美容室が感度の高い“街の常連”を生み出す

前項で表参道がランウェイだとすると、美容室の顧客は言わばモデルで、美容室は信頼の置けるヘアメイクルームという関係性、それにより特別な時間を過ごせる街ということを書いた。そして、ここでは、「美容室へ行く」という行動とその次のアクションにもう少し焦点を当ててみたい。
表参道・原宿に足を運ぶ主目的=「1次目的」をユーザーが美容室へ行くこととした場合、その後お気に入りのショップに行く、カフェに行く、ギャラリーを覗いてみる、といった副次的な目的=「2次目的」、「3次目的」が作りやすいというのがこの街の強さだと編集部では考えている。

それではまず、なぜ1次目的が美容室になり得るのか。
美容室には、例として挙げた街にあるショップ・飲食店・ギャラリーとは決定的に違う特性があると言えないだろうか。それは、美容室へ足を運ぶ「必然性」が高いという点だ。
ショップ・飲食店・ギャラリーなどは割と偶然性が強い。できれば行きたい、近いうちに行きたい(もちろん特定の展示や、商品などお目当てが明確な場合は除くが)といった、願望に近い場合が多い。それに対して、美容室は数ヶ月に1度、人によっては1ヶ月に1度「そろそろ行かなくちゃ」と定期的に思わせ、必然的に行動を促す存在なのではないだろうか。しかもそれは決してネガティブなものではなく、むしろ美容室へ行くことはご褒美的な要素もあるので、必然性が高くポジティブに街との接点を作ってくれる。
人は街に来る目的が多い程、行動を実行に移しやすいことは間違いない。自分がいちばん整った理想的な状態を“表参道ランウェイ”で嫌味なくお披露目しながら、さらに2次目的、3次目的があるというのはユーザーにとって足を運ぶ価値を見出しやすい。
スナップ企画 「HANGOUT OMOHARA」に参加してくれたLenoさん。まさに「SHIMA HARAJUKU LEAP」の帰りで、これから「Maison Mihara Yasuhiro」へ行く途中ということだった(HANGOUT OMOHARA Vol.40)
目まぐるしく変化する街だからこそ、店頭に並ぶ商品やメニュー、展示されているアートも変わり、季節によって街の景観自体が表情を変える。そのような理由から定期的に足を運ぶ人を飽きさせない街であり、足を運びたくなる街でもある。
加えて、髪を切ったあとの自信に満ち溢れた姿だからこそ、例えば、普段は行かないギャラリー、ブランドのショップにも足が伸びる。そんな風に、美容室へ行ったことが普段とは違った行動をとる後押しにもなり得るのではないか。

メゾンブランドのビルや表参道ヒルズが両脇にそびえ、1Kmに渡って真っ直ぐ伸びる勾配の道というのは、なかなか他の街では見られないロケーション。
そして、美容師は、ヘアカットのスペシャリストにとどまらず、コミュニケーションと接客のプロフェッショナルでもある。数ヶ月に1度、月に1度でも、この街の美容師と世間話や近況をやりとりすることは、“常連”としての連帯感を抱きやすい。ユーザーにとっては心地が良いと感じる体験のひとつだ。
そう考えると美容室は、店の“常連”をつくるだけではなく、ユーザーと街との良い付き合いを促す存在であるとも言える。髪を切る、美容室の後に街を散策する、といった行動をその日限りではない継続的なものにし、“点”の連続を“線”として繋げてくれる。このことから、街とユーザーにとって非常に重要な“ハブ”の役割を担っていると考える。

撮影にご協力いただいたJENO by apishでの一幕。施術後のスタイル撮影をしていたので事情を説明してその様子を撮らせていただいた。美容室では日常的に行われている光景だと思うが、そのひとつひとつが街の常連作りに繋がる
同じ美容室へ定期的に通うこと、つまりそれは“常連”になるということ。しかし、美容室が生み出している“線“がもう一つあることを忘れてはいけない。“街を散策する常連”も同時に生み出しているということだ。
それも、ただの常連ではなく、見映え良く整い、仕上がった状態の常連である。そしてその多くは、ファッションやカルチャーに興味が強かったり、精通していたり、エリアに縁(ゆかり)がある人、美容に対する感度が高い人だったり。そんな“感度の高い常連”が定期的に街を訪れる目的を、美容室は作っている。
美容室が作り出す“感度の高い常連”が、街にとって良い影響を与えているのは、揺るぎない事実であると考える。
>>Page 3 美容室によって育まれる表参道・原宿という街
























