1. Dior 表参道
設計:SANAA
竣工:2003年
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目9-11
妹島和世氏と西沢立衛氏による建築家ユニット、SANAAが手掛けた「Dior表参道」。1946年にフランス・パリで創業したChristian Diorのドレスの特徴でもある、浮遊感漂う「ドレープ」にインスピレーションを受け、設計された。ガラスよりも軽く柔らかいアクリルを用い、さらにストライプ状にセラミックプリントを施したことで、白く透過性が生まれた。スカートのようなうねりを帯びた、そのアクリルスクリーンを建築の四方に囲うことで、ドレープのゆらめきを建築で表現してみせた。
★ハーバード出身の建築家・各務太郎氏による建築解説コラム「Dior 表参道/Diorのゆらめき。服と建築の違い」もご一読を!
2. PRADA 青山店
設計:ヘルツォーク&ド・ムーロン
竣工:2003年
住所:東京都港区南青山5丁目2-6
スイス出身の2人組の建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン。1913年にイタリア・ミラノでスタートした同ブランドの世界で2店舗目となるエピセンターストア「PRADA 青山店」。彼らは日本の開かれた都市空間の圧倒的な少なさに着目し、敷地の表参道側半分をヨーロッパ的な広場として都市に開いてみせた。続いて、凸凹と膨らみを持たせたガラスをダイヤモンド状の格子にはめ込み、ガラスのレンズ効果で建築の内外を大きく歪ませて見せる効果を生み出した。
★ハーバード出身の建築家・各務太郎氏による建築解説コラム「PRADA 青山店 & MIU MIU 青山店/対話する建築姉妹。色気のグローバリズム」もご一読を!
3. MIU MIU 青山店
設計:ヘルツォーク&ド・ムーロン
竣工:2015年
住所:東京都港区南青山3丁目17-8
1993年にローンチしたPRADAの姉妹ブランドとなるMIU MIU。その青山店もPRADA同様、ヘルツォーク&ド・ムーロンによる設計である。10年以上の月日を経て、再びこの敷地を訪れた2人は、表参道の風景や歩く人々の表情が以前より西洋的に変わってきていることに着目し、周囲に対して徹底的に閉じる建築を考え始める。その結果、商業建築としては異例となるガラスに覆われていない建築に仕上げた。
★ハーバード出身の建築家・各務太郎氏による建築解説コラム「PRADA 青山店 & MIU MIU 青山店/対話する建築姉妹。色気のグローバリズム」もご一読を!
4. TOD'S 表参道ビル
設計:伊東豊雄
竣工:2004年
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目1-5
1979年に設立した、靴とバッグをメインに扱うイタリアのファッションブランド「TOD’S」。その日本市場本格参入拠点となるこちらの旗艦店は、プリツカー賞など多数の受賞歴を持つ伊東豊雄氏によって設計された。広がるケヤキの枝のイメージをファサードに展開し、表層の素材と建物の構造を一致させてみせた。敷地はL字と独特だが、建物の形状もあえてファサードの6面全体を同じパターンで造っている。また、ファサードのイメージは、店内の構造にも広がる。
5. ONE 表参道
設計:隈研吾
竣工:2003年
住所:東京都港区北青山3丁目5-29
ルイ・ヴィトン・ジャパン・グループのヘッド・クォーターとなるこの建物は、隈研吾氏によるもの。「セリーヌ」「ジバンシィ」「ロエベ」などが入るこのビルを隈氏が設計した頃には、すでに「和の大家」と呼ばれる建築スタイルを確立しており、外壁を全て覆うカラマツ集成材製の細長い板(ルーバー)は表参道のケヤキ並木と見事に共鳴している。また、このルーバーは建物内部の温度調整や二酸化炭素を固定する役割も果たし、省エネや温室効果の低減にも貢献している。
6. LOUIS VUITTON 表参道店
設計:青木淳
竣工:2002年
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目7-5
1854年、荷造り用のトランク職人であったルイ・ヴィトン氏によって設立された「ルイ・ヴィトン」。その表参道店を手掛けた青木淳氏は、同ブランドの店舗設計に数多く携わっているが、同店はブランドの原点である"トランク"をテーマにデザインされている。2011年には、アートスペースとなる「エスパス ルイ・ヴィトン東京」が7階に誕生。フランス・パリにあるルイ・ヴィトン財団の美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」が所蔵する、現代アート作品の展示会などを開催している。
7. BOSSストア 表参道店
設計:團紀彦
竣工:2013年
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目1-3 表参道Keyaki Bldg.
HUGO BOSSは1923年に設立し、1960年代にメンズスーツの世界的ブランドとして認知される。そんな「BOSSストア 表参道店」の設計を手掛けたのが、COREDO室町を手掛けたことでも知られる團紀彦氏。表参道のけやき並木と融合することをイメージし、微妙に異なる形状の柱をトーチ状に束ねて、生命をもった木の幹のような表情に仕上げた。隣接するTOD’Sのビルとは全く異なるケヤキの解釈が見られる。
8. MARC JACOBS 青山
設計:ステファン・ジャクリッチ
竣工:2010年
住所:東京都港区南青山5丁目3-27
このブランドの創設者であるマーク・ジェイコブス氏と同郷となるNYの建築家・ステファン・ジャクリッチ氏によって設計。この建物は、アメリカで複数の建築賞も受賞している。純度の高い滑らかなガラスや黒いタイル、網状のアルミパネルと3層の素材で覆われたファサードは、視覚的なデザイン性を重視し、構成されている。最上部の照明は、2階の黒い部分とのコントラストでビル全体を浮き上がらせて見える視覚効果を持つ。
9. Stella McCartney 青山
設計:竹中工務店
竣工:2015年
住所:東京都港区南青山3-16
ステラ・マッカートニー氏により、2001年に創設された同ブランド。2015年、この場所に移転オープンした旗艦店は、白いキューブ型の外観に、アルミニウムで作られた片持ち梁のメッシュファサードが特徴だ。「組み亀甲」という日本伝統の柄にアイディアを得てデザインされたというファサードは、照明の効果を最大限に活かす造りになっている。みゆき通りに面したウィンドウには、フルサイズのデジタルプロジェクションを設置し、新しいコンセプトを発信している。
10. MAX & Co. 表参道
設計:石本建築事務所
竣工:2015年
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目2-5
イタリアのマックスマーラ・ファッション・グループが運営する同ブランドの日本上陸20周年を記念し、建て替えられたこの建物。デザイン監修にイタリアの建築家・アンドレア・トニョン氏を起用している。建物の外周を高透過ガラスのファサードで包み込むことで、通りからの視認性を高めるとともに、建物内部からも街並みを眺められる造りとなっている。また、敷地の中心に柱を集中させたことで、外観からは大理石の大きな柱に貫かれて、床が浮遊しているように見える効果をもたらす。
ブランドの価値をさらに高めながら、表参道&原宿の豪華な印象を演出する役割も果たすファッションブランド建築たち。昼も美しいが、色気をまとう夜の姿も必見である。営業時間を終えてますます魅力を高めるその存在を意識しながら、日が暮れたこの街を歩いてみてほしい。
text:Mae Kakizaki