
「失敗、そしてまた生き返る街」映像作家・UMMMI. が語る表参道&原宿【リレーコラム Through My Eyes】
UMMMI.
アーティスト/映像作家。愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマに、フィクションとノンフィクションを混ぜて作品制作をしている。初長編映画『ガーデンアパート』、東京藝大学の卒業制作『忘却の先駆者』がロッテルダム国際映画祭に選出(2019)。また、英BBCテレビ放映作品『狂気の管理人』(2019)を監督。現代芸術振興財団CAF賞 岩渕貞哉(美術手帖編集長)賞受賞 (2016)など。6月あたまにはテアトル新宿にて「ガーデンアパート」劇場公開決定。http://www.ummmi.net/
失敗、そしてまた生き返る街
あまりにも人に言えない思い出ばかりが原宿や表参道を中心とした東京一体にあるから、いまでも街を歩くとまるで記憶の死骸のうえを辿って歩いているかのような気持ちになる。人に言えない、というのは確実にアタシは失敗ばかりをしている、ということで、10代の半ばから東京で遊んでいるとあらゆるモヤのかかった記憶たちが蓄積されていってなんとも重々しい気持ちにもなる。
ともあれ原宿といえば、何年も前から思いつくのはやっぱりBonoboのことである。おそらくもっとも失敗をしている場所、と言い換えることもできるかもしれない。クラブに一人で行き始めたのもBonoboだったし、ここで20歳の誕生日パーティーをしたり、あるいは父親と一緒に飲みにいったり、明け方気づいたらここに辿り着いて二階の座敷で寝てしまったりしたことのある、あらゆる記憶がこもった場所である。でも、たくさん失敗した場所にまた戻れるというのは、本当にすごいことである。普通は失敗した場所になんて恥ずかしくて戻りたくないと思って避けてしまうから。でもBonoboはなぜだか違くて、また戻ってこれる。別にアタシの失敗を許してくれているという感じではない。失敗したその次に行くとき、この間は迷惑かけてしまって申し訳ないなあとシュンとして、誰とも目を合わせないように伏し目がちに店に入る。でも、また戻ってこれる不思議な柔らかさと磁場がここにはあるのだ。東京の街角にこうゆう不思議な遊び場があるのは奇跡みたいだ、と明るくなった外に出て原宿駅までの少し長めの道なりをぼんやりとした頭で歩く時にいつも思う。(でも、もちろん失敗しないのが一番いいと思います。これからも気を引き締めて、朝になっても昼になってもそしてまた夜が来てもみんなから呆れられても、ずうっと遊び続けます、永遠に)
from satsuki
to Jun Yokoyama