桑田佳祐、モー娘。、イエモン…表参道&原宿を歌った、センチメンタルな9曲
カルチャーを生み出し続ける表参道&原宿は、多くのアーティストの歌にも描かれてきた。アイドル、バンド、シンガーソングライター……。ジャンルを越えて、街は様々な視点で切り取られている。そんな「OMOHARA SONGS」を紹介するシリーズの第2弾として「センチメンタルな」9曲をご紹介。
〜センチメンタルなOMOHARA SONGS〜
1.原宿メモリー/高田みづえ(1984)
2.北青山3丁目4番地/荻野目洋子(1987)
3.青山Killer物語/ラ・ムー(菊池桃子)(1989)
4.サヨナラ/岡本真夜(1997)
5.NEW YORK CITY LOSER/THE YELLOW MONKEY(1999)
6.Do it! Now/モーニング娘。(2002)
7.何気ないSunday/TRICERATOPS(2004)
8.はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)/カネコアヤノ(2014)
9.悪戯されて/桑田佳祐(2016)
1.原宿で出逢った2人の別れ歌
「原宿メモリー/高田みづえ」(1984)
70〜80年代にアイドル歌手として活躍し、現在は相撲部屋「二所ノ関部屋」を“おかみさん”として切り盛りする高田みづえの23枚目シングル。
この曲は「原宿で出逢った」2人の別れ歌だ。疾走感のあるギターイントロの後に「出てゆくの/あなた出てゆくの」と続く歌詞。跳ねるようなメロディーとは裏腹に「高速で巻きもどして/原宿メモリー」「待ち合わせした店も/今は一秒ごと姿変えて/メランコリイ・ナイト」と、思い出が悲しく振り返られていく。
憂鬱な歌詞と、小気味よいサウンド、そして歌手・高田みづえの艶のある歌声。このバランスが、なんともいえない“洗練された都会の空気”を感じさせる一曲だ。
2.思い出が詰まった街角。団地も関係…?
「北青山3丁目4番地/荻野目洋子」(1987)
「ダンシング・ヒーロー」のリバイバルヒットにより、近年再び注目を集めた荻野目洋子。そんな彼女が18歳のときに発売されたアルバム『246コネクション』に、この曲は入っている。
『246コネクション』は、収録曲の多くが国道246号やその近辺をテーマに作られたコンセプト・アルバム。地図で調べてみると、曲のタイトルになっている「北青山3丁目4番地」は青山通り(国道246号)と外苑西通りの交差点近くの一角にあたる。つい最近まで、昔ながらの団地が立つレトロスポットとして知られていた場所だ(現在は再開発が進み、高層マンションへと様変わりしつつある)
歌詞には「大切なことを忘れそうな日には/ひとりでここに来て/時間を止めるの」というフレーズが出てくる。この曲がリリースされた当時、昔ながらの団地はまだ存在していたが、“ここ”とはこの団地を指しているのだろうか。
いずれにせよ、歌詞に登場する“私”にとって、「北青山3丁目4番地」は大切な思い出が詰まっている場所なのだろう。
3.時代を先取りすぎた!? 伝説的バンドの1曲
「青山Killer物語/ラ・ムー(菊池桃子)」(1989)
80年代アイドルのイメージが強い菊池桃子。そんな彼女が過去に“ロックバンド”を組んでいたことをご存知だろうか。
その名は「ラ・ムー」。清純派トップアイドルが突如として始めたこのバンドは当時、世間を驚かせたといい、いまだに“伝説”として語り継がれている。
「青山通りの黄昏時は/切れた会話に影を落とす」と始まる歌詞には、今にも壊れそうな2人の関係が描かれている。悲しいストーリーではあるのだが、シャラシャラ・キラキラと鳴るサウンドが心地よく、菊池桃子本人が出演していたジュースのCMにも起用された。
ラ・ムーの活動は、約1年半という短い期間で終了。R&B調の曲に繊細なボーカルをのせた彼らの音楽は、今でこそ洗練されているように聴こえる。しかしそれは「時代を先取りしすぎていた」ともいわれ、広く受け入れられることはなかったようだ。
4.「TOMORROW」に負けぬ人気曲。表参道のイルミネーションはもう…
「サヨナラ/岡本真夜」(1997)
シンガーソングライター、岡本真夜が6枚目に発表したシングル。デビュー曲「TOMORROW」がもっとも有名だが、「サヨナラ」も名曲として根強く支持されている。
「その日 うれしかったコト/その日 悲しかったコトも/話せなくなった/話さなくなってた」2人は、別々の道を歩き始める。去年は一緒に見た「表参道のイルミネーション」も、今年は見ることができない。
しっとりした歌い出しから、まるで感情がこみ上げるようにメロディは徐々に盛り上がっていく。そしてサビが始まるとともに、堰を切ったような疾走感が。このバランスに、切なさと虚しさがいっそう掻き立てられるのだ。
5.混沌としたニューヨークに原宿の面影を見た?
「NEW YORK CITY LOSER/THE YELLOW MONKEY」(1999)
解散・再集結を経て、今もなお精力的に活動を続けるロックバンド、THE YELLOW MONKEY。この曲は、そんな彼らが一度解散する前、18枚目のシングルとして発表した「SO YOUNG」のカップリングに収録されている。
夢にまで見たニューヨークシティ。初めて目の当たりにした憧れの街に「原宿よりも/田舎もんが多い/かも?」と意外な印象を受ける。原宿も、ニューヨークと同じく“多様な人々が集まる都会の街”ということなのだろうか。
この曲は、ダークさをまとったギターサウンドが印象的。夢や希望、そしてそれと隣り合わせにどこか危険な空気もはらむ、混沌とした街の様子が目に浮かぶようだ。
6.宇宙のどこにも見当たらないような 約束の口づけを原宿でしよう
「Do it! Now/モーニング娘。」(2002)
モーニング娘。15枚目のシングル。そして、加入当初から“スーパーエース”として活躍した後藤真希のラストシングルでもある。
マイナー調のアッパーサウンドが聴き手の胸を打つダンスナンバー。どこかシリアスな雰囲気を感じさせながら、歌詞には聴き手の背中を後押しするような前向きなメッセージが込められている。
街の名前が登場するのは曲の後半。「宇宙のどこにも見当たらないような/約束の口づけを/原宿でしよう」という印象的なフレーズが歌われるので、注目してみてほしい。
7.気がつけば年下が増えた原宿。ふとした瞬間の寂しさに共感するスローバラード
「何気ないSunday/TRICERATOPS」(2004)
3ピースロックバンド、TRICERATOPSが2004年に発表したアルバム『LICKS&ROCKS』の収録曲。
「買い物でにぎわう原宿あたりは/気がつけば年下が増えた」「変に大人びたりすんのは嫌いだし/今だ好きで歩いてるけれど」と始まる歌詞。ふと湧き上がるこんな気持ちに覚えのある人、けっこう多いのではないだろうか。
日常の中で生まれては消える、かすかな後悔や寂しさ、もの哀しさ。そんな心の動きに、ゆったり流れるこのスローバラードが寄り添ってくれるような気がする。
8.青山、表参道が似合う大人になりたい…
「はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)/カネコアヤノ」(2014)
かわいらしくも切ない歌声が印象的なシンガーソングライター、カネコアヤノ。インディーズ時代からライブで演奏していたというこの曲は、彼女のデビューアルバム『来世はアイドル』に収録されている(厳密にはデビュー前の2012年に発売した自主制作アルバム『印税生活』にも収録されていた)。
「代官山 青山 表参道 銀座 六本木が似合う大人になりたい/なりたくない」と、1993年生まれの彼女は“大人の街”の象徴として「青山」「表参道」を登場させている。
この曲の名前になっている「はっぴいえんど」にも影響を受けたというカネコアヤノ。素朴でどこか懐かしさを感じさせるメロディと、微妙に揺れ動く感情を切り取った歌詞に、心が吸い込まれるようだ。
9.大人の青山、外苑。愛憎劇を描いた歌謡曲
「悪戯されて/桑田佳祐」(2016)
映像作品『THE ROOTS ~偉大なる歌謡曲に感謝~』のボーナストラック、そしてその直後に発売されたシングル「君への手紙」のカップリングとして収録されている。
自身のルーツミュージックである歌謡曲へのリスペクトを体現したこの曲。音楽そのものも素晴らしいのだが、注目すべきはミュージックビデオ。広末涼子を主演に迎え、「青山」「外苑並木」といった街の名前が登場する歌詞をベースに“歌謡サスペンス”が描かれている。ストーリーそのものはベタなのだが、始めから終わりまでわずか7分半にも満たないはずなのに、不思議と2時間ドラマを見きったかのような気分になるのだ。
ちなみに曲の前半、「青山あたりで/歩き疲れたら/『ラジオ・バー』でお酒呑みながら」という歌詞が出てくる。この『ラジオ・バー』とはおそらく、南青山にある一軒家バーで、名店として知られる「Radio」を指しているのではないだろうか。
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様々な視点で歌の世界に登場する表参道&原宿。曲の数だけ、そしてそれを聴く人の数だけ、この街ではドラマが生まれている。
「センチメンタルな曲」を紹介した第2弾。ふと心に穴が空いたようなとき、ぼんやりと聴いているだけで気持ちが満たされていくかもしれない。
次回は「踊りたくなる曲」を紹介!
Text:OMOHARAREAL編集部