お皿の上に非日常を
「RÉFECTOIRE」は手頃な価格でフレンチレストランの様な食事が楽しめるベーカリーカフェだ。お店ではパテやテリーヌが挟まれたサンドイッチが提供され、ローストビーフにかかるチーズソースやパイに添えられるアイスクリームまで手作り。そこには西山氏のこんな思いが込められている。
「表参道や原宿は華やかでエネルギッシュな人が多く、東京を象徴するような眩しいイメージがあります。そんな場所でお店を出すなら普通のパン屋さんではなく、価格は日常的でもお皿の上は非日常なものにしたかったんです。なのでパン屋さんの価格で温かい料理やソースのかかったお皿料理を出すことで、誰でも気軽にフランス料理のテイストを楽しんで貰えるお店にしました。」
新しい道を切り開いていく姿勢がある“食堂”というコンセプトは手頃な価格のメニュー以外に、長テーブルや半セルフサービスの仕組みをデザイン制高く導入することでも再現されている。
西山氏は新しいものを作り出す人だ。そもそも1998年京都にオープンしたル・プチメックはビストロの様な外装で、店内には映画のポスターがたくさん貼られるパン屋らしからぬ店構え。メニューも今でこそメジャーなハード系と言われるどっしり重くて固いパンをいち早く売りにしていた。そして今は労働環境の新しい仕組み作りにも取り組んでいる。
ル・プチメック 今出川
出典:ル・プチメック公式サイト
「実は今、週休3日制度を導入しようとしてるんです。今の時代に合うように、飲食業界も雇用形態や待遇を整えることはもちろん必要なこと。更に週休3日制度の導入までできれば、一般企業と並んだ中でも労働環境が整ったことになるんじゃないかと思って取り組んでる最中なんです。『RÉFECTOIRE』の若いスタッフからも、自分じゃ絶対考えないメニューの提案があって、実際出してみると売れるんです。やっぱり街やお客さんのことを一番理解しているのはお店で働くスタッフなので、スタッフが働き易い環境作りはこれからも考え続けたいですね」
話し中に何度も「僕は本当にただ目の前のことをやってきただけ」と言っていた西山氏。しかし西山氏がたくさんの人から応援される背景には、自分が信じるものを貫き通し、新しい道を切り開いていく姿勢がある
ファッションブランドとベーカリーカフェ。
一見遠く感じた2つの店舗には「新しいものを生み出していく」共通の信念が流れていた。そして革新的なものが受け入れられ、それを応援する風土のあるこの街に「RÉFECTOIRE」ができたことは必然だったのかもしれない。
【西山逸成さん】
ル・プチメック代表取締役製造補助。
1968年(昭和43年)、京都府福知山生まれ。イブ・モンタン主演のフランス映画『ギャルソン』と、テレビで見た三國清三シェフに憧れて、フランス料理の道を志す。レストランでの料理人修行、京都フリアンディーズでのパン修行を経て、渡仏。各地で料理の修練を積むとともに、フランス文化を吸収。1998年にル・プチメックを京都の今出川に開店、全国からお客さんが訪れる人気店へ押し上げる。2009年には東京初進出店として3軒目を新宿にオープン。2012年11月にはサンドイッチ専門店「RÉFECTOIRE (レフェクトワール)」を原宿に出店。