岡本仁×マイク・ミルズによる待望の写真集、ジェーンスー×中野信子の対談本…街の人気店スタッフが選ぶ、「心がゆれた1冊」9選
表参道・原宿エリアで働く人たちは、どんな本を読んでいるのだろう。秋冬シーズンの特別企画としてOMOHARAREALでは「私の1冊」と題し、一昨年、昨年に引き続きオモハラエリアで働く人たちにおすすめの1冊を紹介してもらいました。(2020年版・2021年版)
レコードショップ、お花屋さん、セレクトショップ、カフェ、表参道・原宿の人気店スタッフの皆さんがパラエティに富んだ本を紹介してくれました。ぜひ店にも足を運んで、推薦してくれたオモハラエリアのスタッフたちと、本をネタにコミュニケーションしてみるのもいいかもしれません。
選んだ人:BEAMS RECORDS(ビームスレコーズ) スタッフ・藤本 喜子さん
藤本 喜子(ふじもと きこ):学生時代アルバイトとして2019年にビームスレコーズに入社。専門学校を卒業後、雑誌「GRIND」のアシスタントエディター、アートブック専門のディストリビューター「twelvebooks」のオフィススタッフを経て、現在はビームスレコーズを中心に音楽漬けの日々を過ごす。90年代〜2000年代の『relax』や『STUDIO VOICE』を集めるほど雑誌が好き。最近の趣味は仕事終わりにレイトショーを見に行くこと。
藤本さんの心がゆれた1冊:『finding the film-director scouts for C'mon C'mon』/Mike Mills(マイク・ミルズ)
音楽のほか、映画やヴィンテージ雑誌を集めるのが好きな藤本さんが選んでくれたのは、マイク・ミルズ監督の今年公開の最新作『C'mon C'mon』のロケハン写真集。実はこれ、編集者・岡本仁さんが『relax』在籍時にマイク・ミルズと作ろうとしていた幻の企画。時を経て実現したというストーリーも素敵だ。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】 BEAMS RECORDS(ビームス レコーズ)/『relax』×マイク・ミルズ 『C’mon C’mon』の写真集
選んだ人:ディストリクト ユナイテッドアローズ(District UNITED ARROWS)スタッフ・小林 大輔さん
小林 大輔(こばやし だいすけ):UNITED ARROWSのセールスパーソンとしてDistrict UNITED ARROWSを担当。店頭での接客に加えて、ブログ作成や売場レイアウト作成なども兼任している。サッカーを中心に、体を動かす事と読書、映画・ドラマ鑑賞(主にNETFLIX)、ラジオを聴くことが趣味という文武両道派。ファッションもトラッドからカジュアルまで幅広く着こなす。休日には子供と一緒に公園で過ごすことが多いんだとか。
小林さんの心がゆれた1冊:「女に生まれてモヤってる!」ジェーン・スー,中野信子
音楽プロデューサー・コラムニスト・ラジオパーソナリティなど多彩な経歴を持つジェーン・スーさんと脳科学者である中野信子さんの対談本。ユーモアにあふれた無理のない生き方指南は性別関係なく楽しめる1冊。思わず笑ってしまう、電車での閲覧注意な1冊。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】ディストリクト ユナイテッドアローズ/ジェーン・スー×脳科学者。ユーモアが詰まった対談本
選んだ人:CIBONE・スタッフ 松尾 翼さん
松尾 翼(まつお つばさ):1989年生まれ。
松尾さんの心がゆれた1冊:『柿の種』(岩波書店)/寺田寅彦
夏目漱石の一番弟子として知られる寺田寅彦による随筆集。つまりエッセイなのだが、物理学者としての経歴を持つ寺田は、科学的な視点から日常のありふれた不思議を切り取っている。心にゆとりがあるときにゆっくり読みたい1冊。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】 CIBONE/夏目漱石の一番弟子・寺田寅彦の傑作エッセイ集
選んだ人:LOTUS(ロータス) パティシエ・中西沙織さん
中西沙織(なかにし さおり):洋菓子店で働いたのちに、2016年にロータスに入社。当時、パティスリーでない業態でケーキをたくさん扱う店を探し、表参道・原宿エリアのカフェなどを食べ歩くなどしており、ロータスの「アップルチーズケーキ」に感銘を受ける。面接を受け、プロデューサーである山本宇一さんの目に留まりロータスのパティシエとして働く。中西さんが開発して店のショーケースに並んだケーキも多数。
中西さんの心がゆれた1冊:「Tarts & Pies: More Than 55 Delicious Recipes」
ロータスをプロデュースする、空間プロデューサー・山本宇一さんからもらったというタルトとパイのレシピ本。写真も判型も実寸大のタルトのかたちになっており、その裏にはレシピが書かれている。中西さんはこの本からロータスのエッセンスを抽出し、店で出すケーキに落とし込んでいるという。インテリアとしても秀逸な1冊。
>>詳しくはこちら:LOTUS(ロータス)/山本宇一さんから譲り受けた“タルト”なレシピ本
選んだ人:THE NORTH FACE Sphere・店長の鵜野貴行さん
鵜野貴行(うのたかゆき)/サイクルメッセンジャーを経て、2011年にGOLDWIN(THE NORTH FACE)に入社。入社後まもなく始めたトレイルランニングに熱中し、国内外のトレイルレースに挑戦している。その経験から2013年東京・丸の内のランニング専門店「FLIGHT TOKYO」に配属。2022年7月に新しくできた「THE NORTH FACE Sphere」に着任し、店長として勤務。
鵜野さんの心がゆれた1冊:BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”/クリストファー・マクドゥーガル(著),近藤隆文(訳)
世界的なウルトラランナーであるクリストファー・マクドゥーガルによるルポルタージュ。とにかく長い距離を生活のために走るという“走る民族”、メキシコのタラウマラ族に密着し、走るということの根源と向き合った1冊。トレイルランナーやウルトラランナーにとって、必携の本だ。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】THE NORTH FACE Sphere/ランナー必携!“走る”を紐解く虎の巻「BORN TO RUN」
選んだ人:クレヨンハウス表参道「子どもの本」事業部サブチーフ
鏡 鉄平(かがみ てっぺい):もともと、母親が司書を務めていたこともあり、本が好きだったことから絵本に興味を持ち、2015年よりクレヨンハウスに入社。現在はクレヨンハウス表参道の1F「子どもの本」エリアの売場責任者を務める。事業部全体の取りまとめや店舗における取材対応全般を担っている。絵本の新刊から本を選ぶ「新刊会議」を行うクレヨンハウスでは、売り場スタッフはすべて毎月100冊〜200冊出る新刊を全て読んでいるんだとか。
鏡さんの心がゆれた1冊:「悲しみのゴリラ」/文:ジャッキー・アズーア・クレイマー 絵:シンディー・ダービー 訳:落合恵子
クレヨンハウス主宰の落合恵子さんが訳者を務めている“グリーフケア”の絵本。“グリーフケア”とは近しい人を亡くした人の不安定な心、喪失感をケアすること。子供だけでなく大人も読める絵本だ。悲しみは必ずしも乗り越えなくてもいい。大切なのは自分の中に受け入れて、付き合っていくこと。と、そっと心に寄り添ってくれる優しい1冊。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】クレヨンハウス表参道/主宰・落合恵子さんが訳者を務めた、大人も読める「子どもの本」
選んだ人:ジェニファーセブン(Jennifer Seven)オーナー・車田 篤さん
車田 篤(くるまた あつし):LDFS/GUIDING LIGHT 代表取締役。24歳で神宮前カフェ「ease by LIFE」をオープンし29歳の時(2007年)、「THE GREAT BURGER」をスタート。その後「GOOD TOWN DOUGHNUTS」、「The Little BAKERY Tokyo」、「THE TEISYOKU SHOP」など渋谷・原宿エリアを中心にコンセプチュアルな店舗を展開し、直近では「THE GREAT BURGER」とは一線を画すバーガー店&グッズショップ「Jennifer Seven」をオープンした。愛用しているコンバース・オールスターのストックは100足以上なんだとか。
車田さんの心がゆれた1冊:「Van Life: Your Home on the Road」フォスター・ハンティントン
世界中で車中泊ブームを巻き起こした、フォスター・ハンティントンによる紀行本。道中、同じようにバンをカスタマイズして暮らす人たちにインタビューし、バンで生活をする楽しさと、一方で苦労もリアルに綴っている。もともと出版社で働いていたフォスターによる写真も美しい、旅好きなら手元に置いておきたい1冊。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】ジェニファーセブン/ 夢とリアルが詰まったロードトリップバイブル「VAN LIFE」
選んだ人:ル・ベスべ(Le Vésuve)代表の松岡龍守さん
松岡龍守(まつおか たつもり)/ル・ベスべ オーナー。フラワーデザイナー・高橋郁代さんとともに1997年にル・ベスべをオープンし、今年で25周年を迎えるル・ベスべの代表を務める。キラキラしたものを見つけるとワクワクするという松岡さんは日々、ル・ベスべに愛情を注ぎ、スタッフたちをあたたかく見守る。後進の育成に力を入れつつ、自身の花への探求と情熱は尽きない。
松岡さんの心がゆれた1冊:「Bloom(ブルーム)」/Lidewij Edelkoort,Anthon Beeke
南青山5丁目にあった洋書の専門店、「嶋田洋書店」(2015年に閉店)で松岡さんが花屋で修行していた頃に出会った、フランスの花雑誌。圧倒される花の写真と美しいレイアウトがまるでアートブックのようなクオリティ。松岡さんの花の世界を広げてくれた1冊。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】ル・ベスべ(Le Vésuve)/オーナー・松岡さんが魅了された花雑誌「bloom」
選んだ人:青山ブックセンター本店・文芸書担当 青木麻衣さん
青木麻衣(あおきまい)/1993年生まれ。2016年に青山ブックセンター六本木店に入社後、2018年に青山ブックセンター本店に異動となる。文芸書、実用書の仕入れやイベント関連を担当している。今回、青木さんが紹介してくれた本をきっかけに、自転車の楽しみに目覚め、購入を検討中。
青木さんの心がゆれた1冊:『臆病者の自転車生活』安達茉莉子
ZINE作家、イラスト作家としても活躍する安達茉莉子さんのエッセイ本。全く縁のなかった自転車にのめりこみ、熱中していく様子が素敵なイラストとともに軽妙に綴られている。紹介してくれた青木さんもこの本を読んで「自転車があればもっといろいろなところに行けるのに」と羨ましくなったそう。新しいことを始める楽しみが詰まった1冊。
>>詳しくはこちら:【心がゆれた私の1冊】 青山ブックセンター/イラスト作家・安達茉莉子さんによる自転車エッセイ
オモハラエリアの個性あふれるスタッフが選書した「私の1冊」。いかがでしたか?写真集や雑誌、レシピ本とジャンルもさまざま。しかし、共通しているのは選書してくれた人たちのパーソナリティが反映されていること。あの人が読んでいたから、すすめてくれたから、というきっかけで素敵な本に巡り合うきっかけになれば幸いです。誰かに紹介するのを想像しながら、本を手に取ってみるのも面白いかもしれません。あなたならどんな本を紹介する?
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:OMOHARAREAL編集部