ユニコーン、スチャダラパー、水曜日のカンパネラ…表参道&原宿を歌った、遊び心が楽しいユニークな5曲
カルチャーを生み出し続ける表参道&原宿は、多くのアーティストの歌にも描かれてきた。アイドル、バンド、シンガーソングライター……。ジャンルを越えて、街は様々な視点で切り取られている。そんな「OMOHARA SONGS」を紹介するシリーズの第5弾として「遊び心が楽しいユニークな」5曲をご紹介。
〜遊び心が楽しいユニークなOMOHARA SONGS〜
1.週刊東京「少女A」/爆風スランプ(1984)
2.CSA/ユニコーン(1990)
3.チョコレートを買いに/所ジョージ(2001)
4.惚れたぜHarajuku/アルファ&スチャダラパー(2006)
5.ツチノコ/水曜日のカンパネラ(2016)
1.田舎娘の上京物語
「週刊東京『少女A』/爆風スランプ」(1984)
「Runner」「リゾ・ラバ」などのヒット曲で知られる爆風スランプ。そんな彼らのデビューシングルA面が「週刊東京『少女A』」。この曲は、田んぼのある田舎町に住む少女が「黄色い電車」(=“総武線”らしい)に乗って毎週日曜に上京する話だ。
週に一度のビッグイベントに胸を踊らせ、少女は表参道を訪れる。しかし、彼女は“田舎町から来た”ということにコンプレックスを抱いているのだろう。すまして歩きながらも、内心は「なんだ坂/こんな坂/表参道」と勇んでいる。ナンパされても無口なフリをよそおい、なまりがバレないように「ハイとイイエできめて」やり過ごす。
東京近郊の田舎町、もしくは地方出身であれば、たまの上京でこんな気分を味わったことがある人、少なくないのでは?
2.所属事務所への愛に溢れた“社歌”
「CSA/ユニコーン」(1990)
※「CSA」は4:26あたりから
「Ahーつわものどもに愛されて15年/東京都渋谷区神宮前2丁目4番12号/フルークス外苑ビル5階/東京(03)5474-9500/CSA CSA CSA…」
以上がこの曲の歌詞全文である。パンク調のメロディにのせてメンバーの阿部義晴(現:ABEDON)が突風のように歌う歌詞に、いったい何のこと…? と、取り残されることなかれ。これは、ユニコーンが当時所属していた事務所「CSA(シー・エス・エー)」の住所と電話番号、そして社名を歌った“社歌”なのだ。
ユニコーンはこの曲がリリースされた3年後に解散。その16年後に感動的な再結成を果たしたときには、CSAは「SMA(エス・エム・エー)」と社名を変更していた。お気づきかもしれないが、どちらの社名も音の響きは同じ。若かりし頃の勢いのあるCSAも魅力的なのだが、時を経て“オジサン”となった彼らが歌うSMAもまた、より一層深みを増してカッコイイのだ。
3.ギャグか本気か? クスリと笑えるコミカルソング
「チョコレートを買いに/所ジョージ」(2001)
2000〜2001年にかけて日本テレビ系列で放送されていたアニメ「デジタル所さん」のテーマソング。作詞・作曲・歌を所ジョージ本人が担当している。
この曲の主人公は、「チョコレートを買いに/246原宿まで/首都高飛ばして行く」。コミカルなメロディにのせて「渋谷の出口で左折」し、「表参道超えて」、目的のチョコレートショップに到着する。
ところが、時は開店10分前。「外でお待ちください」「ここで待たせて」「ダメ」と、店員さんと一悶着。結局そっぽをむいて「そいじゃいらねぇや」と帰ってしまう。ギャグなのか、本気なのか…。所ジョージのユーモアの奥深さを感じる一曲だ。
4.80年代アイドルたちをオマージュ…?
「惚れたぜHarajuku/アルファ&スチャダラパー」(2006)
アルファとスチャダラパーという、2組のヒップホップユニットのコラボレーションによって生まれた曲。
街の名前は歌い出しから登場する。「情熱/熱風/惚れたぜ原宿/抱きしめて」。ヒップホップのキャッチーなリズムにのせて、このフレーズは曲の中で印象的に繰り返される。
ところでこの曲、80年代アイドルを知っている人たちには耳馴染みのあるワードがたくさん登場する。「ZIG-ZAG」「億千万」「パラダイス」「ギンギラギン」…。それぞれの歌を歌った彼らをオマージュしているのだろうか。いくつ拾えるか、注目して聴いてみてほしい。
5.不思議でオシャレな“水カン”ワールドへようこそ
「ツチノコ/水曜日のカンパネラ」(2016)
2016年、すでにCMタイアップなどで話題を得ていた水曜日のカンパネラが、メジャーデビューする際にリリースしたアルバム『UMA』の収録曲。タイトル通り「未確認動物」をテーマにした作品で、他にも「チュパカブラ」「雪男イエティ」といった曲がラインナップされている。
ヘビと竹の子族をモチーフにしているという「ツチノコ」。「派閥抗争/渋谷区原宿/代々木公園/歩行者天国」「たけのこ族/きのこ族/すぎのこ族/そして つちのこ族」と、“水カン”ワールド全開の歌詞が繰り広げられる。
これがコムアイの浮遊感たっぷりの歌声にかかると、独特な歌詞だということを忘れてしまいそうなほど洗練された雰囲気をまとうから不思議だ。霧が立ち込める森林や雑居ビルの間などでコムアイが優艶に舞うミュージックビデオも必見。
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様々な視点で歌の世界に登場する表参道&原宿。曲の数だけ、そしてそれを聴く人の数だけ、この街ではドラマが生まれている。
「遊び心が楽しいユニークソング」を紹介した第5弾。どの曲もウィットに富んでいて、言葉の組み合わせや語感にアーティストの懐の深さが表れていた。
5回にわたってお届けしてきた「OMOHARA SONGS」。連載はいったんここで一区切りとなるが、カルチャーを生み出し続ける表参道&原宿では、きっと今日も街のどこかでオモハラソングのタネが撒かれていることだろう。今後もまた音楽という側面から、この街の魅力に迫っていけたらと思う。
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・vol.1「心が元気になる8曲」
・vol.2「センチメンタルな9曲」
・vol.3「踊りたくなる7曲」
・vol.4「昭和の哀愁漂う8曲」
Text:Natsuno Aizawa