【私の表参道】コレクションデビュー30周年 原宿で生まれ育ったデザイナー・丸山敬太の定点観測
(2024/09/20)
丸山敬太(マルヤマ ケイタ)
原宿出身のファッションデザイナー。1994年にコレクションデビュー。94 -95秋冬東京コレクションにて「KEITA MARUYAMA TOKYO PARIS」として初参加。以降、東京・パリ・香港・シンガポールなど、 世界の舞台でコレクションを発表。自身のブランドのほか、ミュージシャン、俳優、 舞台の衣装制作をはじめ、ブランドのディレクションなど広い分野で活躍。2024年、ブランド設立30周年を記念した「丸山百景」プロジェクトとして「丸山百景-ケイタマルヤマ遊覧会-」をラフォーレ原宿(10月6日まで)、表参道ヒルズ・スペースオー(※9月23日で終了)で開催。
人生を見つめる定点
生まれも育ちも原宿。幼い頃からこの街を知っているけれど、定点的に足を運ぶ場所がある。表参道の歩道橋の上だ。
しんどい時、帰るのが名残惜しいとき、歩きたいとき、クールダウンしたいとき。ここに立って真っ直ぐ伸びる表参道を見つめて、人生に思いを巡らせる。
この写真を撮ったのはコロナ禍の頃だったので例外ではあるが、街のど真ん中で一人になれる場所というのは意外と他にはないのかもしれない。
昼間は人でごった返しているけれど、夜になると昼間の喧騒が嘘のように静まり返るのも表参道の面白いところだ。深夜もしくは明け方の帰り道、幾度となく歩道橋の上に登った。
ひとりの時がほとんどだが、寂しさはそこにない。昼間の日差し、人の熱気の面影がなんとなく残っている気配を感じながら、深呼吸して、自身のありようをそこに置いてくる。
欅並木の葉の具合や、空気の匂い、ここに来ると季節の移り変わりも顕著にわかる。静かな街に今の自分を重ね、リセットしてまた歩き出す。
振り返ればコレクションデビューから30年を迎えた。あと何度ここへ来るだろう。街は変わっても、この場所は変わらない。僕にとって特別な、人生の定点観測。
Text & Photo:Keita Maruyama