願った、力強い意志の発露なのではないだろうか。
《プロフィール》
各務太郎 Taro Kagami
1987年東京都生まれ。2011年早稲田大学建築学科卒業後、電通に入社。第1クリエーティブ局配属。コピーライターとして数々のCM企画を担当。2014年退社。2017年ハーバード大学デザイン大学院(都市計画学修士課程)修了。現在、建築と広告、2つのアプローチで都市が抱える難題に取り組んでいる。第30回読売広告大賞最優秀賞。第4回大東建託主宰賃貸住宅コンペ受賞。他。