「自分でやりたいものを曲げずに実現できる場所」
2013年の活動開始から元気さんとともにCATsクリーンアップを盛り上げてきた面々も、100回目のクリーンアップに駆けつけた。
「当初とは立場も状況も変わり、それぞれ頑張ってやりたいことをかたちにしている中で、なかなか参加できなくなってしまった人たちもいます。けれど彼らが久しぶりにフラっとゴミ拾いに来てくれることによって、僕らより若い世代の人たちが『すごい人たち来てない?』みたいなことになったら面白い。カジュアルにそういった繋がりを持てるタッチポイントとしてゴミ拾いが機能してくれたら最高です」
参加者の中には元気さんと同い年で親交が深く、CATsの活動日誌を連載していたNEUT MAGAZINE 編集長 平山潤さんの姿もあった。平山さんは当時キャットストリートの飲食店でバイトしていたそう。同じくキャットストリートでバリスタをやっていた共通の友人を介して意気投合し、以来、公私ともに交流は続いている。
当初から元気さんとCATsの活動に賛同し、参加している面々。いつもの人から久しぶりな人まで。 一番右がNEUT MAGAZINEの編集長・平山潤さん
「それぞれ頑張ってやりたいことをかたちにしている中で、彼らが久しぶりにフラっとゴミ拾いに来てくれることによって僕らより下の若い世代の人たちが『すごい人たち来てない?』みたいなことになったら面白い。カジュアルにそういった繋がりを持てるタッチポイントとしてゴミ拾いが機能してくれたら最高です」
CATsクリーンアップでは告知したい人の時間を必ず取る。それは情報共有するだけでなく、知らない人同士が身構えずに声をかけられる、コミュニケーションのきっかけにしてほしいという思いからだ。
「シリコンバレーじゃなくても起業はできるけど、起業家の一等地として世界的な企業が集まっているじゃないですか。同じように、キャットストリートや原宿の街が『何かを始めるならここが良い、何か楽しいことができる場所』そんな風に思ってもらえるような風土が浸透していってほしいです。自分でやりたいものを曲げずに実現できる場所であり、それをサポートしてくれる人やお店があるような環境ができたらと思いますね」
CHOP COFFEE CAT STREET前。キャットストリートにいくつかあるりんごの木は渋谷区と飯田市の交流によって植えられたもの。収穫されたりんごを使って、
これからクリーンアップに参加する人の多くは、CATsに集まる人たちの姿を見て、お金がなくても地域に対して何かが出来る、生み出されるものがあると感じるのではないだろうか。実際、友人がゴミ拾いの時間がイイリフレッシュになっていると話してくれたし、ゴミ拾い後に振る舞われるCHOP COFFEEのコーヒー(※要マイカップ・ボトル持参。無料だがドネーションを同時に受け付けている)を飲んで毎月豆を買うようになった。少なくとも1人、この街へのリピーターがゴミ拾いをきっかけに増えたのだ。
「お金がなければ生活できないのはわかっている。だけどお金がないと楽しいことができないというのは嘘ですよ。ありがたく利用させてもらうことはありますが、資本に対しての反骨精神は持ち続けていきたいです。この活動を通じて、それがカッコいいという価値観が、若い世代に感じ取ってもらえたら嬉しいですね」
元気さんの話から、CATsのクリーンアップがただのゴミ拾いではないことをお分かりいただけただろう。101回目となる7月からは使い古したデニムをアップサイクルするプロジェクト「FUKKOKU」と協力し、クリーンアップで参加者から履かなくなったデニムを募る。ゴミ拾いを切り口に消費の街でお金以外の対価、価値を創造しつづけているCATsクリーンアップと元気さん。もしかしたらそこには思わぬ出会いや、今後の人生において宝物になるような大切なきっかけが拾えるかもしれない。
中村元気(なかむらげんき):2013年に原宿のキャットストリートで清掃活動を行うCATs主宰。居心地の良い街づくりをしていく上で、ゴミ問題の深刻さを目の当たりにし、2018年には「0 waste=ゴミ・無駄のない」ライフスタイルを提案する「530(ゴミゼロ)」を立ち上げた。原宿の屋上農園や、表参道の落ち葉を使ってのコンポスト(堆肥づくり)、不要な素材を回収し新たな資源として再生する「OPEN MATERIAL」、「ごみを出さない経済循環(サーキュラーエコノミー)」のある暮らしを提案している。
■CATs クリーンアップ
基本的には毎月第3土曜日開催。7月と8月は第4週、9:00〜10:30の間でゴミ拾いを行う。集合場所はキャットストリートのいずれかの店舗。その都度SNSで発信されるのでアカウントをチェックしておこう。
場所:キャットストリートのいずれかの店舗前
日時:毎月第3週土曜日 9:00〜10:30 ※月によって変わる場合もあるので集合場所や詳細な日時はSNSアカウントを参照。
SNS:中村元気さんInstagram
Text;Tomohisa Mochizuki