【私の表参道】フラワーアーティスト・前田有紀が表参道で出会った小さな美しい世界
前田有紀(まえだ ゆき)
フラワーアーティスト。10年間テレビ局に勤務したのち、2013年にイギリスに留学。コッツウォルズ・グロセスター州の古城で見習いガーデナーとして従事し、帰国後は都内のフラワーショップで3年間修業を積む。「暮らしの中で、花と緑をもっと身近にしたい」という思いから2018年秋に自身のフラワーブランドguiを立ち上げ、2021年4月に待望の店舗となるNUR flowerを神宮前にオープン。4歳と1歳の男の子の育児に奮闘中。
窓にはいつも花を飾って
花屋の見習い時代から、このエリアには勉強のためによく足を運んでいた。表参道・原宿には日本を代表するような花屋が数多くある。神宮前交差点近く、花の仕事についた時から憧れていたThe little shop of flowersさんもそのひとつ。
初めてリトルさん(The little shop of flowersのこと、フローリストは尊敬の念を抱いてリトルさんと呼ぶ。)に足を踏み入れた時のドキドキした気持ちは、今でも鮮明に覚えている。
原宿の喧騒の中にあるのに、お店の階段を上ると一気に緑に包まれ、まるで森の中を訪れたよう。小屋の前に並べられた鮮やかな草花たちがバーンと目に飛び込んできた。
慌ただしく花束を制作しているスタッフさんもとてもおしゃれだ。組んでいるブーケもエネルギッシュな色に満ちていて、「あのブーケをもらったら絶対に嬉しい!」と、思いながらじーっと見つめてしまった。SNSを通じて憧れていたリトルさんの世界は、実際にはその100倍くらい素敵な場所だった。
「私もこの街で美しい世界を届けたい」と、まだ見ぬ自分のお店に想いを馳せた。
それから数年後、神宮前のアパートの一室を小さなアトリエとして借りた。2020年にはついに夢だったお店を表参道でオープンすることができた。それが、「NUR」の始まり。
「NUR」の小さなショーウィンドウでは、その時々のオススメのお花や花瓶を遊び心いっぱいに飾っている。この場所から、街のショーウィンドウを飾り、東京中の窓辺に花を咲かせたい。なぜならそれは、たくさんの人々に美しい世界を届けたいから。私がリトルさんの世界を覗いたときの感動のように。
そんなワクワクが止まりません。
Photo & Text Yuki Maeda