カフェ・ド・ロペの時代、モントークの時代を経て
表参道の憧れの象徴と言っても過言ではなかったモントーク。その前身はご存じ表参道の伝説として語り継がれる1972年オープンの「カフェ・ド・ロペ(Cafe' de Rope')」である。いずれもアパレル事業を主力に、カルチャーを発信し続ける株式会社JUNが運営していた。モントークになってからは、JUNと宇一さんが共同で20年という長い期間、同地で舵取りを行なってきた。なので宇一さんは誰よりもこの空間の魅力を知っている人物の一人と言えるだろう。
2F「VAT BAKERY」のカウンターの向こうに、素敵なステッカーを発見
V.A.プレスプレビュー当日、忙しい合間を縫ってOMOHARAREALにも時間を作ってくれたのでお話を伺った。率直にモントークの閉店から、V.A.のオープンを迎えた心境は?
「モントークを閉めたタイミングは、ちょうど良かったなと思う。役目は終えたって感じたよ。自分でも納得できたってことは自然なタイミングだったんだろうね。
そして今回のV.A.は(藤原)ヒロシくんが作った店。モントークに毎日来てくれていたヒロシくんが“宇一くん一緒にやろうよ”って言ってくれた。カフェ・ド・ロペの時代、モントークの時代を経て、今度はこのV.A.の時代。連続性がないようであるような。今回、僕はヒロシくんが掲げる、V.A.(ヴァリアス・アーティスト=さまざまなアーティストたち)の中の1人なんだよ」
V.A.は今後もポップアップなども開催して、さまざまなアーティストたちの感性が交わる場所として機能していく場所。オープンに至るまでもたくさんの人たちの協力があったからこそと、宇一さんは付け加えた。宇一さんの視点で、V.A.の魅力をさらに詳しく語ってもらった。
「2Fのベーカリーの飲食スペースはヒロシくんが通っていた純喫茶『エース(東京・神田)』から椅子を引き継いでいるんだよね。エースの名物『のりトースト』も原宿で食べられるよ。
1Fは物販で、ここでしか買えないものや、その時しか買えないものが並んでいたり、フロアごとに違う景色が広がるのは面白いと思うな。時代性やテイスト、すべてがミクスチャーされているから全体を通して表参道・原宿のような空間になっている。今回のようなコンセプトのショップは僕1人では実現できなかったことだね。
荒木くんやヒロシくん、JUNの佐々木さん(株式会社JUN 代表取締役・佐々木 進)を筆頭に、他にもこのプロジェクトに関わっているたくさんの人たちの時代間や感性が交わって、結果としてミクスチャー感が高まった」
1Fの物販エリア。さまざまなブランドとV.A.がコラボしたアイテムがズラリと並ぶ様は圧巻
満足そうな笑みを浮かべながら、あくまで自身はVarious Artists(=V.A.)の一人であることを念頭に、オモハラエリアを象徴するにふさわしい店舗になったと自負していた。中でも特に宇一さんが気に入っているポイントはどんなところなのだろうか?
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