美容室によって育まれる表参道・原宿という街

本コラムシリーズのVol.1からVol3にわたり、街と美容室についての考察を行ってきた。最後の章となるここでは、これまでの話を含め、美容室が表参道・原宿にもたらしている事実をお伝えしたい。
Vol.1でお伝えした通り、オモハラエリア(神宮前・北青山・南青山)にはおよそ2000件近い(1948件)の「美容所」がある。※ネイルサロン、まつげサロンなども含まれる
少々乱暴な計算かもしれないが、約2000件の美容室にスタイリスト・アシスタントが平均3名いるとしよう。すると約6000人もの腕の立つ現役のカリスマや、おしゃれキング的な感度の高いスタイリスト、そしてその卵たちがこの街を拠点としていて、毎日通っていることになる。そう考えてみるだけでも、その存在感はインパクトがある。

原宿の美容室の代名詞的存在でもある「SHIMA HARAJUKU」。街に根付き、長い歴史を誇る有名店から、触発された才能が街に波及して昨今の美容の街を形作る。(2025年7月編集部撮影)
さらに想像を膨らませてみると、平均して各美容室が1日10人の顧客を担当したとしよう(エリアの賃料や客単価からざっくり想定)。そうするとなんと1日約20,000人を日々街に送り出していることになる。それも、もとよりファッション・美容感度の高い顧客にさらなる磨きをかけて“モデル”として仕上げ、表参道というランウェイに解き放っているのだ。
1日あたりおよそ6000人のトップレベルでおしゃれなスタイリスト、アシスタントが街を拠点とし、およそ20,000人が、理想の姿で景観の良い表参道のランウェイを2次目的、3次目的のために練り歩く。そのサイクルを生み出し続けていることが美容室による、街に対する最大の功績と言えるだろう。
あくまで、机上の憶測に過ぎないが、調べてきた数字や歴史、これまでコラムにて紹介してきた考察を踏まえ、更にこの数字を考慮すると、オモハラエリアにとって美容室の存在意義、貢献度は想像以上に大きく、この街はある種、美容室によって価値が引き上げられている側面が間違いなくあると考えている。
かつては街の成長によって進化してきた美容室。だが、年月を経て、現在においては街に影響を与え、街を育んでいるという逆転の状況になったのではないか。

それは、表参道・原宿の街にとっては必要不可欠なものであり、ありがたい恩恵。しかし、ほとんどの美容室にとってそれは無自覚なものだろう。ただひたすらに、より高い技術と質の高いサービスを顧客に提供するため、ストイックに顧客の満足度と自己実現を追求しているだけかもしれないが、この街に対しての自分たちの貢献を理解し、今まで以上に胸を張りこの街の美容師であることに誇りを持ってほしいとひとえに思う。

街の変化、進化に寄り添い、発展を遂げてきた表参道・原宿の美容室は、さまざまな偶然とも思える必然を経て、現在に至る。そこには、運や才能だけではなく、切磋琢磨できる環境、憧れや、夢を実現したいという多くの人の努力と、様々なドラマがあったに違いない。もちろん、そのドラマは現在進行中。この街に来てその美容室の多さにふと意識が向いたなら、この記事を思い出し、この街の美容室・美容師をそっと応援していただきたい。だって、彼、彼女たちは自分たちの仕事を通じて、この街を素敵に育んでくれているのだから。

「Vol.1〜Vol.3」編集後記
ふと美容室の多さが編集部内で話題になり、その数を調べてみたことから始まった今回の考察。掘れば掘るほど、いろいろなことがつながっていき、この街に多い理由は、たまたまではなく、必然であるという見解に行き着いた。
しかも美容室が、この街を育んでいる存在という、むしろ街になくてはならない存在という事に気がついたとき、この考えを記事にすること自体がローカルメディアとしての役割だと感じた。
一旦、編集部主観での美容室文化の考察コラムはこのVol.3を以って区切りとするが、このコラムの記事シリーズを起点に、今後はオモハラ美容室の歴史を、実際に知る当事者たちに話を聞き、証言を集めていきたい。さらなる深堀りと裏付けにより、この街にとっての美容室という存在を語れたらと思う。
企画・構成・編集:OMOHARAREAL編集部
画像撮影協力:JENO by apish
Text: Tomohisa Mochizuki
























