形見一郎さんの意匠を受け継ぎ、握手するような空間
「ここは、もともとカフェのために建築した建物なんだけどね、僕の相方的存在である形見くん(2015年に逝去したインテリアデザイナー故・形見一郎さん)のデザインを、荒木(信雄)くんやヒロシくんが活かす空間づくりをしてくれたことがとても嬉しかったなあ。」
宇一さんは窓際の席で表参道の景色を見つめながら、そう言った。V.A.はロータスやモントークをともに手掛けた形見一郎さんの意匠を汲んだ空間となっている。宇一さんは視線を店内へ移し、周囲を感慨深そうに見渡して続ける。

「いちばんぶち壊してしまっているのが僕だと思われるかもしれないんだけど(笑)、でも僕的には形見くんが作った空間にコレ(V.A.のカフェスペースを指差して)が入ったら面白いだろうなと思った。あえてネジ穴も見えててさ、ちゃちい感じがいいなあと思った。それがフックとして記憶や印象になんとなく残るでしょ?しっかりとしたかっこいい建物の中の舞台装置。そんなイメージだね」
カフェスペースのアーチ型のインテリア、赤と白のレトロでポップなモダンデザインは確かに印象として新鮮だ。洗練され、その存在感から近づきずらさすらあったモントークの表情とは一転した、思い切りの良い采配。モントークをよく知る宇一さんだからこそのバランス感覚が窺える。

V.A.ディレクター・藤原ヒロシさんと、V.A.に関わる人たちの積み重ねられた信頼関係によってV.A.の空間が出来上がった。そしてそこには形見一郎さんの意匠を汲み取り設計を施したアーキタイプ・荒木信雄さんも含めた、両者のリスペクトと愛も感じられる。宇一さんいわく、「形見くんのデザインと握手するような」と空間を表現していたのがとても素敵で印象に残っている。
カフェメニューも試作を重ね、宇一さんが考案したラインナップが提供される。中でも、人気が出ること間違いなしの映える一品を紹介してくれた。藤原ヒロシさんをしてInstagramで「宇一マジック」と言わしめた「HOT CHOCOLATE」だ。
HOT CHOCOLATE(1,000円)
「メニューはヒロシくんのリクエストも聞きつつ、作っていった感じだな。このあま〜いホットチョコレートは、見栄えが良いし、可愛いでしょう。熱々で飲むと最高なんだよ」
熱々のチョコとミルク、ふたつの器に入ったチョコとミルクを実験のように混ぜ合わせると爽やかな甘さとチョコのコクがなめらかに喉を通りすぎていく。なるほどこれはまさに魔法のようなおいしさだ。そして器の置き方ひとつにもこだわる宇一さんの細やかさに、藤原ヒロシさんが全幅の信頼を寄せる理由の一端が見てとれた気がする。そんな二人の関係性をあらためて聞いてみたい。

同席した編集部員も宇一さんの指示に沿って“宇一マジック”に挑戦。
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